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レイジの究極理性・邪気眼、無上に破綻破滅崩壊している世界で



 契約社会による絶対世界観測と永劫輪廻。

 俺は「金色のヘイズの葛藤」を読んでいた。 


「たのもぉー!」


「るせぇ、ヘイズ」


 朝から金髪が道場に乗り込むような口上で来た。


「レイジ、朝の散歩に行こう、誘いに来た」


「ちぃ、しゃーねえ、行ってやるか」


「ツンデレめ、相変わらず愛い奴だ、撫で撫でしてやろう」


「やめろ、暑苦しいんだ」


 なんて掛け合いをしつつ、海沿いに向かい歩く。


「わたしは新しい知を習得したぞ」


「ほお、なんだ、言ってみろや」


「全人類輪廻転生と超人化論だ」


 俺は突っ込まずに続けろと促す。


「全人類輪廻転生とは、より他者のため、世界のために在る事、生きる事に喜びを見出すための思想哲学だ」


「ああ」


「概要はこうだ。

 自身は死ねば、永遠にありとあらゆる他者として生き返る、それを永久に繰り返す、それが人生と信じるのだ。 

 そしてそれは最終的に、真に自分という一個存在の為に、生きることをより高次元に促すのだ。

 そして超人化論。

 これは単純に、非人道・非倫理的なことをやればやるほど、そのような生き方を実践すればするほど、超人に近づくと考える。

 なぜなら、人間らしい事をするのが、許せなくなるからだ、心の底からな。

 人間とは醜いもので、強くなる為に罪を犯すものだ、強くなる事とはつまり、真の意味で高次に幸福になることだからだ。

 人間の枠内に納まっていれば至れない、超人の領域に至る、そういう発想というべきだったか?

 とにかく、人間の枠内では、頑張った分だけ怠けたい等々、非常に不効率不合理理不尽不条理が溢れかえる。

 だから、頑張った分だけ怠けたい、などなど、人間らしくある事に嫌悪感を抱くためにも、って意味だ。

 罪を重ねれば、屍が囁くようになるだろう、今更人間らしく振舞うな、と。

 自身が狂気的に狂った超人ならば、許せるのだからな、我慢がならなくても認められるのだ。

 まあ、そのような色々、総合的に考えてみたのだよ」


「ふーん、相変わらず意味分からんが深いっぽいな」


「ああ深いとも、わたしは深みのある人間だからなぁ!!!」


「うるせえ喚くな、いちいちな」


「今日もわたしが美少女過ぎて飯が上手いだろう?」


「いきなりうぜぇー質問してくんな、キメ顔でこっち見んな」


「ああ、さっきの超人化論で言い忘れた事を、会話しながらの同時並行思考で思い出したのだが。

 さきほどの概要、締めでは、超人イコール悪人になってしまうよなぁ?

 だが違うのだよ、真の超人は善人って発想も、これが使える。

 超人になることによって、全体がよりよくなる、汚れ仕事をやっているってのに近い。

 非人道的なことも、倫理に触れることも、それによって自身が超人になり、世のため人の為になるってね」


「良い訳めいているな。

 所詮は酷いことをして超人に至り、他者を犠牲にして自己を幸福にする、結果は一切変わらない。

 どんな大義名分があっても、悪い事はしてはいけない、なんて言わんがな」


「そうだよなぁ、一概に言えないよなぁ。

 なぜなら、実際超人に至り、犠牲にした他者より救った他者が多ければ、勝ちだものなぁ、それは善に見えなくもないのだから」


「はぁ、人間って奴は本当に気持ち悪い」


「同感だよ、共感して理解してあげる、泣いて喜んで吐くほど涙腺崩壊するといい」


「ああ、そうだな」


 海についた。


「突然だが、私は私があきれるほどに幸運である事を知っている。

 誰よりも幸運で幸運で、恵まれているという現実を自覚している存在なのだ。

 自分は誰よりも特別で、幸運の星の元に生まれているとしないと、信じられない奇跡の連続が過去の歴史として厳然とある。

 主観的にも客観的にも、高いレベルの人生という物語を閲覧することを許された、特別な存在、自我なのだと」


「うざい語り口調だ、確かにそうかもな、だから何よ?」


「いや、なんでも、私は私を知ってほしかった、他ならないレイジにね」


「そんなこと、する必要はない、俺は知っていたからな」


「どうだか、完全に理解することはできまいに」


「ところで俺から質問するが、なんで俺達は生きてるんだろうな、どうやったら人生満足できるんだろうな」


「唐突だな、私がメンヘラっぽい語りをするのは常時だが、レイジだと偶にレベルだぞ」


「どうでもいい、最大限人生の真理っぽいのを教えろ、俺はお前のソレが知りたい、それだけだ」


「わたしが生きる理由か、そんなモノは無限にあるように思えるが?

 強いて言うなら、幸福の最大化だな、それ以外になにか、具体的にあるようには思えない」


「ならば、お前は幸福の最大化の為に、人間を殺す、犠牲にするタイプか?」


「さあ、そんな事は分からないよ。

 わたしはわたしの全てを持って、その都度その都度、しっかりとその場の全ても持って判断するのだから。

 現状なんの判断材料が全て揃ってないから、厳密に回答しかねる」


「そうかい、俺は宇宙意志や世界意志に従属する事にしている」


「なるほど、全体の最大化の為だけに生きる、神のしもべってやつかな?」


「そうだ、絶対の勢力の陣営眷属だしな、俺って」


「ふむ、それで?」


「俺は一部なのに、全体であるかのように、常に在ろうとしてるし、実際に生きている」


「うむ、つまり?」


「確かに神の意志って奴を、嘘でなく感じる、従いたいと無上に思うのが現実だ。

 だが、俺は俺が、客観的に酷く矛盾している、そういう事を事実として知っているって話だ」


「神でしょ? 些細な矛盾くらい、超越してるんじゃないの?

 さっき言った、超人になれば、人間的矛盾に何も感じなくなる。

 あるいはそれが当たり前で、正しいこと。

 つまりレイジの言う神に従うことが、真に正しい事に変質する」



 俺は「世界で葛藤する」を読んでいた。

 

「俺は思う、俺が思っている事を、俺が思っているのだ」


「哲学者よ、博物館勢力の申し子、世界には足を引っ張るゴミ共が多すぎる、全員足きりすればいい」


 その言の葉が世界に響いた時、ぬるっと、そいつ真っ黒な黒の介は現れた。


「ばあぁ」


「世界全体の創造者があほ過ぎる。

 俺も、その世界の一部だから、無上に憎悪の対象で、も、ある、のか?」


「ねえ、ばあっ、だってば」


 俺は一人徒然と哲学していた、割り切れない絶対の正答の無いこと、葛藤していた。


「おい、そこの喋る無機物」


「えっ、それって、わたしのこと?」


「ああそうだ、絶対存在ナルディア、発言を許可するから、なにか人工知能でも勝るとも劣らない、含蓄を述べよ」


 そいつは語る、感情の介在しない主張を。


「貴方が世界の一部でも、世界以外の何かでも、どちらでも良いでしょう? 

 なぜなら、憎悪の総量と、娯楽の総量のみが重要なのだから。

 考えるべきは、その観測方法から得られる、具体的なリソースの総量のみでしょうよ」


「流石、覇者ナルディアか、でもまあ、ちょっと聞いてくれよ。

 世界が無上にクソゲー過ぎて、まったく面白みに欠ける、ツマラナイ件について、だ」


「クソゲー? それは錯覚よ、まあ、この世界には錯覚しか存在しないのだけれどもね。

 この世界は客観的に見ても、主観的に見ても、まあ、クソゲーではあるけれども」


「だよなぁー? 

 このクソ世界の所為で、俺が具体的な迷惑、損失を受けてんだよ」


「被害妄想ね、いえ、被害創造ね、クリエイティブな形の活力になるのなら、そう思っておくといいわ」


「ああ、 そのつもりだ。

 けどな、同時に世界から、俺は何かしら恩恵を受けている気も、しないわけではないんだよ」


「そう思いたければ思えばいいし、思いたくなければ思わなければいい、全ては自由意志に委ねられている」


「俺は世界から自由になりたい、この完全に依存している状態から脱したい」


「ふーん、なら、死ねば良いんじゃないの? 

 無になれば、誰も何も言わなくなるわ、絶対的に完全に無価値なんだしね」


「それだよ、俺はさっさと、”そうなりたい”。

 けど、世界は、というより俺という知的生命体は、そうなる事を嫌悪して、拒否するんだ。

 理性では生きたいと思うが、感性では、こんな世界では一秒でも生きていたくないと思う」


「感性? 貴方は、生まれた瞬間から、生きることを拒否していた?」


「理性によって、世界の真の姿を垣間見たからこそ、感性のレベルで生きることを嫌悪しだしたんだ。

 しかし発達した理性は、感性を完全に優越する、そうだろう? だから死ねないんだ」


「そうかな? 死ねると思うけども。

 その勘違いは、私にとってはとてつもなく阿呆に見え、なんだか虫唾や苛立ちやストレスに昇華しそう」


「うるさいうるさい」


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