観測王と全能なる少女-未知なる上位世界を夢に見て
「上位世界に行きたいかぁ!!」
「お、おおぉー!」
金髪のロリ美少女、だが実態はアカシックレコードの意識体という信じられない、だが現実だった。
俺は観測者だ、ただ無限の生命を観測に費やす、非生命のような完全なる知的生命体だ。
ひょんな事からコイツに捕らえられて、物理的にも強制的に拘束されている今日この頃だ、はぁ。
「おい、聴いているのか? アルド?」
「ええ、聞いてますよアンジェ」
「上位世界に行く方法を、これから探すんだぁ!」
キッパリ言うが、果たしてそれは、そんなに明るく前向きに言える内容なのかね。
上位世界とは、この世の外である。
ちなみに”この世の外”とはこの場合、全知全能の神である彼女にとっての外であるからして、単なる並行世界とか異世界ではない。
それより外の、もっとスケールの大きい、あるかどうか、存在の段階で確証すらも全く認知不明の、現在絶対に分からない行けない可能すら有る”外側”だ。
「さて!」
「どうするんですか?」
「情報収集だ!」
まず向かった先は、図書館の主と呼ばれる存在の場所。
七大絶対存在と呼ばれる、この世界において指折りの有力者、存在の格としては世界と同義の彼女と同等か、それよりもチョイ上かもしれない。
「やあぁあああ!!!」
「図書館で大きな声出さないでください」
「うるさいなアルドは、大きな声に勝る娯楽はないのだぞぉ!」
「時と場合を考えてください」
「やだよぉーだ! べろべろばわぁああ!!」
これでもか!ってくらい、両手を使ってふざけた小癪な顔をするアンジェリカ様、ああヤバ、俺も凄い存在の癖に子供っぽいな、この子を泣かせたい。
「微笑ましいですね、なにか御用ですかな?」
広大な図書室、ステンドグラスから虹色の光が差し込む場所に、幻想的に佇む性別年齢全て不詳の美麗な立ち姿が印象的な存在。
彼がその人だろう。
「やあやあぁ! 上位世界につれていってくれたまえよぉ!」
「あっはっは、それは私が貴方に、頼もうと思っていた事ですよ」
「なんだ、当てが外れたぞ、コイツは使えないな」
「ちょ、言葉が悪いぞアンジェ」
「いえいえ、いいのですよアルド様。
この世界の有力者として、この世界のシステムを満足させられないのは、ある意味でわたしの不徳の致すところでしょう」
「そうだそうだぁ!!この無能者がぁ!ばーかばーかぁ!!」
ああコイツ、上位世界に何時までも行けない鬱憤の方向性を、よもやこの人に向けたんだろうか、しょうがなさ過ぎて呆れる。
「すみませんでしたぁ! ここら辺で退散しますね」
無闇に、まさかこんなこと程度で恨みを買うとは思えんが、無様は晒さないに越したこと無いだろう、アンジェを連行しようとする。
「変態がぁ!!! この!!この!!!!」
しようと思ったが、逆に組み伏せられて、小生意気な少女の尻にしかれて、まるで椅子みたいになってしまう、放っておけば良かった、より無様をさらしてんじゃんか。
「はは、アンジェリカ様、良ければ、貴方にとって未知なる本を差し上げましょうか?」
「はあ? そんなものあるわけないだろお? わたしは掛け値なしに全知全能なのだぞ?」
コイツは一見、馬鹿で間抜けで小生意気だけがとりえのド腐れたマセてヒネた糞ガキっぽいが、実は違うのも真実、一体その本とはなんだろうか?
「私が運営する、仮想上位世界の空間の書物ですよ」
「馬鹿、そんなの既知の一部だ、無駄な試みを、だが、一応もらっておこお」
ほお、コイツも最小限の礼儀は身についているのか、相手の顔を立てるなんて事もするようになったのかね。
「それでわな、はあ? 何時まで床に這いつくばっているぅ? 見苦しいぞ、はやく来んかいアルドよぉ!」
「はあ、まったく、それではまたぁ、、」
「苦労されているようですね、頑張ってください」
「ああまあ、これくらい何でもないですよ、本当の話です」
適当にスタスタ走って、外に出て日を浴びて伸びてる奴を、一瞬小突きたくなったが我慢した俺は偉いだろう。
「どうだその本、もしかして未知だったりするか?」
「そんなわけないだろう、これも既知だ、つまらん、お前にやる」
「ああ、お守りにするよ」
胸にその本をしまい入れる。
「あーあー、この世界は果てしなく暇だ、詰まらない退屈だ、どうしようもないなぁ~~!!」
があぁーっと両手を挙げて太陽に咆えるように、悪態を延々吐き連ねる少女の形をした何かが観測できた。




