エミリとレイジの固有ネットワーク‐基底現実、あるいは矛盾領域と図書館都市等々の光景素材情報物語
エミリという存在キャラクターと、レイジは、ネットワークで邂逅していた。
「ねえねえ、私って、やっぱまだまだキャラクターが弱いと思うのよ」
「そうだな、無限大世界の、無限の並行世界の中で、集束的に存在を先鋭化させて、巨大な像を結ぶ、統合的な超越的な存在として、
世界系の物語における、世界の裏側から、世界を守護やら破壊やら、あーだこーだするっていう、壮大な設定を付加するとか、どうよ?」
さて、ここは世界に冠たる引きこもり領域、蒼の回廊の最深部、蒼の天球か?
それとも、ただただ日常の現代社会の、彼女の部屋のベッドの中の方なのか? それは神のみぞ知る、いや神だって知らない、無限の謎なのであーーる。
「馬鹿エミリ、またお前は引きこもってるのか?」
「うるさいレイジ、それは私の勝手でしょうが、死んでて」
毎度のことだ、俺はコイツに構ってあげないといけない。
なぜなら、俺が居ないとコイツは駄目になってしまうって事を知ってるから。
俺が目を離して数日でも経ったら、多分ロープで天上からぶら下がってるんじゃないかと本気で心配する。
「さてさて、お前は馬鹿だエミリ」
「はぁ!!??」
「だいたい考えても見ろ、外の方が圧倒的に情報量が多くて刺激的なんだぜ?
家に居てどうする馬鹿が! ダボハゼが!
お前は家に居ても、刺激を完全自給自足できるほどの上位存在、高次元生命体なのか?
ちげぇーだろがっ! お前は毎日家から出なさい、俺と遊べ馬鹿屑ゴミ!」
「うっうるさいぃ! しっ死になさいよぉ! このぉー!」
おうおうっ、ウロタエながらも俺を追い出そうとしてくるとは、酷く行動的になったもんだ良い傾向だ。
「がっはっは、可愛い奴めぇ、愛いやつめぇ」
衝動的に頭を撫で回そうとするが、必死な手振りで止められる。
「うぅ、やめなさいよぉ! この! 馬鹿変態死ねぇえ!」
とりあえず、連れ出す事に成功、木々の生い茂る歩道、陽気な日向、涼しげな風etcetc。
「馬鹿がエミリ、お前は分かってるのかぁ? 毎日を最大限楽しまないと駄目だろうが、死ぬぜ?」
「はぁ!!??」
「一々反応がオーバーリアクションだな、良い傾向だぜ、きぃつけろぉよ?」
「あんた、そのうざい語り口調やめてよ、うざいから」
「うるさい。
さて、なぜか? それは簡単だ、人間は生きていれば劣化する。
存在の価値や意味を、次第に失う事を宿命づけられているのさ。
だから、現状維持は衰退だ、日々最大限の最善で生きれるだけ生き続けないといけない」
「はぁ、、ホントはぁだわ。
それで?」
「つまり、果てなく成長し続けないと、人間なんて駄目になるって事さ。
所詮人生なんてゲームだ。
現状維持で飽きや退屈がきわまれば、もう馬鹿になる他なくなる、思考停止野郎だ」
「へえ、そうなんだ、思考停止野郎が」
「本人に自覚が無くても、それは厳密には自殺したのと同義だ、精神的な、な」
「あんたぁー、ただ言いたいだけなんじゃないの?
ただ自分が語って気持ちよくなりたいだけ、それならやめてよね。
だいたいそれってなに? どこからの本の受け売り?」
「色々な本の受け売りさ、マイハニー。
さて、とにかく日々最大限人生というゲームをヴァージョンアップしなきゃいけない。
脳のシナプスの伝達速度って知ってるか? 思考力って言い換えられるがね。
なんとそれが、加齢によって30%低下するんだってよ。
やばくね? 超超やばくね?
これってアレだよ、一日が13時間くらいになるってこと、と同義じゃね?
寝る時間が7時間と仮定したら、起きてる時間6時間、あぼんじゃんっ」
「それで、今の内に人生を楽しまなくちゃいけないの?」
「そうだよ、もっとハイスペックにならないと、
将来的にも一流の楽しい人生を観測し、物語という鑑賞物を眺める事なんて夢のまた夢って」
「意味がわからない、あんたの語り口調は狂ってる、そこからまず直しなさいよ」
「嫌だね、エミリが直せって言うなら、俺は絶対に治さない、天邪鬼で反抗の男だから、ロックでレジスタンスだ」
「死んだらいいよ、もう面倒臭い、あんたと同じ空気を吸うと息が苦しくなるよ」
「別にいいじゃん、それって修行みたいなのに、なるじゃん。
てかさ、さっきも言ったけど、もっともっと上げなくちゃいけないわけよ。
己の生きる現実の全ての要素、特に、それに含まれる己のスペックをな。
次第に低下する思考力に合わせて、それを補って余りある価値ある情報を、脳内に納めないといけないの。
言ってしまえば、短時間で面白い情報を創造できるようにならなくちゃ、詰みなわけよ。
情報処理・演算・加工選別決断等々能力が低くなったなら、処理演算する前から高次元であって、面白くないと駄目なの」
「あんたは狂ってる、ホント狂ってる、よく正気が保てるわね、気持ち悪いから、見てるだけでね」
「ごめんごめん、言いたいこと高速で言い終わったから、次はエミリのしたいこと何でもするよ」
「いきなり従順になってからにキモイ。
そうね、まずは私の良いところを沢山上げて沢山本心から褒め称えなさい、限りなくね」
「はあ? そんな面倒臭い癪に障ること、できるわけねーだろが、ちった頭使って予測しろや。
お前の方こそ狂気、普通に正気じゃねーだろ、馬鹿、この精神異常者が脳に奇病わずらってんな死ね」
「もういい、あんたの事なんて知らない、どうでもいい」
「そうかよ、俺だってそうだ、お前のことなんて、真底からどうでもいいもんね、お互い様だ」
「それって本当?」
「ああ、一面の真実だ。
俺はエミリ、お前の事を心の底から、どうでもいい存在だって想ってる。
例えば、明日お前が死んだって、それはそれで、まあいいか、レベルの事象でしかない、所詮はその程度の価値だ、現状はな。
だが、同時、お前の事が無上にどうでもよくない、絶対に大事って、幸せになってほしい絶対に、想ってる一面だってあるのだ。
つまり、俺は普通に平常に、人間らしく複数の思想によって矛盾を抱え、それで葛藤してる苦悩だ」
「ふーん、相変わらず意味不明。
でもさ、それって変えたいと思ってるって事だよね?」
「馬鹿が思考能力のない馬鹿が。
思っては、いる、だが、何の変化も刺激もなく、変わるわけねーだろが。
現状を変えたいなら、それも俺を変えたいなら、お前が俺に一定の影響と強制力を与えるべきだろがカス」
「ねえねえ、ねねねえぇ! レイジ? わたしのこと、ほ・め・て♪(ハート」
「そうだな、評価するなら75点、無難に決めてきやがる」
「ふーん、へえぇー、で、どうなのよ?」
「知るかボケ、自己診断しろ、出来損ないのクソ女が頼ってくんな気持ち悪い消えろ失せろ死に晒せ去れ」
「はぁーあ、あんたの罵倒芸も飽きてきた、なんか他に特技なかったっけぇ? あーなかったかぁー」
「死にされろ、あるに決まってんだろ。
ちょーし扱いてると、パワー系池沼みたいにクソメンヘラ屑男が顔面ぶっぱするぞ」
「あんた言語中枢逝かれていない? 大丈夫? 結婚したげようか?」
「吐き気がするから抑えろ、てめぇーに同情されたら俺は死ぬしかなくなる」
「はぁーぁ、もうなんか退屈でやだぁー、つまんないぃー」
「求めるなら、まずお前が求めに答えるべきだろ」
「むりむりー、わたし愚図だから、何にもできませぇーん、ごめんなちゃーいですぅー」
とか言いながら、馬鹿みたいに優雅なステップを踏む無駄なスペックを発揮する意図は?
「知らん、お前はやはり一度死んでから出直した方がいいぞ、その方が、マジでいい」
「うっざいのよ、あんたは、見てるとイライラ虫唾走るムカつくのよ、この!」
「ばかやろうがぁ! 軽率な暴力的なバイオレンスで笑いが取れると思ってるなら返り討ちにしてやるよぉ!」
女の癖にちょっと強い奴が、ガチで取っ組みあいになりかける、もちろん俺は手加減してやってる。
それを知らんか、マジで俺をどうにかしようとしてくる、本気出して恐怖を与えてやろうかしらん。
「ほらほら! あっはっは! なにコイツ! 女のあたしと同レベルとか! 実質負けじゃん! ざっこ!」
「ばーーーーーーーーーか! 手加減してるだろうが! 見て分かれ、腕の太さ段違いだろうがぁああああ!」
帰路。
「疲れた」
「エミリ、茶でも持ってこい」
「なんでよ」
「なんでもだよ」
「理由を言え」
「遊んでやっただろ」
「馬鹿、わたしが、貴方と、遊んでやったの、勘違いしないでよね、つんつん」
「馬鹿が媚びやがって、かわいくねーんだよ、別にな」
俺はお礼というわけじゃないが、茶をよそってやろうかと傾いた。




