トランプの世界‐虹子とイツキと虹香とレイジ
「へえ、なるほど、私もまだ登録四ヶ月目くらいの稚魚ですが、お互いがんばっていきましょう」
特につい先ほど、通信だけで交流のあったダイヤの別働隊と合流できた。
虹香とレイジと言う二人組み。
これで四人、パーティーとして形は出来た。
これで本隊に合流できれば言う事はないのだが。
だが本隊は常時高速で機動し、敵の大規模補給基地、補給線を叩いて回ってるようだし。
これは首都に一度帰るべきなのかどうか。
しかし、本隊に合流すれば、そのまま作戦行動に追従できる。
首都に帰っても特にやるべき事はない現状なのだ、無駄飯ぐらいの穀潰しにはなりたくない。
「ああ、付け加えるとすれば。
数日前、ハートの女王と見えるお方と、スペードとクローバの連合隊の戦いを見かけました」
「ああ、それなら知っている、ハート領内での蛮行に、女王が向ったと報告が上がっていた」
俺とレイジが、それなりにシリアスに話しているのに。
向こうの女子二人、虹香と虹子は、まるで姉妹のように姦しく、下らないに値する話をしている。
「おいイツキ、この子可愛いぞ」
「えっへっへ、それほどでもぉ~」
といった面と々に、俺はシリアスな殺伐内心を揺さぶられないように歯噛みした。
すると全員に、一方的に不審な目を向けられた。
くそ、変な心象を抱かれたか?
「うぅ、わたしのせいで、イツキが心労を抱いてるんだよねぇ?
こんな可愛い恋人が危機にあって、こころ休まらないと思うけど頑張ってねぇ、うるうる」
世迷いごと吐きながら、なぜか擦り寄ってくる、あちぃってのにぃ。
「うぜえぇ」
こんな年中メンヘラーハイな女のお守りで、俺も精神的にかなり不安定になってしまっている、かもしれない。
やっぱ首都に一度帰るべきかもしれない、、、いや流石に自棄になるには早いだろう。
ヘンテコ感が漂う時空。
俺とは色々違って、レイジにとって、虹子は可愛い娘なのだろう、今も撫で撫でして猫のように愛でている。
これだけで俺の次の行動、その二の足を踏ませるのには充分すぎた。
なんか、ただでさえ無いやる気が一気に衰えた萎えた、もうどうにもなーれってね。
はぁもうなんか人生が嫌になる、個人的鬱と言ってよい。
なんで俺には、ああいう可愛くて愛らしくて愛嬌のある彼女がいないのか。
咥内で自然「てらうらましすぅ」っとか呪詛ちっくに呟いてる辺り重症に過ぎる。
「どうしたのぉ?さぁ? 涙目だよぉ?」
隣の女を見る、というより少女だ。
一目で俺とは釣り合わないね、と分かる、年も若い。
たぶん馬鹿っぽいから人生経験も浅い、建設的な付き合いは望むべくもない。
つまりは、保護者、被保護者の関係性しかありえないということ。
つまりイコール俺の負担にしかなりえないのだ、ってとこだぜ、これ以上の不条理があるか。
そんな俺を、鬱々してるのを見かねたのかね?
レイジが近寄ってきて、頭を撫でてくれる。
なんだろうか、頭撫でるのは、こいつら一流の他人を元気付ける文化なのだろうか?
「元気出してよイツキ、俺の胸なら貸すからさ」
「ありがとよ、胸は借りないけどな」
こうした感じで、鬱蒼とした森の中を適当に駄弁りながら、無駄に変に接触されつつ過ごした。
未だに理解不能な面々だが、悪い奴らじゃないのは、流石の俺でも理解できたぜ。
まあ状況を重ねて、お互いに理解を深めれば、それなりに仲良くなれるだろうって安心が生まれたんだ。
他者から急に慣れなれしく接近されて、リアルなら素気無く追い払う俺でも、ここじゃ順応しないといけないな。
「一緒に寝よ? イツキ」
猜疑とか負のアレが一切無い、純真無垢な瞳。
コイツはもう、もう。
なりゆきで命を救ってからというもの、一目ぼれでもした感じだ。
俺はそういうメンヘラが運命とか安直に感じて、それで安い恋愛に嵌るみたいなの、すごく嫌いだ。
でも、ううん、なんでコイツのソレは格別にアレだ、あれなんだよ! わかるよね!
そう、コイツは普通じゃない、その心も見た目も、酷く例外的な位置にあると思うのだ。
ただのメンヘラなら、ここで髪を撫でてやったりしないしな。
俺の中で特別に値する理由は、コイツがコイツだから、もう十分だ、変に考えるのはやめよう。
「イツキ。
君はわたしが一時の気の迷いで、好きとか、愛してるとか、言ってると思うよね?
しょうがないと思う、わたしの気持ちは、イツキには完全に伝わらないから。
でもね、それでも伝えさせて。
わたしはイツキを生涯愛する、絶対の恋を、運命を、貴方に感じたの。
あんたが一生で一回限りの恋人だって、そう確信して信じて、悟ったの。
それ以外は絶対に私の中でありえない、確定事項、このわたしの運命を既に生まれた時から信じてたの」
こんな意味分からないこと、ジッと両の穢れない無垢な瞳で見つめられながら言われて。
よくわからない迫力と共に真摯に向かい合われて、真剣の姿勢を向けられて。
もうこれは、それは俺の神経のひとつもおかしくなってくるってものよ、そうだろう?
今はまだ、コイツの存在感は俺の中で、それほどじゃない、猫の爪で擦り切れた程度で済んでいるが。
毎日こんな風に接せられた、俺は多分、本気で彼女を好きになってしまう、かもしれない。
こんな可愛い女の子だ、自分の命すら惜しくない、己の命よりも大事にしてしまうかもっだ。
それは今の俺にとって嫌悪的なことだ。
俺は俺が大事だし、そういう事態はアレだ、彼女に対して負けた気がする。
人一倍負けん気も勝ち気も強いつもりだ、こんな小娘に俺が劣勢なんて認め難いのだ。
「イツキ、好き、わたし、本当に君が好きだよぉ、、、」
ああ、このような状態が長く続けば、早晩といわず、早朝にでも、変になってしまうかも。
俺はそうそう、精神の均衡が崩れない内に、寝ることにした。
だって、もしそれを保てなくなったら、俺は彼女を傷つけるかも。
もっと酷ければ、錯乱してハイになって、そのままなし崩し的に既成事実ぐらい作りそうだ。
そういうのはダメなのだ、絶対にぜったいにいけない事だと思う、破廉恥という奴だ。
欲しいものがあるからって、力技で奪うみたいなの、ダメだろ、そうだろう? 俺よ。 起こし
「ねえイツキ、今日さ、、、抱いてくれない? いや、、、ダクゥ!!!」
うわぁ!!
さっきのはぶりっ子だったようで、爛れた本性を現してくれやがったようだ。
流されても不思議ではなかったので、在り難いとさえ思う、ちょっと残念だったかもしれないが。
俺は少女を足蹴にして、隅の方に追いやって、毛布を被りなおした。




