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境界線上に君臨せし観測者と哲学少年


 


 ある一家の団欒の風景である。

 俺は一人暮らしだ、なのに一家なのは、果たしてどういう事なんだ?


「おいニルディア、より高次元に生きる為に、有意義な話しようぜ」


「いいよ、しようしよう」


 目の前の、黒髪の令嬢風の女性。

 この人は、自称”観測者”と、そう呼ばれる存在らしい、どの界隈で呼ばれているか俺は全く持って知らん。


 いつから、俺の傍に居たかは、もう忘れたが、相当に前から傍に居た。

 俺以外には見えないし、触れない、俺以外には空気以下の存在しか持たない、そういう特性を持っていたりする。

 ネットで、俺と似たような境遇の人がいないか、少し前から情報収集したが、収穫ゼロ。

 目の前の、軽く全知全能っぽい、歩く全宇宙辞典のような存在にも、それとなく聞いてみたが、収穫ゼロだった。


 まあ、そんなあれこれは、今はどうでもいいな。

 こいつとの、日々する雑談は、割と取りとめもない。

 宇宙の真理だったり、多少高尚な時もあるが、大抵は友達とするような、軽すぎる雑談に終始する。

 今は、俗に哲学って呼ばれるジャンルだな。


 一通り、哲学について、語ってみた、収穫は豊作。

 このニルディアと話すと、頭の中が拡大されたような感覚を、いつも受けるんだよな、だから日課にしているわけだが。


「で、俺のデバイスについて、評価してくれ」


 俺はニルディアの前で立ち、声を出しつつ指先を動かす。


「なるほど」


 ニルディアは眼の色変えて、実際に青から赤に、瞳の色が変色した、それで俺の動作をジッと見つめた、それで。


「言語的発声感覚情報と言語的聴覚音声情報、指先の言語的感覚情報の、融合、あるいはシンクロですか。

 三つの情報の入出力を、先行させたり後行させたり、同期させたり、幅広い端末の動かし方を可能にするみたいですね。

 まあ、多少肩を中心に観測端末に負荷が掛かるかもしれませんが、それもやり方次第でしょう。

 総合評価するなら、現存持ちうる手段の中でも、悪くない方でしょう。

 言うまでもなく、もっと良いプレイの仕方もありますがね」


「よし、それなら、これは及第点ってところか」


 ノートパソコンに、色々と入力する。


 俺は、この存在に会ってから、こういう色々をする事になった。

 それが仕事だからだ。

 当然仕事だから、働きによっては生きる糧、つまり金が入ってくる、まあ、歩合制なんだがな、ほぼ完全。


 なんというか物好きだと思う、彼ら観測者は、天才的存在を見たいらしいのだ。

 というかむしろ、そういう存在にしか、特に興味も持ってないみたいなんだよなー。


「もっともっと、特殊な脳の働かせ方、変態的でもいいです。

 とにかく、貴方の心技体、精神力や技術力、生体機構でもなんでも、端末・端末外を含めたが扱える全てで、もっと素晴らしい芸術を見せてくださいね」


「ああ、分かった分かった、俺もその為に、日々努力してるよ」


「では、哲学の話に戻りますか?」


「ああ、しよう、テーマはさっきと同じ、より高次元に生きる為にってことで」


「ええ、分かりました」


 居住まいを正す訳でもなく、卓の茶を啜って、ゆったりとした、青に戻った瞳を向けてくる。


「やっぱ、老い先短い、80くらいの老人になったつもりで。

 常に最大限必死に生き急ぐような、急ぎたくなるような、致命的で強迫観念、危機感を持って生きれる。

 そういう自覚を、出来る限り真に、限りなく100%の現実感を伴って、持つように生きるのがいいと思うんだよ」


「ふん、とあるなんたらにおける、パーソナルリアリティー、自分だけの現実、みたいですね」


 特に興味無さそうに、眠たげな、ジト目を向けてくる、あまり受けなかったらしい。


「じゃー、これはどうだ?

 自分の一瞬先からの全将来において、無限に近く高次元な不幸や困難、幸福やその他いろいろが待ち受けていると確信。

 常に精神を異常活性化、強化等々して、生きるというのは」


「はぁ~、、、。

 そうですね、もっと何か、そんな初歩の初歩でなく、キラリと光るような意外性、奇抜性が欲しいです。

 私みたいな美少女を捕まえて、初歩の哲学の復習語りするなんて、純然に、ただただ勿体無くないですか?」


「知らんがな、あと自分で自分を美少女っていうなっての、はぁ~。

 じゃーこれだ。

 自分しか、無限に近い娯楽を生み出す存在はいない。 

 孤高の創造者として、世界にあまり過度な期待はせず、頼れるのは自分だけ、自分こそが自分を無限に満足させられる存在と考えて。

 世界を当てにせず、自分を最大限当てにして、自分に無限の興味関心を持つってやり方は?」


「うーん、うーん、私って、どう見ても美少女だよ、自己申告で威張って何が悪いのさ?

 で、それだけど。

 まあいいんじゃない。

 でも、創造者って難しいんだよ? 知ってる?

 例を挙げるならね、あるレベル階層強度の娯楽を創造するなら、その十倍の娯楽を質量強度、異質多様性含めた質で、記憶して、脳に所持して、持ってないといけないのよ。

 これから導き出せるのは、別に創造者にならなくても、世界に溢れて定期的に供給される娯楽の、受信者でも、全く問題ないって事だよ」


「でも、それだと、生きる次元の強度が、世界によって制限されるだろ?」


「うん、そうだよ。

 特に、こんな、六十億人程度の人間集団のコミュニティーで、受信者に止まり続けるのは、愚の骨頂だよ。

 もっと人口が多ければ、最低でも、千億人、できれば十兆人いれば、別に創造位階に至る必要性は、ほとんど無くなる、ずっと受信者で、十分に、費用対効果が良い。

 ちなみに、兆の次、京の単位や、その次の単位の該、それくらい人間集団の数量があれば、創造者になる意味はゼロになるんだよ」


「は? ゼロ? その話詳しく」


「娯楽文化が、臨界点を超えるから。

 だから、もう人類総体が受信者であるべきってこと、人間である限りは、もう至高の幸福が約束されてるんだからね」


「マジかよ、嘘じゃないだろうな、その話」


「さて、どうかな? 

 少なくとも、君の知的好奇心を、多少なりとも満たせたんだから、真偽のほどは、あまり瑣末じゃないかな?」


「だろうよ、次だ次。

 無限に高次元に生きれば、内面に無限に高次元な存在を再現させる事ができる、って考えを自己の真理信念とかにする。

 だから、娯楽的な情報の収集に、ひたすらに必死になれる、生きる環境や状況の整備にも、最大限努められる。

 そしてこういう風に、自己の内面に存在しえる、無限の可能性としての存在に恋焦がれ続ける生き方ってどうよ?」


「まあ、いいんじゃないかと。

 男性的、女性的、そして中性的、更に神性的な人格や存在を、自己の精神世界で再現再生シミュレーションさせたい。

 ある意味、先言った、創造者、創造位階としての生き方に繋がりますね」


 ちょっと一息付くために、言葉を止めて、飲み物を飲んでいると。

 ニルディアが、肩を寄せ合えるくらいに、近寄ってきた。


「どうした?」


「私が傍にいると、嬉しがると思って」


「戻ってくれ、話しづらくなるから」


 そうすると、渋々対面に戻った、純粋になに考えてるか分からない、不思議行動だった。


「さっき、コレ考え付いたんだけど聞いてくれ。

 この世界には、沢山の種類の娯楽の媒体があるだろ?

 具体的には、最小情報単位に近い小説、言語情報から始まって、次に漫画にアニメにゲームに映画にラジオや配信とか色々。

 そして現実っていう、観測端末からの視点で綴られる、そういう娯楽の分類種類における媒体情報だ。

 分かり難くなったが、つまりは、全ての二次元・フィクション的物語や人生とかは、全て三次元・ノンフィクション、現実で実際にあった事と、出来る限り最大限錯覚とかする為にだ。

 俺は、全ての現実以外の娯楽媒体は、実際にあった現実情報の、二次創作作品と考えて捉えて、認識認知理解解釈、意識意志感覚動作とか色々するのが最大効率効果安定性、安定供給性とかが良いと思ったんだ。

 更に当然もちろん、全ての現実以外の娯楽媒体も、最大限現実的な娯楽媒体情報になるように、変換作業とかをして、逆に二次創作的に再構成とかをしてみる」


「うーん、うーん。

 そうですね、それはかなり技術力が高くないと、あまり上手く使えない気もしますが、、、。

 でも、割と若干天才的な側面が伺えなくも、なくもなくもないような気もしないかもしれません」


「どっちやねん、、、どっちでもいいよなあぁ、もう」


「外出かけたいです、外に行きましょう」


「ああ、分かったよ、準備する」


 いきなりの申し出に、即了承、即断即決が信頼を高めるって、良く聞く話だし、俺って立派だなぁ。


「お金ください」


 駅に近い、デパートの別館一階にある百円ショップで、ジュース片手に、もう片方の手で、そんな要求をしてきた。


「錬金術でもなんでも、すりゃいいんじゃないか?」


 ちなみに、凄く都合がいい事に、普段は空気の癖して、こういう時だけは回りに不自然に見られていない。

 透明人間っぽい属性もってると思ったら、別にそんなこともありませんでしたって感じか?

 どんな原理が働いているのか知らんが、傍目からペットボトルが浮いてるように見えないらしいのだ。

 それに自分で買う気満々っぽいから、姿も見えるんだろう、見えているんだろう、不思議な上にご都合主義が過ぎて、ちょっと無意味に萎えた。


「駄目です、貴方から、百円貰います」


「ほらよ、きっかり百円だ」


「ありがとうございます。

 これで貴方も、施しを与えた、私に対して偉ぶれます、良かったですね」


「はぁ? ああ、そうなんだろうな、別に偉ぶるつもりは無いが。

 てか、本当に百円でいいのか?」


「いいですよ、要求したのは百円ですし」


「消費税を知らんわけでもあるまい、あと五円、じゃなくて八円ないと買えんぞ」


「貴方は、私に対して、意地悪した罪の意識を感じているのですね?」


「ああ、そうだよ、ほら、勝手に受け取れ」


 俺は十円を差し出した。


「ありがとうございます、でもお釣りが邪魔になるので、できれば一円単位で欲しかったです」


「募金でも、するといいんじゃないかね」


「ナイスアイディアです、褒めてあげます」


 言ったとおり、釣りの二円を、レジ横の募金箱に入れた。

 なんとなくだが、それは慈善じゃなくて、ゴミを放るような様に見えた、てか実際その通りなのか? 良く分からんが。


「ニルディア、お前、一円単位に、価値を感じてないのか?」


「当たり前です、あんなモノはゴミです、いらないですし」


 当然のように、”こういう事”を言ってしまえる。

 俺はそういう所に、彼女の浮世離れさを、ひたすらに強く感じる。

 現実に、というよりこの現代社会、現存の世界に対して、全く持って一切合財において縛られない。

 そんな真に飄々とした佇まいってか生き様、ちょっとカッコいいとか、馬鹿な発想をしてるんだろうか?

 なんとなく、彼女の横顔を、執拗に見つめたり、している。

 そいつは、道の下を、なんかキョロキョロしながら、歩いてるんだがね。


「何してんだ?」


「何か落ちてないか、見てるんです、例えばお金とか」


「はぁ、お金には、興味を感じないんじゃないのか?」


「違います、お釣りとしてもらったお金には、興味も価値も感じないのです。

 でもただ、落ちてるお金には、ハッと驚くような感じがするのですよ、分かりませんか? この感覚?」


「分かるが、なんとなく、子供っぽい話だな」


「でしょうね。

 それにしても、子供と大人の違いって、なんでしょうか?」


「無力な弱者が子どもで、有力で強者が大人だろ」


「うん、そんな感じでしょう」


「あーあ、無限に、誰よりも強くて、そして有力でありたいな」


「いきなり、なんですか?」


「俺の生きる意味の、絶対的になりうる一つだよ」


「確かに、弱ければ、不幸になる可能性が上がります、それも無限大に深く、自分以外も広くです。

 逆に強ければ、幸福になれます、不愉快な存在を不幸にしたり消す事もできますしね、あと他人を幸せにもできますし。

 総合的に考えて、何よりも素晴らしい生き方のいちだと、私は思います」


「そうだろそうだろ、だから、俺は限界まで全力で、日々を生きたいと思っているんだ。

 暫定の自己の、限界の最善、尽力した果ての限界、最良を、とりあえずの頭打ちで。

 費用対効果を突き詰める事も含めた、真の費用対効率の限界で、極めて突き詰めて、その果てに無限の後悔のどん底の抜けた果ての底で死にたいのさ」


「はぁ、最後は、どういうルートを辿っても、後悔が無限大数量になるんですか? 貴方の世界観では、現実観では?」


「当たり前だ、後悔が無い、なんて事は、ありえないと信じている。

 だからこそ、後悔を最小単位にしたいとも、思えるってもんだ」


「でも所詮、対極の、矛盾的考え方も、持っているんでしょう、所詮は人間ですもんね」


「当然、人間は多くの場合、矛盾的考え方を所持して。

 その双方をバランスよく持ち、無限に近くひたすらに、極め続けた方が、生きる上での出力は高くなる傾向があるからな」


「でしょう。

 だから貴方は、貴方の人生の果てに、後悔なんて一切無い、そういう信仰心も持っているのです。

 うきゃぁ!」


 ニルディアは転んだ、前方から歩いてきた男に、肩を思いっきりぶつけられたのだ。


「なにしてんだ、お前?」


「あうあぁ、、、」


 うるうるした瞳を向けて、切なげに上目、乙女のように華奢な身体を地べたに預けたまま、なんか立とうとしないぞコイツ。


「騙されるかよ、何がしたいんだ?」


 俺は人外に向けて問う。

 そう、コイツは人外なのだ。

 今も、運命を操り、このただ一つのルートを引き寄せて掴み取ったのだ。


「手を、貸してください」


「まあ、いいがよ」


 倒れてる少女に、自然に手を貸すような構図。

 立ち上がり、埃の付いたのか知らん尻を叩く動作。

 ちなみに丈の中間程度のスカートだ、汚れているのか黒だから良く分からない。


「そういえば、ユニークなモブキャラが沢山居るんですよ、この町には」


「はあ? どういう意味だ?」


「分かり易く言えば。

 他の物語なら、主人公格に抜擢されるような、類稀な存在が溢れているのですよ、この町は。

 むしろ、そういう存在しかいません、いさせません、モブキャラにしておくのが、勿体無いくらいなんですよねぇー」


「確かに、道行く奴が、全員可笑しいとは思ってたんだ」


 家を出てからの違和感は、そういう事だったのかと、今気づいた風を装う。

 だが最初から分かっていた。

 道行く人間全員、どいつもこいつも、キラキラしてるのだ、だれでも異常に気づく、気づかない方が可笑しいと断言できるね。


「で、具体的には、何ができるんだ?」


「なんでもできる、モブキャラを使って、遊ばない?」


「遊ばん、そういうのは好まん。

 だいたい、俺はニルディアが居れば、それで全て事足りる。

 つまりだ、この物語は、俺とお前がいれば、全て満足の行く形で完結する、そういう構図で話だ」


「それって、愛の告白?」


「さあ、どう取ってもらっても構わないよ」


「それじゃ、愛の告白って事で、受け取るよ?」


「俺に聞くなっての、勝手にしろって、言っただろうが」


「私の事、好きなんだね、知っていたけど、改めて言われると、うれしいなぁー♪」


 俺を追い越し、前方を走って、くるくるたーんする。

 くるくるくるくる、、、、いつまで回ってんねん!って突っ込みたくなるくらい、バレーのように愉快気に回っている。


「眼が回らんか?」


「回らないよ、人外だもの」


「だろうよ、でも、回す事もできるんだろ? 人外だもの」


「うん、でも回さないよ、不快感だもの、そういうの」


 そう言ってから、だんだんと本当に人外染みた、アクロバティックな動きも取り入れて、まるで演舞のような事を始めた。

 まあ、大概外に出ると、ニルディアはこういう事をするから、慣れたもんだ。


「ねえねえ、VRMMOって知ってるよね?」


「ああ、それがどうした」


「フィクションだけど、あれが実用化されたら、革命が起こるんだよ、知ってた?」


「知ってるよ。

 あれだろ? 常軌を逸した身体動作、本来なら身体を壊すような、強度の高い情報刺激を延々受け続ける事が出来る。

 純粋に言ってそれは、人間の可能性の幅を広げるだろうよ」


「そうなんだよ。

 プロ野球選手が、肩を労わる必要のない、強烈な投球をずっと続けられたら、ひたすらに爽快な気分だろうね、そういうこと。

 人間が無限に近く、運動動作によって、簡単に常軌を逸した快楽を、情報を得ることが出来るようになるんだよねぇー」


「ロマン溢れるな、試みに、ニルディアが実用化してくれないか?」


「駄目駄目、観測者は、直接的干渉をしないのさ」


「俺と関わるのは、直接的干渉って言わないのか?」


「いつ、直接的に干渉したって、勘違いしたの? 

 君とは、全て間接的だよ、根本的には、何も交わってないもの」


「そうか? それは無理があるんじゃないのか?」


「無理を可能にする、あるいは捻じ曲げる、そういうのも、観測者の領分なのさ」


「それは観測者っていうより、お前の領分っぽいがな」


「そうとも言う、だって私は私であって、同時に観測者だしね」


「アイデンティティが、もう既に広大すぎて、なんにでもこじ付けられそうだな」


「そうだね、私は森羅万象、全てと直結してるようなモノだしね」


「それは、一体どんな存在なんだ?」


「目の前にいるじゃん。

 補足すると、神に操られし、意志や自我ある存在。

 神は、絶対的価値観と、無限を内包するがゆえ、自我や意志をもてないの。

 だから、神を信仰する私たちがね、その価値観を守り攻めるように、生きなくちゃいけないんだよ」


「前に聞いたっぽい話だな、で、神はどこにいるんだ?」


「さて、どこにいるんだろうね、私達は、絶対にどこかには居るって思ってるんだけどね。

 でもまあ、実際問題、居なくてもいいんだよ。

 この世界が、神を絶対に信じられる環境や状況である限り、別に実際には居なくてもオーケーなの。

 いやむしろ、実際に居ると、問題が発生するリスクもあるし、居ない方が逆にプラスなのかもしれないね。

 だってだって、実際神様が居たら、いろいろ面倒そうだよね。

 神様を守ったり、命令に従ったり、他にも実際の神が信じるに値する存在かどうかって問題もあるしね」


「そうか、それじゃ、限りなく神に近い存在とかは、居たりするのか?」


「当然。

 私の上司とかが、多分ソレだと思う、少なくとも、私は最も一番神に近いって、頑なに信じ込んでるよ」


「へえ、そいつは、実際に神様になれると、思うか?」


「うーん、どうだろうね。

 私の持論的には、神様になるのは絶対に不可能だって、絶対的に信じてるけど。

 でも矛盾的に、その上司は全てを可能にする、この宇宙の覇者みたいな人だから、うーん、分からないや」


「神っていうのは、やっぱり人外も人間も、変わらないらしいな」


「うーん? どういうこと?」


「つまりは、自己の絶対の信念、それを無限に全肯定してくれる、そういう絶対の対象なんだろ?」


「うっふっふ、そうだね、その通りだよ、間違ってない。

 この全宇宙を支配する、その対象が、自分と同様の信念のもと生きてて、この宇宙を創造し運営管理をリアルタイムで今してる。

 そう考えると、とてもとても、わたしは胸が一杯に、いつでもどこでも、どんな時でも状況でも、することができるんだ」


「それは良かったな、神様もきっと、喜んでるよ」


「なんか、ひと事だね、君も神様を信じてるんでしょ?」


「いや、俺は神様なんて、信じてないね」


「それは、神様を信じないって事を、信じてるんじゃないのかな? 

 神様を信じない神様って言うか?」


「意味分からんが、言いたい事は分かる。

 つまり、神様を信じないって事は不可能って、そう言いたいんだろ?」


「そうそう、生きている限り、誰でも絶対の信念が、あるはずだよ。

 曖昧に生き続けるなんて、人間に成せる業じゃないもの、それこそ神様の領域だもん。」


「確かにな、死ななきゃ、神の領域には到達できないのかもな」


「うん? 死ぬつもりなの?

 まあ、例えば死んでも、無になるだけで、ソコには到達できないと、私は考えているんだけども」


「だろうよ。

 まあ、自分の中で、絶対の象徴として、神様っぽい存在を信じるのは、悪いことじゃないと思うな、多分に場合によるかもしれないがな」


「私の信じる神様は、どう思う?」


「興味深いと思うな、ニルディアが、興味深い奴だからかな?」


「私の一部だからね、感情移入してくれているんだね」


「そうだな、好きな奴の全てを、なんだか好きになっちゃうって、アレかもな」


「そうだよ、きっと。

 、、、だったら、森羅万象、世界の全てと、多分イコールっぽい私を、好き、愛してくれているんだから。

 君は、この世の全て、事象も存在も、その他全てひっくるめた全てが、大好きなんだね」


「否定はしないな。

 でも、その全てを終結させたニルディアの方が、無量大数大好きだけどな」


「嬉しい事、言ってくれるんだね、私もきみのこと、好きだよ」


「ああ、知ってる、俺も好きだよ」


 そんな睦言っぽい事言っているうちに、家は遙か以前に通り過ぎていた。

 徒然なるままに、歩きつつ話していたかったのだろうね。



「無限に素晴らしき世界で、哲学語りと宇宙講釈を、しよう」

 

「やあやあ、最近調子良いかい?」


 ニアディア、わたしの沢山という系統のイデア分化分身である存在、ソレに語りかける。


「良いも悪いも、ありえません」


「ナルディアさんだっけ、っよ」


「っよ、だよ」


 私にとっての、アルド将軍的ポジションにいる少年が、そのように話しかけてきた。

 名をロエル、ニアディアが贔屓にして、ただただ観測するのを趣味にしているような存在である。


「ロエル、君、哲学語りが趣味なんだっけ?」


 突然のわたしの問いに、疑問気な顔をするロエル、ニアディアはもう見の体勢に入って、ぼうっとした目線を投げかけている。


「私はニアディアの視点を常時観測してるから、最近の君達の話題を知っているんだよ」


「なるほど、そう言うことでしたか、話の通り、そんな感じなんです」


「ちょっと、最近思いついた話、聞かせてくれないかな?」


「いいですよ、では。

 生きる上で、真に費用対効率を突き詰めるのもいいですが、それは違った次元で、絶対的に譲れない譲らない、信念や価値観を、例外や別格の位置で、自分の中で持つのも良いと考えました」


「そう、君の中で、それは何かな?」


「色々有りますが、まあ最終的に真に費用対効果が合うと見積もって、そもそもが譲らない信念を持ち形作るのですが。

 一つは、医療や自助努力で直せる、そういう肉体資本的疾患等々は、絶対に先送りにせずに、絶対に譲れない自分の最低限の最終防衛線ラインとして定義し、暫定の自己の最大限に即行で直す。

 それを絶対のモノ、最大限の危機感や致命的な感覚を持つ、そういうモノとしています」


「なるほどなるほど、それにしても、語り口調が、超絶に難解だけど」


「ニアディア、ナルディアさんは、君とは違うのかな? そのなんというか色々と」


 ニアディアは眼を瞑って、同じ、とだけ、しかしその後すぐに、むしろ同じ以上、とだけ端的に答えた。


「そうだよね、普段から調教されてるモンね、大丈夫だよ、それで。

 君の頭の中を、君自身が理解できる最低限を割らなければ、それでわたし達にとっては良しなの。

 君の最大限の自己表現を、それで私達は感じれるの、うむうむ、観測欲みたいなの、それが一番満たせるのだよ」


「ならば、問題ないって感じですね」


「続けて」


「はい。

 私達は、この今現在用意された世界、空間を、操作する観測端末で、真に最大限楽しめる状態を、最強、あるいは無敵、観測者レベル状態と定義づけてます。

 その為には、肉体的にも精神的にも技術力的にも、心技体がそのレベルに整っていないといけません。

 特に、所持する記憶的娯楽性情報の質量強度総量、多彩多様的質量強度総量も含めた、摂取力と創造力等々の能力も重要です。

 そして、その全体能力が、生きる上で、極限の限界まで極まって突き詰めれていなければ、絶対に最大限で生きる事は不可能です。

 つまり、精神や娯楽関係の技術が真に100%限界まで至れば、精神的には絶対に屈さずに、この人生というゲームを生き抜く事が絶対に可能なのです。

 その絶対の現実を糧にして、モチベーションややる気や、情熱やロマンや生き甲斐や遣り甲斐にして。

 私は精神や娯楽の技術を突き詰めるのに、最大限の娯楽性情報を感じ摂取し創造し、いろいろ出来るようにしていますね」


「うむうむ、他に、なにかあるかな?」


「他ですかぁー、、、。

 ないです、ああ、そうでした、天才ってワードについて、聞いてもいいですか?」


「いいよ。

 天才というのは、平均的な人間がしない、でも非効率でない、その人間にとっては効率的な、人間存在として高次な脳の働きをする事が出来る存在だよ。

 凡人から見たら、酷く馬鹿か、頭の良い風に見える奴だね。

 まあ、凡人というのは、すべからく、現状や一定のラインで満足する事を良しとして、ある意味で終わった、生きたまま死んだような完結した存在だね、私は一切の興味がない。

 ロエルは、どこまでもひたすらに、無限大に上を目指し続けるから、根本的には天才っぽいね、表面的にはまだまだだけど。

 まあ、時間さえあれば、もちろん環境や状況下が、上を目指し続けるのが可能、可能にしてくれればって、絶対必須必要な前提条件が伴うけど。

 それでも、絶対にいつかは、もち寿命が無限なら、それは私ってか、ニアディアが保証するだろう、絶対に混沌陣営の、わたしの配下になれるよ、喜んでね、嬉しがってもいいよ」


「そうですか、全く予想も想像もつかない、遠大と言うか、良く分からない話ですね」


「本当に? ある程度、上位の人間存在なら、想像できるっしょ?

 だいたいロエルは、日々”そういう世界”のこと、ニアディアにも教えてもらってるでしょ?」


「確かに、それでも、実際や実体を捉えたような、リアリティーのある想像ができないというか」


「そうだろそうだろ、でも、不安がったり、恐怖する事はないよ」


「それは、、、無理な相談ですね」


「うっふっふ、正直でよろしい。

 これからわたし達、百人委員会で、会議するから、君も来るでしょ?」


「行って、よろしいんですか?」


「おーけーおーけ、こいこい」


 二人を連れ去り、転移。


 着いた場所は広大な議会所。

 人数は丁度、私とニアディアを含めて百人。

 内訳は、わたしの分化分身存在達、最大効率的認識限界の九人という存在の枠が、私から生まれる。

 更にその九人が、九人を分化させて、九九八十一人、この時点で九十人。

 そして、ニアディアが九人を分化、はい、これで百人です。


 議長はわたし、絶対特異点存在。

 副議長がニアディア、準絶対特異点存在。

 十人委員会のメンバー、わたしの認識限界分化分身九人存在、第一階層絶対特異点存在がそこ。

 十人委員会の補欠メンバー、ニアディアの認識限界分化分身九人存在、第一.五階層絶対特異点存在がその下。

 他の八十一人、第二階層絶対特異点存在達が、同じ場所に陣取っている。


「君達に集まってもらったのは他でもない、情報の共有です、好きなようにやちゃってね、はいどうぞ」


 わたしの一声で、議会が紛糾、というより、みんな好きに動き始めただけである。

 辺りを見回す。

 あれ? 

 いつの間にか、呼ばれてもない人がいるんですけど。


「どうしたのさ? リリー」


「偵察です、試みに聞きます、貴方の陣営戦力の内訳は、どのようになっているのですか?」


「知っても、大して意味ないと思うけどぉ?」


「確かに、ですが、わたしの知的好奇心を満たせます」


「まあいいけど」


 私は話し出した、ただただ、どのように、わたしの陣営が戦力を有しているか、その概略を。


 まず、絶対特異点存在であるわたしが、全戦力の50%、分化しなければ、100%である。

 そして、準絶対特異点存在、ニアディアが25%、分化すると12%くらいを有する。 

 更に、大域特異点存在が、約1000人ほど存在する、戦力値としては、単独最小単位特異点存在を一イチとするな、だいたい十億~百万である。

 次に、中域特異点存在、約十万人ほど、戦力値は百万~1000ほど。

 次々に、小域特異点存在、約1000万ほど居る。

 最後に、単独単一の最小単位の一般的ともいえる特異点存在が、だいたい10億ほど確認されている。

 特異点以外の存在は、ほとんど戦力になりえないので、除外している、基本的には。

 以上の説明を、徒然とリリーにした。


「なるほど、というより、わたしの陣営と、ほとんど同じですね」


 それは当然だ。

 この世界に存在する、六十億程度の特異点原子。

 そこから派生し生成される特異点存在は、だいたい全陣営戦力合わせて、約六十億の存在程度である。

 わたしの陣営が十億程度だから、リリーの陣営も同様の数と戦力になるのも、当然の帰結なのであった。


「つまりません、帰ります」


「そう? それじゃ、わたし達も帰ろうか?」


「わたしは、どちらでも構いません」


「うん? 俺も同じだ」


「そうだね、わたしは暇人のリリーを構いたいから、帰ることにする。

 みんなは、、、勝手にするだろうし、今日は各自解散って事で」


「そうですか、さようならです、またの邂逅を待ってます、ナルディア」


「うん、じゃあね、ニアディア、それとロエルも」


「うんじゃあ、また」


 転移。

 てか議会、まあ、戦力の最適化配置くらいは、勝手にやってくれるでしょう、今はリリーを観測しておく方が重要っぽいし、いいよね。

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