コメディカルワールドCS‐とは??その周辺の大まかな昔話しばなし
「ねえ、貴方の書いてる小説の、このタイトルってなんなの?」
目の前で俺の小説を読む人が言う。
「ああ、なんだ、タイトルって、そのまんまだろ?」
「はあ? 貴方は馬鹿ですか? こんなの意味不明以外の何ものでもないわよ? 一から十まで説明なさい、読者置いてきぼりにするつもりなの?」
うむ、そんなつもりはあまりないのだが、読者にも出来る限りは楽しんでいただいて、それを喜びとしたい所なのだ、個人的にはな。
「まあ、私がネットでちょちょいと調べた結果、コメディカルって言うのは”医師や歯科医師の指示の下に業務を行う医療従事者を指す”って意味らしいけど、どうなの?」
「へえ、そんな元ネタが合ったんだ、ならそれにちょっと関連付けてみても良いかもしれないなぁ~」
目の前の彼女はムッとした顔をする。
「はぁ? もしかしてコメディーから、なんとなく語感を捻って、ただそれだけの感覚で小説のタイトルにした訳じゃないでしょうね?」
「おいおい、そこまで見損なうなよ、ちゃんと考えて付けたんだよ」
「それじゃ、さっさと教えなさいよ、聞いてあげるわ」
何か捻った面白みのある事を言いたいのだが、どうも思いつかなさそうなので、正直にただ普通に教える事にする。
「コメディーとカルチャーを掛けて、コメディカル、つまり娯楽文化って意味、そしてワールドを付け足して、娯楽文化世界、そういう意味があるんだよ、コメディカルチャーって何となく語感が悪いし、一言にコメディカルにまとめて、一つの造語単語にしたってわけ」
「なんだ、そういう意味だったの、予想の内の一つじゃないの、面白くない。それにコメディカルって単語がある事も知らなくて、それで今気づいたって感じなんでしょう?」
「まあ、そんな感じで、そんなわけだけど?」
「ふん、そう、まあいいわ、それで、コメディカルって用語?、あるんだけど? どう関連付けたり、こじつけたり、絡ませたりするわけ? まさか、それとは一切関係ありませんってスタンスなの?」
なにか挑戦的で酷く人を舐め腐った目を向けてくる、おお、おお、やってやるよぉこのぉ!
「あるに決まってるだろ! 人を甘く見てるとどうなるかぁ!お前に思い知らせてやるぜぇ!」
「はい、では、どうぞ」
パンパン手を叩いて、更に「カッコいいところ見てみたいぃ~♪」とか馬鹿にした口調で、食い気味にこちらを煽ってくる。
「わーたわぁーた、言うよ。そうだな、医療関係の用語なんだろ? だったら娯楽文化でいろいろと回復できる、そんな物語ですって意味が実は裏に内包されてるってどうよ?」
彼女はジト目でこちらを見る、さて、どんな激辛口の批評が飛び出すのか、俺が戦々恐々としていると。
「まあいいんじゃないの? それで?」
「はあ? 馬鹿がよぉ、お前から毒舌とったら何が残るんだよ、つかえねぇー女だな」
「はぁ、貴方ぶっ飛ばされたいみたいね」
「おら、掛かって来いよ、今すぐのしてヤンよ!」
俺がファイティングポーズを取る、彼女は呆れ返って、天井を仰ぎ見る。
「ふぅーうぅ、そう、なに? なんなの? その態度は? 私と喧嘩がしたいってわけ? そういう願望っていうか、変な被虐趣味の表れなの?」
「知るかよ、おらぁ!掛かってこないなら、こっちからやっちまうぞぉ!」
「もうやめて、面倒臭いから」
「はい、やめます、ごめんなさい」
俺がしょぼくれる、普段の彼女なら、普通に乗って来て、なんか面白い事になっているのに。
ほとんどノリで、楽しくなったからやった、後悔も反省も一切していないが、成果が得られないのがとても残念である。
「それで? コメディカルについては把握したわ、で、問題なのがその後、これ、私の小説から盗用よね、貴方、逮捕させていただくわ」
ガチャンと手錠を嵌められる、彼女の好きなブラックジョークグッズだろう、こういうのを沢山集める趣味というか悪癖があるのは知っているのだ。
「なんだよ、アレっていうかコレは、別にお前の専売特許ってわけじゃないだろ? 偶々似ただけだし」
「盗作する人間の常套句ね、それ、まあ素直に参考にさせていただいた、そういう一言で、期間限定出血大サービスで許してあげるけど?」
さて、どうするか、ここで素直に白状したところで、どうせ何か言われる事は目に見えている、言質をわざわざ与えるだけに等しく感じる。
「まあまあ、そこら辺は気にすんなよ」
「はぁ、まあ別にいいけどね」
「じゃぁー手錠を外そうな」
「いや、これはこのままにするの。それで? この小説では具体的に何を描くっていうか、するの? 物語の内容を教えなさい、あらすじだけじゃあんまり把握できないのよ」
はぁ? 俺もまだ全てを決めてない、これから全てを作りながら全てを決めるってのに、うむ、どうやって説明しようか、、、。
「まあ、そうだな、今こうやってお前としてる事とか、そういう日常と、それと対極の非日常、何でもアリって感じだな。
そういう自由過ぎて、なんの制約もない、そんな世界を俺は最も欲しているんだ。
でも、そういう物語が無いからさ、この世界に、だから俺が自分で、自分の世界を無限に補完する為に作る、そういう物語で内容さ」
彼女は目を丸くしたように、何か驚いている顔をする、なんだ? そんなに驚かせるような事言っただろうか?
「ようこそ、って始めに言ってあげましょうか」
なんだ? 意味の掴みかねる言葉を突然放つ彼女。
「なんだ? 意味分からないんだが? まあ意味分からないのはお前のいつもの状態ではあるんだけどな」
そんな事を不躾に言うと、ポカンと頭を殴られる、まあこういうショッキングな出来事もいつものこと、それにあんま痛くはないし。
「ばっか! 。貴方のやろうとしている事、私達のネットワークっていうか、小さなコミュニティーかもしれないけど、そこで言う所の、なんて言えば良いのか、とにかく! 無限に全てを許容する、そんな無限に自由な統合的世界を創造しようとする試み! それは私が今現在作っている世界の、根本理念や思想なのよ! つまり! 貴方は今日から! その世界の一端でもを創造する、有用な創作者! そういう無限拡大的世界の一部を我々とともに補完する有志になったのよぉ!!ってことを感動的に言いたかったのにぃ!!!なんかあんまり格好が付かなかったわぁ!このぉ!!!」
地団駄踏んで、それでも収まりが付かないのか、俺に飛び掛ってきたぁ、ぐがわぁ!!
彼女とともに地べたに転がりまわり、いろいろ揉みくちゃになりながらも、顔面の直ぐ傍で会話を続ける、現在酷い体勢である。
「つまりよ! 私達とともに! 新たなる世界を一緒に一生作り続ける! そんな同士になったのよぉ!あなたはぁ!どう??! 嬉しいでしょうぉ!!!」
何か凄く感動しているような気とオーラ、雰囲気をバンバン放ちながらも、俺にはあまり実感というか、現在をもってして意味が分からないぞぉ!
「良く分からん!!よくわからんよくわからぁああああん!!!お前はなに言ってるんだぁ!!!」
彼女はまたも目を丸くする、今度は困惑っぽいそれだが。
「こほん、うんううん、けほんごほん! さて、貴方に言いたい事は他でもない、ただ今を持って、貴方は某神話体系の物語り群のような、ある種の体系的世界を描く創作者、創造者として選ばれた、というよりも認定し我々に認識されたの。これからは私達とともに、自らの世界を養いながら、お互いに切磋琢磨し良い所は補完しあいながら、よりよい人生を、そして世界の拡大等々を送れるように頑張りましょう、まる」
彼女は一仕事終えたように一息つく、てか、なんだぁ!!!その一方的な宣言は!
「おいおい、言いたい事の半分くらいしかよく分からない、もっと詳しく内情を具体的に話してくれ!」
「もう、仕方ない人、しょうがない、これを見なさい」
彼女は横倒れで、いろいろな所が身体パーツ的に絡まりあったそれを外す、あれ? なんというか、柔らかい幸せな感覚がなくなって、一気に凄く寂しくなった、彼女の体は奥深いってのが、は? 分かった? この件はもういい。
それで立ち上がり、パソコンを操作、一つのサイトを開く。
彼女の個人サイトらしきそれ、指差しみろと示す。
「これ、この私が今まで最大限の情報収集を行い、私達が創作している”そういう世界”を想像し実際に創造して様々な娯楽の媒体として、一般に公表している人のリストよ、これに貴方も加われるってわけ、光栄でしょう?」
彼女示すそのリストには、なにか知ってる名前の奴が複数、てかほとんど全員の、俺の友達知人等々の名前。
てか、肉親関係も全員、揃ってんじゃねーか、身内の名簿みたいになってるんだが、お前の情報網狭くねぇ? と言ってやりたい気分にさせられた。
「まあなんだよ、ちょっとは喜んでいいのか? 知らんが、そのリストだけはもっと確認してみたいかもな」
「ほらやっぱり、自分の考える世界と、何か似たような世界を創造している人に興味があるんじゃない、やっぱり凄く光栄に思ってるんでしょう?」
「はあ、ああ光栄だよ、そもそも俺はお前の小説のファンなんだよ、いちな、だったらそういう世界に興味あるに決まってるだろ?」
彼女はちょっと露骨に照れたようにあざとい様を晒す、これが本心か、それとも演技か、狼少女の彼女なので、あまり素直に可愛いと思えないのが残念と、こういう時に良く思う。
「はい、では、今日より貴方も私達の仲間に決定! 仲間が喜びそうな!そんな小説を書くのよ!」
「なんだよそれ、まあ、仲間? 似たような世界を描く人間を知れば、そういう人たちのイマジネイション、想像力を駆り立たせ豊かにするような、そういうモノを書きたくなるかもしれないがな」
「そう! そういう欲望が欲求が!大事なのよ! 仲間の!他人の世界を拡大させたい! それってつまりは同義で自分の世界を拡大させる事にも繋がるのよぉ! みんなの世界を知って、その上でみんなの世界をより拡大させて豊かで実りある、想像力がより駆り立つ、そんな世界にしてあげたい! そんな思い遣りの心も! 更に好循環的に世界を無限に拡大させていく原動力になるの! 私たちがお互いを認識し!仲間と同士と認定するのには!ちゃんと”そういうわけと理由”があるのよぉ!」
嬉しさ一杯に語る彼女、可愛いな、可愛すぎて持ち帰りたいぜ、ああ、ちゃんと話は聞いてるので大丈夫だぜ、モーマンタイである。
「そうか、うん、なんかここまでちゃんと話しを聞いて、本気で光栄に思えてきたぜ!おおぉ!!そりゃいいなぁ!!最高じゃねーのかぁ!!!」
「はっはっはぁ!!そうでしょうそうでしょう!さあ新たな世界に飛び立つ為のツバサも仲間も揃ったわ!それでは約束の地目指して飛び続けましょうかぁ!」
「意味分からないぜぇ!完全無欠になぁ!だがそれがいいって思える!よっしやってやろうじゃねぇーかぁ!!」
そして俺達は意味もなくその場で飛んだ。
どこまでも飛び続ける為には、何か燃料が必要だ。
それは他人だったり、自分だったり、あるいは生きている世界だったり、様々な所から供給される。
できるなら、その供給源が、無限大と思える程の無尽蔵のリソースと、さらに供給性を誇り、日々無限大の燃料が常時・常備で補充され利用できるのが好ましい、だろう。
だから、人間とは想像の世界を持つのだろう、男には自分の世界があるって奴だ、まあこれは、男に限った話しじゃないとは思うけどな。
その世界は広ければ広いほどよいだろう、だが少年漫画のインフレのように、広すぎる世界は問題も起こりやすいのもまた事実。
供給源が広すぎる所為で、様々な弊害が発生しそうなのだ。
だからこそ、最高級の知性と理性と知力、その他持ちうる限りの全てで、極限までバランスを突き詰めないといけないのだ。
そういう世界、それを持つ上で必要なのは、確固たる黄金律だ、普遍的に他人が求める最上位の世界、それが最も広い世界と言えると思う。
つまり客観視して、最も楽しい世界、そしてなによりそれに加えて主観的に最も楽しい世界、そのバランスの中心点に存在するセカイ、それが俺が、そう俺だ、俺が求め続ける、一生を掛けて想像し創造できる世界なのだ。
このような世界は、基本的に全てが現実世界のように、有機的に繋がり合い、最高のネットワーク性を誇っている。
脳内のそれら、ネットワークの最適性は超重要だ、日々の生活の中ですら、常時維持拡大発展応用等々のサイクルが回り続けるからだ。
独立した世界も重要だが、この独立した世界を全て纏め上げるような、そんな単独の世界が最も効率的に脳内で働かせられる世界なのだと俺は思う。
現実世界を例に出せば分かり易いだろう、全ての人生と物語と世界が、無限大と思えるほど有機的に複雑に混ざり合う世界だ。
俺はこれを、想像の世界でも実現させたいと思う、つまり全ての物語や世界や設定等々が、無限大に有機的に複雑に混ざり合って一つの世界を構成する、そんなイメージだ。
俺は一生を掛けて、まあ費用対投資効果効率の限りでだが、この”自分だけの無限大統合的世界”を養い続けたいと思う。
もちろん独立した物語や人生や世界等々も、それはそれで有用だ、独自の文化を守り通す国家みたいなもので、どんなモノにも長所と短所があるのだ。
人種の坩堝ルツボのような国家だって同じだろう。
俺は、そういう独自の境界線で区切られた、大なり小なり分類された情報が、最大最適に混ざり合い混合する、又は、し続ける、した。
情報を無限に最適に、半自動的に創造し続け想像できる、娯楽情報を最大限高次元に吐き出し続ける、そんな最上位の脳内世界を求めているのだろうな。
現実に存在する、俺が認識する現実世界の一部だ、又は自己の人生ゲームのいちゲーム要素とゲーム脳的に考えてみたりする、その一部を、出来る限り高次元にする、その一方向性として、こういうやり方を頭打ちになるまで行ないたいのだ。
しかし、これに大きな問題が立ちはだかるのだ、俺の場合。
普通、一般の人間にとって、想像の世界よりも現実の世界の方が全体的に面白かったりはしないと思う。
想像の世界の方が夢も理想も、そこに存在するキャラや世界や物語、様々に想像働かせる設定にこと欠かないと思う、全体的に魅力的なのだ現実よりも。
だが俺の場合は、そうでもない、想像の世界よりも現実の世界の方が、なんか全体的にも面白いし魅力的な気がするのだ。
つまり、想像する価値があまり無くなっているように思われる、それだけ俺の世界や今置かれている状況や環境、それら全ての現実が素晴らしいとも言えるのだが。
そんなわけだ、だから俺は現実の延長線上に、想像の世界がある事にすると決めた。
これなら想像の世界は現実の世界に優越し続ける、まあ”そういう設定”の話しなだけで、実際に上回るかは全く別の話だが。
俺の中で想像の世界とは第二世界、セカンドワールドやライフでなく、現実の世界を拡張拡大させるエクストラ、余分や過剰な、そういうイメージになるのだ。
だからとにかく非現実的である事がもっとも尊ばれそうだ。
なぜなら現実的な感じの全ては、全て現実で賄えるからだ、想像の世界は非現実を体現する場所として機能しそうな雲行きだ。
現実ではありえない程高次元な事象や現象、その他いろいろ様々、存在や世界や人生や運命や物語等々、娯楽情報の全てや、それを生み出す為の様々な無限に存在する、しえる全娯楽媒体情報、それらを想像し作り出す、作り出したいのだ。
まあ所詮は、想像の世界ってのは現実世界の一部でしか、誰の脳内でもありえないわけで、それが逆転するなんて事は絶対にありえない。
だから俺も現実を生きる、その一側面として、ただ想像の世界を同じように生きれるだけ生きるのだ。
そう、創作でも創造でもなんでも表現は無限にどうでもいいし、より高次元にして行きたいだけだが、ただ想像し創造した情報を味わうかのように生きる、そんなイメージでやっていきたいのだ。




