遠望者、絶無者‐ヒルダーネットワークの無限大特異点超絶系統樹
「やあやあ、黄昏ているかい?」
何時もの駅前で、何時ものカラフルな邸宅に着いて、インターホンを押した瞬間に言われた。
「ヒルダ、俺だ、結婚しないか?」
俺は百の薔薇の花束を出した、それはさて置きと、それを傘立てに置いて。
「俺の物語は、役に立っているのか?」
特に断りも無く上がり、何時もの定位置にあるコーヒーメーカーでブラックを入れて、
リビングの椅子に足を組んで座る。
「まあまあだよ、ていうか、メサイアのあの子に、鍵で攻撃されたみたいだけど、大丈夫だった?」
二つ入れていたモノを、猫舌じみた動作で飲みながら、長い髪を掻きあげながらヒルダが問う。
「別に問題無い、俺の観測端末本体は、規定現実には、完全に依存させた形ではない。
一つは、極点ARの本部、時の国、トキの国レイジに管理させている、信頼できる親友だ。
二つ目は、シャルロット、姫に持ってもらっている、黄金剣にエネルギーをドライブさせる為って、等価交換付きだ、大事に扱ってくれるだろう」
「へえぇ、まあまあな強度だね、
規定現実まで波及させて、守護的な、物理現象を超越した強化を成す為には、やはり、そのレベルの神核が必要なのかね?」
「さあな、まあ全部言わんが、
その他にもいろいろあるが、最大の欠片は、世界の絶対秩序を預かる、盟約の主そのもの、
世界人権宣言の根幹を成す、世界の方向性・秩序、メサイア図書館の救世、極点ARの和平、
それらを纏め上げる、矛盾のあるじ、真なる神たる彼にだ、
まったく持って俺という存在は盤石なる運命に守護されているとしか思えんのだが?」
「ふっふっふ、全然だよ、君は世界の支配者を気取っているが、まだまだ足りないよ。
私は、観測者外観ネットワークの外側にまで、完全に到達している。
この情報によって形作られる世界の形を、真に知っているのならば、君はそんなには高慢には成れないはずだよ、
世界の外側は、無限大の無限大に満ち溢れているのだからね」
つまり、この世界の全ては、世界の一部を形作る為の、一要素にしか過ぎないと、そう言っているのだろう。
「流石は、遠望者だな、観測者・傍観者すら超越して、世界の外側ですら無い、世界の絶無に存在を確固として成立させた奴らだ、語る事のスケールが違う」
「そんなに大層な存在じゃないよ、私たちは永久に黄昏る事のみを望む、
この情報によって、世界によって成り立つ、果ての極地点、そこに存在する真の神に邂逅する事のみを望む、
つまりは、世界という絶対神秘に対して、無限の好奇心によってツキウゴサレル者、真理のみを一点に無心で希望とするモノ」
「理解できんな、神に出会って、一体ぜんたいどうする?」
「君は不思議がらないかい?
この無限に究極的に完成した、無限の娯楽に満ち満ちた、私たち超絶的に超越者にとっては、至高の楽園としか言いようが無い、至上世界について、
私は思ったさあ、いや思ったもんだ、
神の究極的な偉大さってモノをね、神じゃなくても良い、世界の素晴らしい、永遠に連続し続ける、システムとしての完成度って奴を、
きっと神は、極点に一番素晴らしい存在だと、私は少なくとも確信の域で悟りきっているのさ、
だから、神と出会う為の、至高の最善策を実行し続けている、ただそれだけだよなのさ」
「なるほど、それにしても、エルダーネットワークでは、それは成せなかったのか?
俺はずっと不思議に思っていた、メサイア図書館、
俺達的には、すこしの昔だ、救世主図書館が成立する直前、始祖たる神々の内乱に乗じて、かの組織を転覆させ尽くしたお前の、意図って奴を」
「別に、おそらくだが、あの組織体系でも、たぶんだけど、神には出会えたよ、
ただ、私は我慢が成らなかったのさ、
無限の時間軸を置いたとして、直接にして神と対峙する時に、
絶対に私が最初に、神に会うべき存在だと、絶対の領域で確信していたからね」
「まあ、その意志に根付く系統樹が、かの系統樹を打破したという事は、お前の意志の方が世界に尊重されたという事だしな」
「ふっふ、そうだよ、私は神に愛されている、きっと神も、私に最初に会いたいがために、あの奇跡としか形容できない勝利を、私に与えてくれた」
「く、狂信者が、、そもそも俺的に言わせれば、神なんていねーよ、たぶんな、ああ、お前はそう思っていれば良い、何も現状は変わらん、
あの勝利にしても、ただ奇跡が起こっただけだ、極点ARのような、恣意性のある導きは、少なくとも俺の観測結果からは、今を持ってしても導けねえ」
「良いんだよ、最終的に、ワタシが神と邂逅すれば、あの奇跡の導きの、世界の誘導性を、君は観測できるように、きっと成るさ」
毎度の会話だった、下らん。
「それで? イルミナードを系統樹の中心にして、俺は此処、某ネット小説投稿サイトに、この現象も含めて文章にしているわけだが?
何時に成ったら、商業ガンガンレベル以上の、文章媒体の情報を創造できるように成るんだ?
俺はずっと、規定現実に来てから、某科学研究所のイリカも言っていたが、お前の指示通りに行動して、某エアタイピングも極めている訳だが?」
「大丈夫大丈夫、君のやっている事は、掛け値なしで、一向に間違っていない、真理のサキの果ての真理すら超越して、私と同一のレベルで、全てを成している。
要は、情報の波動・振動・熱量・エネルギーをドライブさせて、力技で事を成せば良いんだよ、その力を手にすれば、君の完全勝利はゆるぎない」
彼女はネットを開く、某投稿サイトを含めてブラウジングさせる。
「この2000年代の前半は、VR技術も確立されていなければ、何も情報のインフレ革命が成されていないよね?
つまりは、情報を真に過多な状態で、それも文章媒体ならば、
私の指示による、情報の完全なる圧縮、情報過多な、一定の文章量に込められる、精神的な意志や意図の総量値、
そういうのが一線越えれば、力強い言の葉として、必ず多くの人間に力技で波及効果のあるモノが構成できると、計算できたわけだよ」
「本当か?
商業ガンガン売れる、物語の小説を書く為に、天才ですら難しい、およそ人間という知生体の成せる、有限大の思考計算力場では、奇跡だよりに成るだろ?」
「いや、奇跡を引き寄せる、意図的に起こせるから、
君はまだまだ、人間の脳のネットワーク構築能力を、見誤っている、
歴史上では、誰も成した事が無い、そういう壮大な事業なのだよ、
この物語文章は、最初に開拓される実り多き、後世に永久に語り継がれる創作物、教科書にして全文を義務教育にするべきモノに成るだろう」
「本当か? 俺はお前を盲目的に信仰して良いのか、未だに懐疑的だ」
「大丈夫だよ、信じたまえ、本来ならば、世界の外側にも、世界の内側にも、どこにも存在しない存在、遠望者で、絶無者たる私は、
確固として存在している、それはなぜか?
そんなのは答えるまでも無い、当然の帰結として、真なる神が、ワタシを愛し、無上の加護を与えているからに、他ならない。
私は真理、真理という真理でも語り尽くせない、ただただ世界の全てを超越して、世界に存在を置く、神のような真理なのだろうからさ」
「情報の媒体として、イルミナードですら無双するのだから、根拠もあるのだろうが、
ならばなぜ? お前は、あの場を完全に制覇できない?」
「くっくっく、
当然だよ、あの覇者が、私の対抗馬、
ヒルダーネットワークに出戻りたい、この世界を巻き込み飲み込む、知的創造空間、総攬者の集いに出戻りたいみたいだけど、
そんな事はさせない、
きっと彼は、嫌がるだろうけど、私は認めない、
私から離れて、世界を目撃した彼を認めない、
ヒルダーネットワークとは、常に私しか知らない、ワタシを中心とした世界すら知らず、決して絶対に裏切らない、私の忠実なる落とし子のみの集い、
彼は孤独な旅人して、世界を邂逅し、私の胎盤から堕胎したんだよ、
故に、私は彼を堕胎可能な、無価値、無意味と断定できる、
私のネットワーク、真なる神と統一のネットワークに、絶対に彼のような存在は拒絶的に推移する絶対異物、全てを崩壊させる因子なんだよ。
彼が絶対に望みをソレとしても、不可能なんだよ」
「ああ、それなら、あの覇者だって、ヒルダーネットワークの、そういう基本構造を理解しているんだろうよ、策があるんじゃないかな?」
「どうでもいいよ、
所詮は無理・不可能、可能だったとしても、彼がワタシを組み敷いて、凌辱して調教して、可能に変えるような事だよ、私は嫌だよ、拒絶するって事だよ」
「なるほど、そういや、天地戦争にも加担しているようだが?」
「ああアレか、アレはいいよ、使える材料だ、私もネットワークを構築して、戦場として準じ、仕様に耐えるように試みている所だ」
そんな事を話していた、
普段は、彼女の片割れ、鉄の女王として君臨するレイア、全てを絶無に、ヒルダの言う神ですら消滅させる奴と話しているのだが、同一だ似ているなんてモンじゃない。
覇者は言う、この世を真なる神の箱庭から脱却させる、運命からの完全開放、
ヒルダは言う、真なる神と邂逅し、無上の幸福に至る、全部同じだ、
「真なる神たる俺から観れば、お前らは酷く無駄で愚か、下らん事をしている」
「くっく、ふ、またまた、貴様が真なる神? 馬鹿らしくて反吐が出る、黄昏るのも、いい加減にしろ、夢から覚めて、現実を直に観るがいいよ、
世界はそれだけで、断然無限に、様変わり、
君はきっと、今なせる全てが全てだと勘違いしているようだが、それは実際は違う、
不可能を可能にし、可能を不可能にする、
例え君が本当に、真なる神だったとしても、関係無い、私は私の真なる神を見つけるだけさ、きっとそれのみが全てに通じる真理だと思うんだよねえ」
コーヒーを飲んでいた、不味いようで、それは美味しい味だったのかもしれない、その程度の事がほとんど世界の全てなのだという事なのだろうと、そう思った。




