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ミスリルアメリア‐銀の種族の妖精王アルド



「出直して来い」


 俺は銀の妖精女王、ホーリに、世界救済計画書を提出したのだが、

 まるで相手にされず、一蹴に相応しい態度と、冷たい台詞であしらわれてしまった。


 俺は思う、この世界は最悪だ!と。

 まず、スタートからして駄目駄目だろ、いろいろと。

 小難しいことは言わん、とにかく変革が必要だ。


「リファ、お前も、そう思わないか?」


 隣を歩く、小さい背丈に問うてみる。


「うん、世界は変えたほうが良いね」


「お前は話が分かる奴だ、えらいな」


 なんとなく頭撫でると、くすぐったそうに身を捩りながらも、嬉しそうな鳴き声。

 俺は天空、360度を遥かに埋め尽くす、サテライトシステム、ミスリルの絶対盾を眺めつ言う。


「なにが潔癖なる秩序だ、世界の真理、神秘の伸張研究だ。

 今もって、不幸に喘ぐ存在が腐るほどいるのに、なぜ、それを皆救おうとしないのだ、まっとう理解できん」


 隣に佇むリファは、なんとなく口を挟まず、こくんこくん首を何度も上下移動させる。


「俺は変えてやるぞ!

 銀の種族が、世界を支配するに相応しい存在というのは確実だ。

 後は、皆の意識を変えて、もっと世界の救済に目を向けさせる。

 そして、その為には、救うべき世界の、銀の種族による支配状態を確立しなければ」


 それは武力による、あるいは、精神的な、ある種、宗教的な浸透になるか分からないが。  

 とかく、三ケタ存在する銀の王の資格を有する俺、その武力は最弱だと心得る、

 ハッキリ言って、だから実際問題ジリ貧クソ戦場に意気揚々と望むが如し、そんななくらい難しい事業と認識しているのだ。


「はあ、銀も保守的だよなぁ~」


 頭上のサテライトシステム、世界包囲方位543、部隊、その最大主力兵器、いや盾の性能が特記されるモノ。

 遠大な計画、俺的には気が遠のいて失神するレベル、とある戦略によって、此処に存在する絶対の盾を見る。


「リファ、この盾だけでも、完全に俺のモノに成れば、俺が救うべき存在がどれだけ増えるか、救えるか?」


 リファは、ボウット頭上の方を見ていた。

 複雑に真っ暗な空に点滅するサテライトシステムの光点を、まるで星座のように見ているのだろうよ、

 指でオリジナル星座をなぞって即興で作っている、前に聞いた謎動作をしてるし。


「うん、まさに、メイン盾キタコレ、ってなるね」


 ぴょんと跳ねて、ノリの良い仕草、プラネタリウム好きの謎少女は、天空に盾の星座でも作って、俺を喜ばそうと意気込んでいた。


「この隣のリファ、人型魔道兵器、常にロボットのように在るが、、、まあつまり俺のメイン盾みたいなモノ」


「アルド、何を独り言をしているの?」


 俺はなぜか声に出していた、なぜかは俺にすら分からない、怖いな俺って奴はミステリアスだ。

 リファと初めて出会った時を回想した。

 あの頃は俺も人生に辟易して、田舎に居たんだ、コンビニが一個しか無い非激戦地ののどかな場所。

 リファは、持ち主に冷遇されて、掘立小屋で惨めに暮らし、毎日を巻き割りに勤しむ勤労少女だった。

 俺と偶然会って、なんとかして友達になりたい、俺を引きとめたいと、みすぼらしい掘立小屋で接待のような事をされまくった日々を回想した。

 ロマンチックな夏が明けて、人生に目覚めた俺は、今ここに居る。


「てか、一年前にしては、とても昔の事のような語り口だな、俺」


「アルド、また独り言してる」


「そうだ、俺は突然独り言をして、となりに居る女の子を不審がらせるのだ大好きっ子だからな、許せ」


「許す、だっておもしろいから」


 なっはは、それは良い、と笑いながら、とある場所にたどり着く。


「世界の救済? くっだらなっ、馬鹿じゃないの?

 わたしは忙しいの、今も世界の上位概念を、開拓し開発し発掘することに、余念が無い。

 そんな無意味なことに、リソース避けないの、

 貴方もいい加減、銀の種族としての、人生の真理、真髄、臨場感溢れる迫真的な意義の為に生きなさい」


 多目的プラットホーム、幾つもの球体建造物が浮遊し、その内部で日夜研究が行われる場所。

 銀の種族屈指の研究者にして大参謀、ルクレティア。


「ルティア、お前という奴はっ」


「あによっ、文句あるの?」


「お前は救ってやったのは、一体誰だ?」


「うぅっ、、、」


「ほら、俺が正しい、だから俺に従うんだっ! 一緒に来い!」


「いやぁ!あんたキライ!もうウザったいったりゃ、ありゃしないんだから!」


「ふん、堕落者が、お前に期待した俺が、劣等者だったみたいだな」


「このぉっ、うっさいうっさい! 帰りなさいよ! でてけぇ!」


「ああ、お前は、そこで一人で、世界の仮初の虚像なる神秘とやらと、永久に戯れてるんだな」


 仲間にしようと思ったのだが、

 思ったよりも盛大に拒絶されたので、捨て台詞と共にすごすご引き下がる事にする。

 その場を後にしようと思ったら、微妙に引き止められる。


「くぅっ、ちょっとわたしの話も聞きなさい」


「しょうがない、俺の時間は貴重なんだ、有意義に語れ」


「わたしは、やりたい事をやるのが、生命体の特権だと思うの。

 あんたがやってるのは、所詮は己の真にやりたい事とはかけ離れている、

 他利的で、利己的じゃない行為は、絶対にそう、

 きっとあんたは今もって、誰かに操られている人形でしかない、

 それが自覚できない内は、永遠に真なる生を、あんたは感じれないでしょうね」


「俺は、世界に、誰かに操られる人形になりたいんだよ」


「馬鹿」


「神の操り人形、自我すら無くした、真理は、そこにしかない」


 俺は一人でもいい、

 何もかも、己の理想を燃え上がらせ、信仰の赴くまま、世界を駆け抜け塗り替えるつもりだった。

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