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イルミナード宇宙軍‐ハイスペースなソサエティ


 


「んあぁ、、、??」


 昨日いつ寝た?


 ぼんやりした頭を揺すっても、呼び出せない、というよりも記憶がない、ようだ。


 まあ、偶にはこんな日もあっていいだろ。


 こういう事言ってると、多少ばかり、「お前、毎日”そんな日”を生きてんだろ?」とか、思われるか知らんがね。

 少なくとも、俺はそうじゃない、そういう奴も沢山いるか知らんがね、俺は例外って事で。


 そんな自己弁護的思考を徒然しながらも、しっかりと起きて身支度してんだから、やっぱ俺は例外かね、どうやら。



 今日も今日とで、仕事だ。


 世間では働いたら負けとか、そういう話もちらほら聞くが、俺は働く事が生き甲斐に近いので、そういう事は思わんね。


 まあ、仕事が”こういう事”なら、それなりに楽しみも、世間の平均的な仕事よりも、見出しやすいかもしれないしな。


 ネットにアクセス。

 ブックマークに登録されている”とあるページ”に飛ぶ。


 暗号化されたページで、二十四桁の暗証番号を入力。

 そのあと、更に生体認証も、軽い奴だが済ませる。

 更に更に、その後に十二桁の暗証番号を入力、やっとページ基部に到着。


 広域治安維持官になってから、早数年、此処にアクセスするのも、本当に手馴れたもんだな。


 そして俺は、日々更新される、地域ごとの大きな事件、更には仕事の、警吏活動の委託や募集のページを閲覧する。


(へえ、珍しいな、ここ近郊で、海賊騒ぎたぁ、、、)


 その中で、目を惹く内容がひとつ。

 西側でも、比較的防備の高い此処、”地球周辺地域”で、海賊騒ぎはあまり聞かない話しだ。

 まあ、特段大き過ぎる話ではないわな、特級に珍しい事件ってだけで、規模も大したことないし。

 そんな感じで、数時間適当に、情報収集。


 う~む、ページの更新情報を眺めても、いつも思うが、警察情報の、そのシークレット以上は、やはり記載されない場なんだよな此処は。


 やはり、惑星警察や、連邦警察、帝国の保安官、その他諸々、そういう正規の場所に入った方が良いのだろうか?

 でもな~、其処に入ろうと思えば、身分を証明する必要があるしな、色々と面倒だ。

 第一、拘束時間も長いうえに、監視の眼も気にしにゃならんくなる、リスクに対してリターンが少なすぎる。


 そんなどうにもならない事を考えていると、携帯が鳴った。


「おお、アリア、なんだ?」


「仕事の依頼だ、頼めるか? 

 というより、今は暇か? 手が空いている感じか?」


 電話口から、少女としか思えない、瑞々しい声。

 若干だが、久々に聞くな、もう二ヶ月ほどか?

 この一時期行動を共にした、パートナーとも呼べる存在、偶にこういう風に連絡をくれる。

 聞く所によると、意外とお偉い立場の人間らしく、こういう風に仕事を割り振れる立場らしい。

 それ以外は知らない、ミステリアスで、信用もそれほど、客観的にある訳じゃないが、主観的には、信用しても良いと判断しているくらい、そういう奴。


「ああ」


「それは良かった。

 早速だが、例の地球周辺での、海賊騒ぎは知ってるかぁ?」


「ああ、さっき見たところだ」


「その件だ、合流して、討伐に向かう話がある」


「なるほど、話を聞こうか」


 話によると。

 新型の、西側諸国原産の、規格部品が盗まれたようだ。

 宇宙海賊の規模は、どうせ大したことない、らしい、推察だが、あながち間違わないだろう。

 所詮は大国の艦隊、その規模に比べれば雀の涙以下、管理された現代宇宙で、宇宙艦隊を上手くちょろまかして、上手いこと揃えるのがどれほど難しいかって話による。


 で、問題は盗まれた物。

 第三世代機、俗に機動兵器と呼ばれる代物、それを作る為に必須な部品なようだ。

 どうやら、これが東側陣営に渡ると、相当な戦力の増強を許す結果になるらしい。

 俺も良く知る話なんだがな、これに関しては。


 科学技術優位の西側陣営、総動員やら非人道的な方法で、物量等々優位の東側陣営。

 俺も前線で、機動兵器戦をしてたから分かる話なんだが。

 敵に第三世代機がない、それがどれほど有利になるか、知らない話じゃない、身に染みてるってわけだ。

 俺は別に、ソレを持ってるわけじゃないが、ハッキリ言って、無双ができるだろう、第三世代機を持ってれば、戦争直中の最前線で。

 キルレシオとかで言うなら、第二世代機相手で100倍、第一世代機で一万倍くらいか? 予想だがよ。


 そんな訳で、精々が自力で第二世代機しか作れない、今の東側陣営に、そういう第三世代機を作る為の部品が盗まれるのは、面白くないってだけの話だ。


 そして、今から盗まれた部品を奪還するって? 


「追いつけるのか?」


「ああ、問題ない、最新鋭艦の、連続ジャンプで、東側陣営の国境より前に、追いつける計算だ」


 景気が良い話だと、素直に思った。

 連続ジャンプ、つまりはワープ航法を、連続でするって事だ。

 光速を超えない事には、宇宙なんて無駄に広いだけで、活用範囲は極端に限定される、その制約を破ったのがコレ、なんだが、、、。

 その宇宙法則を出し抜く技、分かり易く言うと、MPを極端に消費するんだ、それも数時間の自然回復が必要なくらいだ。

 それを連続でする、普通に無理なはずだ、それを可能にするって事は、最先端の無駄に金の掛かる技術が絡んでると、読めるわけだ。


「そうか、なら、なぜ俺のような末端にまで、呼びかけを行っているんだ?」


「??? 意味が、掴みかねるが?」


「分かり易く言うとだ、わざわざ機密保持も考慮しなくちゃならない現状で、俺を狩り出す意図は?」


 莫大な金が絡むと言う事は、何か意図ある、巨大なプロジェクトがそこに存在する、と読める。

 無駄にそんなんに投資するなんて、絶対にありえん話だ。

 そして、緊急事態で、実験も兼ねてか知らんが、狩り出される最新鋭艦。

 その色々とヤヤコシイ守秘義務も、恐らくは伴う、とりあえずは火急な任務も背負う艦。

 それに、緊急なゴタゴタもあるだろうに、俺なんかをいちいち同伴させるメリットは、俺の視点からは少なく見積もるのだ。


「何か勘違いしているようだ」


「予想するに、いち、末端ではなく、俺個人だけ。

 ニに、既に、全ては整っている、もう出発まで時間も、あまり無いんじゃないか?」


「なんだ、分かっているじゃないか、ご明察な推理の通りだ。

 ライルにだけだ、この話を持ちかけているのは、他に多く持ち掛けれる話でもないのだよ、これは。

 機密保持うんぬんも、私がライルを保証すれば、いろいろ便宜が図れて円滑に、いろいろ捗る形で上手い具合になるんだ」


「それで、俺のやるべき事は? 具体的に」


「私の僚機だ」


「釣り合わんな、主に俺が」


「構わない、この話を持ってきた時点で、それは察っせれるのではないか?」


 こいつの僚機とは、また大任だな、俺なんかじゃ力不足だ。

 アリアはエースだ、俺は精々準エース格止まりの、比べれば見劣りを多分にするレベルなのだ。

 帝国の定めるエースの基準で言えば、同世代ベースの撃墜数、確か200機くらいか? その半分行くか行かないくらいだぞ、俺は。


「それで、受けてくれるのか、くれないのか、どっちなのだ?」


「俺が必要とされているのなら、そして、その中で優先順位を定めるならば、お前の話は最優先だ」


「よし、それでは決まりだな。

 では、今すぐ転送する落ち合い場所に、そして記載の持ち物全てを持って、来てくれるな?」


「了解した」


 電話が切れて、その直後、俺の腕輪状の端末に、情報が送られてきた。


 さて、久々のアイツとの仕事か、しかも無駄に壮大そうな。

 今回も生き残れる事を、神に祈るばかりだ。

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