ヒルダネットワーク‐観測者の世界から、世界を観測する
この世は、絶対の上位存在に観測される為に存在している。
それが、真実だ。
そして俺は、最大限の不幸を、幸福を、全力で観測することが求められている。
または、そのような事象・現象・存在等々が発生する確率を高めたり。
今より効率的に効果的に、安定的に、将来的に生み出す為のゲーム要素、世界の最適化を命じられている。
「やあ、やあ、君の上司だよ」
「こんにちは、ナルディアさん」
目の前にいるこの人、絶対存在と呼ばれる、最大級の上司である。
まあ、本体などではなく、そも本体があるのか不明だが、無限分離したその一端末といったところなのだが。
「きみ、もっと高次元に生きないと、無限地獄に落とすよ」
「俺は、自分の人生も含めて、世界をただ観測・鑑賞しているだけですよ」
「わかってる、わかってるよ、うんうん、観測者の視点だね。
でも、ゲームのプレイヤーとしての視点で言ってるの。
もっと、アクションプレイパートで、高次元に生きて欲しいって意味だよ」
「了解しました、善処します」
「うん、私の言う事に絶対に従ってくれるなら、絶対に後悔させないよ。
報酬は、無限の幸福、恵まれた環境・状況下だから、期待しておいて」
どこまで本気で真実か、まったく測れない。
まあ、彼女を測るなど、俺では土台不可能な話だ。
言ってる事も具体的でない、俺はただ役目を果たすだけでいいのか、どうか。
彼女は去った、俺は世界の観測を再開する。
この世では、二割の幸福な物語と、八割の不幸な物語を観測することができる。
人生とも呼べるそれらは、客観的にはただの映画、物理現象だ。
だが主観的には、無限に変わりうる可能性を有した、リアルタイムゲームだ。
俺の物語は、無限の幸福なのか、不幸なのか、どうか。
俺は無限大を規定範囲に収める、そういう事象にしか、興味がない。
無限に生きれるなら、それに越したことはないだろう。
加えて、無限に生きる環境が、幸福か不幸か、それも絶対に見逃せない要素だ。
観測者ではない、一知的生命体人間としては、別段太く短くも、細く長くもない、所詮は有限大の生命だ。
俺とは、世界の(無限?有限?)延長であり、世界も、俺の延長線上の最先端でしかない。
とにかく、世界の権化たるナルディアさんが、あんな風に生きている以上は、世界は絶対的に生きるに値するのだろう。
だが、だからといって、より幸福な環境にしない道理はないのだろう、俺がそのように働かされているわけだし、そうなのだろう。
「素晴らしくない、美しくない日々に世界に黄昏て、から、、?」
唐突なナルディアの言葉、まあ、意味不明なのでスルーしてしまうのだが。
「ナルディア、何かいい情報収集の仕方ないか?」
「拓海、ちょっとコレ見てみ、近代最終期の、最高の発明なんだよ?」
「はぁ? 近代って?」
「だから、今が私の歴史観的に、近代最終期なの。
そして、今から見せるのが、最高レベルの情報収集の手段なの」
「はぁ、はいはい見るよ」
パソコンの画面を見ると、某スマイル動画の生配信ページ。
「これが、どうかしたか?」
「これが今世紀最大の発明なのよ。
片手間で、誰でも情報を発信できる。
そしてその媒体は音声と映像情報を使ったモノなんだよ」
「へえ、俺はラノベでも読んでるほうが好きかな」
「まあまあ、まだまだ人材が梃入れしてないだけで、時間経過で素晴らしい媒体になるのよ。
この世には、情報の圧縮凝縮された偏在点が確実に存在するのだよ。
某絶対人権宣言で、人類の寿命は無限大に達したけど、だからといって一瞬も無駄にしちゃいけない。
私達は情報収集に一切の手抜かりをしちゃいけないのよ?」
「それじゃ、プロデュースでも試みてくれ」
「あい、わかった。
この配信ページはね、アカウントを持ってれば、誰でも所持することができるの。
そして視聴課金もする事ができて、人が沢山来るレベルの上位者にも、機会費用がその分入るようになってるの。
さらにさらに、上位配信者はそれぞれが存在を知覚し合える、効率的に整備された環境が整ってるの。
切磋琢磨以外にも、お互いの配信を見合って、配信という娯楽を高めあったり、一緒にしたりも出来るの。
特に、友達同士でやったりもできて、リアルな人間関係を垣間見たりも出来るの、それが楽しいの!」
「見る人によっては、いろいろな目的があるからな」
「的外れな回答、もっと意欲的に興味を持ってよぉ!」
「まあ、暇があったら見てやるな」
「なぁぁぁ、、なんか私のほうが成熟した完璧な大人なのに、子供扱いされてるしぃ」
「別に、俺の方が子供、ていうより未熟者って自覚はあるよ、ただ言葉遣いのレベル」
「でも、ラノベも良い情報収集の仕方だと思うよ拓海」
「なんで?」
「そりゃ、最近の出版社は有能、というより淘汰と内部洗練されてきたからね。
文化が成熟すれば腐敗する所だけどね。
ラノベ業界は若い人に向けた情報だから、常に向上心を煽り続ける使命がある分、その傾向が緩和されて突き抜けた観があるね。
所詮は所謂、後発世代の文化だし、超将来有望って感じだね、もちろん限界はあるけど暫定首位の一角っぽい。
さらに出版社の抱える小説家も淘汰洗練されて、触発された新人作家も、このさき安定供給される機運は確実。
情報媒体としても分かりやすいよね。
二次元挿絵っていうのは、とても上手い下手が分かり易い、誰にでも価値が広く普遍的に分かる、少なくとも傾向がある。
そして挿絵に投資がされていれば、内容、というより作者も力がある目安になる、これが購買をより円滑にする。
出版社というブランドが、独占市場的に振舞えないようになってるから、カバー詐欺、挿絵詐欺が出来にくくなってるのも絶妙に良い。
まあ、そんな感じで、後発世代の生み出した文化の中でも、特にいいよいいよ。
先発世代の文化を踏襲して、より昇華、飛躍させた感じだね。
これからの後発発展世代、あるいは第二次後発世代へ繋がる流れ、将来、未来、歴史が私的にはたのしみ過ぎてヤバイよやばいよ」
「、、、、、。
ああ、、終わった?」
「聞いてなかったのぉ!」
「まあな」
「まあなじゃないよぉ!ひど!」
「わるいわるい」
「うぅ、わるいなんて思ってないくせにぃ、むぅっっきぃー!」
「かわいいなお前」




