ゲンチョウカヤ‐インフィニティーなクロスファイア
風を切りながら、肉体を切り刻む
疾走感重視で、何体の人体かを高速で切り開いた。
ここはゲームの中、何でもありで、何でもある、自由自在に変幻自在な場所。
路地の先に、一人の少女が佇んでいる、次の狙いはアイツだ
高速で接近して、地表スレスレから振り上げるように、銀の刃を首に向ける。
しかし、その少女が長い黒髪を靡かせながら振り返り、髪の隙間から見えた瞳を目撃した瞬間
俺は殺人の刃をピタと止めた。
「なんだ佳代か」
「そうだよ、佳代だよお兄ちゃん?」
黒目、だが、その中には光り輝ける意志が宿っているようで、黒っぽく見えない瞳。
可愛い妹は、右手にコンバットナイフを持っていて、それをくるりくるりと操りながら言う。
「お兄ちゃんは何人殺したの?」
「さあな、佳代は今まで食べたパンの数を覚えているのか?」
「覚えているよ、4890個だね」
妹は、俗に完全記憶の能力者だ。
頭の中の記憶の引き出しが無限にあり、その中身が無限に色褪せず、
更に引き出しを開ける速度、引き出しを選定する速度、何もかもが神代の領域に在る、そんな存在。
「だろうな、この完全無欠の完璧超人めが」
「酷いよお兄ちゃん、佳代はお兄ちゃんだけのか弱い妹なのに」
どの口が言うのかと、思わなくも無い、まあ見てくれだけなら、か弱い妹の成りはしているのだが。
俺達は他愛も無い会話を交わしつつ、真っ暗でところどころ薄暗い路地を歩く。
偶に出会う通行人は、まるで路傍の石を脇に転がすように、
お互いの手の凶器で横手に振りぬいて、血みどろと共に弾け飛ばして、ただ歩く。
「今日は月が綺麗だね、お兄ちゃん」
「ああ綺麗だな」
上を見れば、月が、満月となって燦燦と太陽のように不自然に輝いていた。
「坂崎兄妹、何人、、、どれくらい殺した?」
俺達は、突然ここ、
幻想領域、クリスタル戦線に、召喚された、
世界は、感情を溢れさせ続けなければ、消えて無くってしまう、真理、
ここで、生き物を殺せば殺すほど、世界が延命するという、真実、
俺達は、遥か昔から、それら事実を、知っていたかのように、召喚と同時に、悟ったのだ。
そして、最終的には、
お互いをお互いで、殺し合い、殺し合わせる事になる、半強制的な現実を受け入れたのだった。
「よお、シャル」
「よおよ、タクミ」
彼女は、シャル。
麗しく美しい、吸血鬼の姫だ。
俺が彼女と出合ったのは、もう何時かも分からない、
遠く遥か昔のかなたの昔の、前世転生繰り返した果ての果ての、最果ての時空間において、
なにも定かでない、だが、積み重なった檻で澱のような、とんでもなく特別で只管な絆を結ぶ、唯一存在だ。
夜の光に輝く、シャルの瞳を見ていると、遠くて近い、何時かの記憶が、俺の中で想起されてきた。
人類世界統合体、異端審問会、タカ派。
世界は、とかく敵を求めて止まない、
それは一重に、世界という仕組みであり、そのものの具現現象、
人間性に根付いた世界の、病理ともいえる、絶対に逃れ得ない、無上に不完全に完成されたシステム的なモノ。
彼彼女らは、敬虔な信者なだけで、いろいろと詰んだ存在だ。
だからこそ、人生を懸命に生きるに値する、大いなる使命、生き甲斐を望むらしい。
それが、討伐するべき、大いなる力を持った吸血鬼、という存在に行き会ったのは、ある一つの必然と言えよう。
「♪~~~」
シャルは、煌びやかなゴシック衣装で、夜の街を歩いていた。
当てなど無いのだろう、ただ夜風に焦がれて、月の綺麗な夜を優雅に優美に、一人佇むように在る。
先ほどの話の延長だが、
そのとき、ギィイイン!!!っと、既に残響とも至った、厚い金属が砕け散るような圧倒的な破砕の音。
「クソ吸血鬼、やっと見つけたぞぉ。」
ひょろりと、細身に整った体躯の男、どこにでも居そうな、若いざんばらな黒髪を掻き揚げる。
「どこに隠れてやがったぁ?」
男は、先ほど切りかかったトキに、刃が砕けるほどに爆ぜて、切れ味の鈍った場所を、長い舌で歪動作で舐めながら言う。
「せっかく殺してやろうと血気迫ってたのに、余りに焦らされるからっ若干ちと、
醒めちまったじゃねぇーかぁ、
どう落とし前付けてくれるんだぁ?!?あーまあいい、てめぇー殺すことでチャラにしてやっからよぉっ!!!」
そしてまた、初撃と同じ様に、人間でありながら、まるで獣のような不可思議なスピードで急接近。
その逆手に持つナイフを、血走った目で睨み見据える標的に、勢い良く迸らせる、ようとする。
攻撃は男のいま持つ意志の体現そのもの、豪胆で大胆不敵、無謀や無茶なレベルの勇猛と似て同一の蛮勇、
圧倒的に後の致命的な隙を孕む、非効率非合理ともいえる、大振りになることを気にせずに、思いっきり振り抜こうとするのだ。
「うおらりゃぁああああああああ!!!!」
魂が震えるほどの絶叫絶唱。
滅茶苦茶に鋭利な乱舞、責め詰められているような、精神を飲み込むかのよう、
酷いストレスとプレッシャーを過大に伴う、
なにか何もかもすべて超越的な、真なると思い感じれる、単純に重圧だろう、
与えられるそれら、それを御しきれない、受け手を不安定にさせる、連打に次ぐ連打。
「マジでガチでぇ死にさらせやぁ!!ひゃぁぁあああぁはあぁああああああああああああ!!!
がぎぃぃぃん、ぎぃぃっぃん、キュィピィィン、キィンキィン、、、
単調に、不協和音に響き渡る音。
どこまでも捨て身、己の命の、存在の身軽さから来る、軽薄で淡白でクールな、清涼のように冷たい熱。
この男の場合、それが余りに絶頂を極め、既に限りなく無の質量で存在し、光速のように高速の太刀筋に繋がるのだろうか?
「ふっ、、、不遜な男だ、、、、」
金髪のシャルは、声が震えるのを自制できていなかった。
いつ何時でも、生の感情と、生の狂気での、このような
この、生の殺意の篭った殺刃の凶器とのぶつかり合いでは、これは、この反応は、、、抑えられる試しがない。
シャルは感じ入る、相手の存在のすべてを、深く、真に迫り、知覚のすべて駆使して、圧倒的な深度で、
対存在と一つになってしまうような、錯覚を迫真的に抱けるほどに、眼前の情報を処理して、演算しきる、しきった。
「私に対して、そのように、威勢よく啖呵を切れるとわな、
だが、愚か、
その心意気は認めてやるが、直ぐに事切れることになる、そう、いま」
シャルは、相手と一つになった、
それは一つになるほどに溶け合い、混ざり、相手を己の中で完全に再現できるほどに、だ、
だから、次に、そうこの一瞬の刹那の次、相手の刃が迫る機動を、正確に予測できた、
するりと抜けるような鍔の競り、シャルの刃が抜けた先には、相手の心臓を射抜くコースが現出した。
「死ね」
そして、永いときを生きる吸血鬼にも、生き甲斐は必要だ。
己を絶対に相容れない目の敵にして、必死に親の仇を討つ、復讐鬼のように迫る、彼らが。
「わたしの為にっ
ただわたしを喜ばせる為だけに生まれた生に、果て無く絶望し、感謝し、狂気に狂喜させる血の華を咲かせて魅せろ!」
残酷なる凶器が、幾つも交差する、した。
「銀弾装備かっ、ちと、小賢しいのぉ」
遠方からの攻撃に、軽く舌打ち、華麗なる身のこなしで、くるり中空に舞いながら避け、
はためくフリル付きスカート、ゴシック調のそれらを掠めるように、幾筋もの弾が波紋を広げた。
シャルは、瞳を煌めかせ、パチンぱちんと、指を骨を鳴らす、
中空で意図的に行い、重力を無視して舞いながら、回転も遠心力を利用し、ゆるやかな一定の間隔で、
それに合わせて、沿って段々と、高周波の声音が混ざる、何回も反響し耳鳴りがする不協和音が場を奏でる。
音響攻撃、途端に耳を塞ぐか、三半規管に特別な訓練を施したモノ意外が、その場で倒れてのた打ち回る。
「人間は、酷く、脆弱で儚いな」
あ、そのときの、サイコやろうが、俺だ、人間変われば変わるものであるなぁ、回想っぽいの終わり。
「はふぅっ」
なんだか眠そうに、意味もなさそうに大欠伸かますシャル。
こいつは俺の中での、インフィニティーフィフスヒロインズ。
「おい、佳代、シャル、気をつけろ、狙われてる」
突然だが俺はスコープの、遠距離スナイパー狙撃手が、視線を感じたのだ。
俺達を、次元を隔てたどこからか、見ている相手、対手はミリアムオブザルシファー、だろう。
蒼く黒き聖なる乙女、現役の聖女候補。
俺達に気づかれたからか、そいつは普通に現われる。
肩に、身の丈を軽く凌駕する、近代的なフォルムのライフルを抱えて。
「私は神の代理執行人。
断罪の刃、私人を無くした無我なる使途。
今の主な使命は、
無限熱量と絶対強度テクノロジーを研究開発、既に扱う、神の冒涜者を抹殺すること、です」
そのような毎度お馴染み感漂う口上を言いながら、
肩に抱えたスナイパーライフルを、己の頭上に、中空に向けて、放つ。
ズバァギャァアアアアアアアアアアアア、っと、時空が単純に裂けて、崩壊してしまったかのような音響。
「それと、観測者です」
ニコリともせずに、冷た過ぎる温度すら錯覚させる、宣告をする彼女だ。
「酷いな、ミリア、ただ見てただけの傍観者に」
「現われましたか、非道なる観測者よ」
突如、中空に現われた、緑色の影に、銃口を定めなおして言っている。
スーパーロングツインテールの髪を中空に漂わせながら、空気に腰掛けるように居直る彼女、観測者も返答する。
「非道ってっ、道を外れてるって事?
でもそれって、しょうがないんじゃないかなぁ?
この世界が、そもそも、道を外れるを強制する、外道の理が支配する時空なんだからね。
だから、君の信仰するなにかも、所詮は、この非道なる世界から派生している、それは言うまでもない事だよね?、
それはつまりつまるところ、
君の信じるなにかも、それが信仰道に叶っていたとしても、この世界の上に、この世界を踏み台にして存在するということ、わけ、
それが道理で前提だよね?
だったらばさ、君の信じるなにか、には、何の意味も価値もないということ、さ、
非道な世界、救いようがないほどに罪悪的で、背徳的な、非道な過去とを背負っておいて、
ホント今さらだよ? 常に今更感が付き纏う、無上の悲劇と不幸を重ねておいて、
そして非道を正し、正道を歩み貫くことを、世界に強制的にさせようとする
わたしは長くいろいろ観測してるけど、それは、ないんじゃないかと、直感的に思うわけだよぉ、
無上に不良で極獄悪人だった人間が、いまさら更生して、善人ずらして聖人になったかのように、振舞う、
そんなの、決して認めて、我慢して、許せる、わけない、容認なんてできっこない、よ
この世界に、集積された罪は、もう拭えないんだよ? もうずっと前から昔から、手遅れに手遅れて、
たぶん、この世界は初めから原初に薄汚れていたんだ、それを知らん顔して見ない振りなんて、無理なんだ、
そう、このように、君の信仰なんて、絶対に実現しない、わたしという存在性が、それを如実に証明しているね、
この絶対に、最後の最後で世界を疑心し、信用せず信頼せず、裏切り、
己すらも疑心し、我思うゆえに我あり、にすら縋れない、哀れなで愚かで、破滅的な存在がいるのだからね」
「はん、、、、。
それが何ですかぁ!鬼の首をとったようにぃ!
いいんですよぉっ、そんな事実は、現実は、至極意味がない、
だいたい、過去をすべて清算し、貴方のような破滅の要素、存在を、世界から一掃すれば、なにも関係がない。
根本的に、それは人間にとっては意味があっても、人を超えたなにか、神には意味も価値もない、のだ。
ただ確かな事が世界には一つだけ、わたしは絶対正義、何をしようが、絶対に間違えない、神に選ばれし、絶対の神の娘ですから!」
イリスクラリス、時空魔術師、西洋古典魔道協会長、そして観測者は言う。
「神ね、面白いよ、どれだけ君が、限りなく神に近い人か、つまりは浅ましい人間か、見定めて曝け出してやる、
この世のすべては、所詮は底が知れている、見通せないのは、この永遠の連綿たる世界のみ」
「「わたしは魔術師、世界の神秘、真理を探究することだけが望みの、静謐なる理性の輝き」」
かぶせる台詞、新たな影の名はレイア、漆黒の狂気、新西洋魔術協会所属、
大いなる会、あるいは善なる秩序世界協会
「最強以外に意味なんて、至極、ありませんわ、
最強が、世界を規定するのですから、その真理を、みんな分かっているのかしら?
世界がどうのというよりも、なによりも、価値を見出す指標を、見誤っているのですわ」
「ならばだったら、わたしの信仰する愛しの神が、最強なんですよぉ!」
「わたくしの望みは力だけです、それ以外に一片の興味もありませんわ」
レイチェル、鉄の英雄、人類の救済者、兄に対する妹的存在、観測者達の裏番長、観測長。
「わたしはお兄ちゃんの為だけに在る! 兄を一心に思う妹である事だけが唯一無二の絶対のアイデンティティなのぉ!!
シャル、黄金の双眸、永遠の真紅、
「吸血鬼の姫は、絶対に屈しない、恥ずかしがらない、お漏らししても何しても、絶対に泣かないもんぉ、ぐすぅ。」
なんで漏らしてるの、なんで漏らしてるの、二度思ったが、答えは出ない、謎のままに包まれている。




