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魔都の紅鬼‐幾度目か不明な、末期の戦闘

 


 序幕の鐘が鳴り響く。

 ——遠くから、うるさいくらいのサイレンのような音、が聞こえてくる。


「ぅぁ…」


 体がもう、動かない。

 これは死んだ。

 いきなり四千体もの飛竜乗りが奇襲して現われ、全員が全員未知の威力の銃剣装備とはね。

 流石に四千発もの制圧射撃、避けられない上に大ダメージも避けられまい。

 このころ、特に引きこもりだったから、勘とかも鈍っていた。

 というわけでもなく、これが、今回の限界だっただけの話だ。

 至って普通の、敗北、ゆえの厳然たる死。

 まだ世が世なら学生の時分で死ぬとは、この身も報われない。

 まあ一回前の僕よりかは、わたしはマシだと言える。

 確かまだ覚醒前、神祖として誰にも知られず、馬鹿みたいに学校帰りに居眠り運転のトラックに一撃だったか。

 でも何か凄く硬いのを突っ込まれて死ぬ感覚は同じだな、なんだ嫌な連続にならなければいいけれど。


 ああ視界が紅に染まってきた。

 なにもかも、世界の認識すら霞んでくる。

 周りには誰もいない、ボロクズに成り果てた私が一匹いるだけだ。

 上空で人だかりが出来ている。

 大抵の奴は顔を顰めて、怨敵を見下しているかしているだろ。

 まだ私は世界にいる。

 上では何か面白いのか笑い声が聞こえる。

 一部の私が、奴らを爆走トラックに引かせるようにぐちゃぐちゃにしろと言う。

 うん、それはいいね、いいや、駄目だよ。

 ああ、前にそうなった僕が否定している、私は肯定している。

 天使と悪魔の二重奏。

 脳内の天秤が揺れ動き、次の瞬間、その天秤ごと吹き飛んだ。

 酷く私は楽しそうに、笑った。

 常時携帯している鎌がパシャパシャと鳴った。

 私が振ったのだ。

 上空にはクロイ月が生じたように、ぽっかりと空間ごと切り取られたように真っ黒な風穴が開いている。

 なんて常軌を逸した出鱈目、物理則とかどうしたと小一時間問い詰めたい、写真でも撮って超常現象と騒ぎたい。

 でも、まだまだいた。

 ああ——本当に嫌になるな。

 殺しは嫌いだ、でも、殺されるのはもっと痛い、苦しい、悲しい、私を絶望に染まりきってしまう。

 もし、この絶望に私が芯から犯された時は、、、。

 きっとわたしは人を病めて、混のように全て掻き混ぜるだけの破壊者になってしまうだろう。

 だから、眼前の、、、を掻き分けて、掻き裂いて。

 飛竜の青い体液を服に染み込ませて、己の紅と混ぜたそれ着た人が、敵に駆け寄ってきたわたしだ。


「どけ!下がっれ!

 死んでてください!!!

 おいおいっ貴方達、しっかりしろぉ!

 まだ全然、大丈夫だぁ! 

 死ぬには、もっともっと切り刻まれないと!

 気をしっかり持ってっ向って来い!

 はいぃ!詰んだぁ!!!!

 おい!早くしろ!早く全員死ぬのはまだか!」


 三桁くらい肉を引き千切り裂いて、敵達の圧が急激に引いた。


「はいぃ!??、で?

 デスが嫌で逃げるんですかぁ??~~先輩方ぁ~。

 その方角はどう見ても撤退…、、、ふぅ、なら、もう逃がさない為に、手ずから殺せない。

 一撃で仕留める大技は、殺し甲斐が無いんだけど、しかたないのかなぁ?

 ・・・・・。

 馬鹿野郎!!!

 まだ必死に生きようとすれば、生きれるのに! 

 なんで最後まで死力を尽くして命を楽しまないんだよ! 勿体無い!くだらない!

 お前達は今在るしているんだぞ?

 それなのに助かりたいかよ! 死に損ないの恥さらしがぁ!!

 裁ける側が聞いて呆れるぅ!!

 全員シネ!! どうせくだらん命だろう!!

 ああ、わたしの俺たちが真っ先に止めを刺してやるよ!!」


 くそが諦めてどうする! 逃げてどうする! 

 お前らの最後なんて、わたしと戦って死ぬか、ただ死ぬかのどっちかだろうに!


「ヲイコラ!!」


 撤退する奴らに最大級の殺意を。

 ただシネ!!シネシネシネシネ!!!!!っと。

 遠くボトボトボトボトボトっと墜落する何千の飛竜たち。


「よわいよわい、弱すぎる!

 おまえら雑魚が!

 世界や強者のケチな道理に条理に口答えしている暇がぁ!あったらさっさと身の程を知り悟り自重しろ!」


 あぁ、よかったぁぁ。

 私の最後は紅に染まり、紅の最後には真っ赤な世界が広がるっている。

 嫌な気分で人生の幕を閉じてみれば、次の瞬間には最高な世界が広がっている。

 神も粋な奴だったな、認識を改めたよ。

 赤以外見る事にならなくて、もういいだろう。

 既に、これ以外に特に見るべきものもない、忘れたのかもしれないが、体の大半は闘争心とかの感覚以外にはない。

 誰が見ても私は狂人だ。

 存在として救いがなく、助かるわけがないというのに。

 わたしの主観からは、わたしは心の底から幸せだ。

 幸福に満ち溢れていて、この人は最後まで、多分このままなんだろうと、客観の私は確信した。

 まあ見捨てずに、客観のわたしはなんとか助けようとしてくれるのか、、、。


「ぁ、んがぁ!!」


 り…でぃ、が………。


「喋るんじゃない!!

 待ってろ!!絶対に殺してやるからなぁ!!

 わたしはわたしを助けてやるからな!

 諦めるんじゃない! まだわたしは始まってもいない、全ての鎖を断ち切るんだぁ————」


 人間的な客観の私が、主観の私と対立する。

 どちらも私なのに、わたしとわたしは相反していて、とても不安定だ。


「あっぁあああああああああああああああ!!!!!!!!!!」


 そこで、辛うじて保っていた理性も狂気も、同時に瓦解した。

 私は持っていた鎌もその他何もかも放り出して、意識を完全に途切れさせるしかなかった。

 

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