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エクストラシャペルンの図書館‐混沌の究極的情報生命体★★★


 


 俺は今日も今日とで、エクスラシャペルの図書館の一つに入る。


 ここの奴らは、大概は井の中の蛙だ。

 広い世界を知ろうとせずに、ただただ只管に自らの認める真理の探究の為に生きる事に価値を見出す。

 だがしかし、だからこそ、酷く人間的な活力に満ち溢れている、という側面がある。


 この世界は、絶対的存在に溢れていて、それを知れば、そして深くそれを知ろうとすれば、簡単に深い真理に到達できてしまう、そういうモノだ。

 そんな世界で、生き生きと人間らしく生きるのが、どれほど困難なことか。

 このエクスラシャペルという場所は、”矛盾性”という陣営勢力の最大にして絶対の拠点であり、外部から保護されているようになっている。


 まあ、保護といってもだ、それはただ他の絶対存在に蹂躙されないだけで、俺のような他の勢力の人間は簡単に侵入できるのだがね。


 俺は混沌の勢力に属す、いち観測端末、混沌の女王ナルディアが無限に近く分離させた、そういう存在である。

 だから、俺は、人間が持ちえる最大級の行動理念で、女王に従うように、そう作られている。

 彼女の唯一の望み、この世界というゲームを限界まで楽しみたい、それに最大限、限界まで協力せよ。

 つまり、究極的に言えば、生きたいように生きろ、という事だ、が、、、あまり単純な話にならない事情があったりする。

 なぜならだ、俺は絶対の強度とも思える、混沌の女王の無限に熱く滾る欲望、渇望により、それを一身に浴びて生まれたような存在、だから平凡に生きていない自覚がある。

 日々、どうしたら今より俺の人生を、相対的にも絶対的にも高次元にできるかだけを考えている。

 それは既に己の感情すら介在させず、持ちえる手段を掛け値なしに選び実行する、非人間的な境地に達していると思う。

 だからか、最近俺は鬱々としている。

 この全時空世界でも、最高に良い環境と言える此処で、最も効率の良い情報収集活動をしているが、今ひとつまだまだって感じがするのだな。


「イメージできない事は、絶対に実行することが出来ない」


 図書館から出て、道端を歩いていると、空から声がした、上方に顔を向けると、箒に乗った長い銀髪を垂らす魔女がいた。

 目が合い、その紅に染まる赤の瞳を見つめると、酷く場違いな胸の高鳴りを覚えてしまった、なんか不覚を取った気分だ。


「ハルカか、何だ?」


「別に、同属が居たから、近寄っただけ、ちょっかい出そうと思って」


「そうか」


「そう、ところで、神格に、到達できそう?」


 唐突な質問、だが、俺達の目指す、錬金術師における賢者の石のような階層、到達点の話なので、俺は訝しがらない。


「まったく持って、どうにもなる気がしない」


「つまり、イメージできない感じ?」


「ああ、そうだ、おぼろげなら、イメージできるのだがな」


「そんなイメージは意味ないよ、絶対の確信に基づく、イメージじゃないと、ね」


 頭上でクルッと一回転して、スタッと地面に降り立つ、俺は立ち止まって彼女に向き合う。


「たとえ話をしようか?」


 俺の返答を待たずに続ける。


「私が今、面白い話をしようとする、でも、そのイメージは、曖昧で不確定、サイコロを振るように乱数でしか面白さが決定しない。

 でも、絶対の確信に基づくイメージ、色々な確固とした技術体系に基づく話術とかを持っているなら、針に糸を通すような奇跡的な最大乱数を必然で引き、面白い話が実際にできるの、つまりはそういうこと」


「確かにな、神格を完全に再現するには、そういうのが必要そうだ」


「うんうん、そうそう、他にも例え話をしようか?」


 またも返答は待たずに、何事か手の平をグーパーグーパーしたり、指を小器用に振り回したりしている。


「私は、最大限の娯楽をイメージしても、無限の魔力が発生しないの、エネルギードライブできない、ほらぁ」


 彼女の手の平で、時空の亀裂が発生し、高次元なる世界の粒子が際限なく撒き散らされる。


「この事例だけでも、私が神の格に至っていない、絶対の証明だよ。

 イメージが、絶対の階層に至っていない、この世界を限界まで楽しめていない証明、、、悔しいよ」


「だろうな」


 愚痴かどうかすら分からない遣り取り、である、彼女の狙いはなんだろうか?


「限界まで楽しむのは、不可能なのかな?」


「限界の領域で世界を楽しむには、自我が邪魔するのだろう、それこそ神の領域に至らなければ、いけないのだろう」


「遥か高みに存在する、そういう位階ってこと?」


「そういう見方もできるが、直感的に、音速と光速を、同列に並べられんように、そこには絶対に比する差異があると思うぞ」


「だろうね、だって私は無限に生きれたとしても、神格に達せれる気がしないもの」


 当然の事実確認のような、再認識活動であるな、これは。


「はぁーあ、ナルディア様は、最も神に近いんだろうね」


「そうだろうな」


「羨ましいとか、貴方思ったりする?」


「どうだろうな、良く分からん、この町の奴らのように、人間で在り続ける在り方も、良い物だと俺は思えるしな」


 ハルカは俯き、暗い表情を垣間見せる。


「わたしは、それじゃ満足できないよ」


「満足など、ひと時の幻想だ、求めること自体が愚かだと、俺は思うがな」


「そんな思考遊びはしてないの、私はただ、”そこ”に至りたいと思っている、ただそれだけよ」


 紅を煌々と輝かせて、滾る欲望を感じさせる彼女は、なんか熱くていいなと思った、酷く人間的だと思った。


「それはそれで、いいと思うぞ」


「そうでしょうね、私もこんな私を毎日感じれて、日々しあわせよ」


 皮肉げな声色である。


「しかし、な」


 なんとなく、言いたくなった。


「お前も俺も、所詮は、世界にとっては、駒でしかないんだろうけどな」


「駒、ね、歯車って表現した方が、正しくないかな?」


「そうだな、世界を回転させるための、歯車だな」


「そう、無限に替えの効く、いるのかいらないのか、良く分からない、無限に回り続ける歯車だね」


「世界というシステムを、アップデートする為に、その為に必要な全て、モノしか生まれないわけだしな」


「それは結果論だと思うけど?」


「結果論だろうと事実だ、不要なモノは生まれなくなり、必要なモノだけが残り続ける、それが無限に繰り返されるのだからな」


「内面世界もそうだね、私にとっていらない私は、無限に消滅し更新され続けるってね」


「世界という個人の、内面世界内における存在が、俺達なのだろうな」


「面白い新説だね、そうかぁー、世界とは、ある個人の内面世界だったのかぁー」


「そうだ、だから、俺もお前も、自分の内面世界の存在、それに生きて欲しいように、生きないといけないんだろうな」


「ふむふむ、独自の世界を管理する観測者は、言うことに実感が篭ってるね」


「ああ、常々いろいろと思うことがある、からな」


「最近手に入った、有用な手札はあるかい?」


「そうだな、クイーン級の、面白い奴を取り込めたから、今度競ってみるか?」


「おもしろい、私もトランプの札が豊かになってきたから、機会があれば参戦するよ」


「それがいい、片手間に札だけの参加でも歓迎する」


「いんや、それじゃ面白くないよ、盤上に立って駒を操作しないと、ね、やっぱ面白さ半減、暇ができて腰を据えてやりたい派だよ、私は」


 ゲームについて色々細かく語っていると、突然彼女は言う。


「ゲームをしていると、神の視点が、例えばナルディア様の視点とかを、より高度に、再現率高く想像できるような気がするんだ」


「それはそうだろうな」


「うん、駒に、もっと有用に動いて欲しいとか、ね。

 つまりは、使う側、使われる側、支配する側される側、とか、ね。

 だから、私はもっともっとゲームをするべき、したいと思うんだ」


「そうか、それは向上心があっていいな」


「だよね、駒を使った死闘なら、それをもっと深く体験できると思うんだ、、、」


「つまり、自分の手駒の命を賭けた戦いでも、したいのか?」


「そう言ったつもりはなかったけど、それも良いかもしれないね」


「そうだな」


「さて、なんか、そんな殺伐したゲームもありだけど、普通に勝敗だけを賭けた健全なゲームも、私は好きだよ」


「まあ、ゲームの形は千差万別だからな」


「お互いの誇りだけを賭ける、そういう純粋なゲームってことだね」


「根本的には、奪い合いなのかもしれないな、ゲームというのは」


「私にとって世界はゲームだから、世界は奪い合いって事になるのかな?」


「それは究極的な真理だろうな、奪い合いという物質の動きがなければ、世界は永遠に停滞してしまうだろうからな」


「世界が流動し停滞しないためには、奪い合い、ゲームという娯楽が絶対必須なんだろうね」


「そうだろう。

 知的生命体という、世界の流動性を加速度的に増大させる、究極の娯楽存在の必然的発生が、それを証明しているのだろう」


「だね、世界は実際のところ、どうだか知らないけど、確実に知性体は、娯楽が無いと次第に非活性化して、最終的に自滅するし」


「そして、究極の娯楽とは、観測者として、世界を管理運営することだろうと、俺は思う」


「ではやっぱり、私達の生きるこの世界も、誰かに、そうされているのかな?」


「さあ、そこまでは俺にも計り知れない話だ」


「突然だけど、宇宙に、生命の無限の神秘が内包されていると、思わない?」


「率直言えば思うだな、逆に言えば、生命の神秘に、宇宙の真理が隠されているとも言える話だがな」


「やっぱりそうだよね、私も宇宙の管理や観測は好きなんだよ、最近のマイブーム」


「ほお、どのようにやっているのだ、それは」


「単純だよ、無限に近く広がり回転し続ける銀河、星の海を、ただ有るモノを有る物として、見て触れてみる。

 そして、在るがままを現実として全部、感じた分だけ、自分の中に純粋に受け入れる、そういう活動」


「それから、なにか得るものはあるか?」


「あるよ、宇宙は無限に広くて、回転してる、内包される無限の在り方を持つ星ボシとか色々、それを事実として理解しても、それじゃやっぱり不足だって事がまず分かる。

 やっぱり、感じれないと意味がないってね、事実なんて感じる為の方法で、見たり触ったりとか、無限の方法を試して、しっかり感じる必要が絶対にある。

 私は私の中で無限の開拓を行って、それを始めて実感として体験できたよ」


「そうか、宇宙にはそれだけの価値が、あったか?」


「もちろん、是非、どこでもいいから行ってみることをお勧めするね」


「そうだな、暇があればそうしよう」


 彼女とはその後も色々と語った。

 そして唐突に別れを切り出されて、箒に跨り飛んで行った、それは何時もの事だ、俺はまったく動じなかった、いやそうでなくても、別に動じるほどの事でもないだろうな。

 俺は俺の、今一番やるべき事をする為に、まずは何が一番の優先順位に成り得るか、考える思考を始めた、のだった。

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