無双神楽‐素晴らしき世界、終わりへ続き続ける物語
脳が走り続ける。
「 」
終わりへの歌が、鳴り響く空間で、恍惚を味わい続けている
この快感のみが、今の私の生を繋ぎとめているから、終わらせる事ができない、ずっとずっと、何を犠牲にしてでも。
黒髪の美女。
人とも言えないが、見た目だけを評すれば、そのように形容できた。
彼女を駆り立てるモノ、それは世界の価値、その全て。
ゆえに破綻した、無限の価値が、彼女を破滅的に捻じ曲げ歪に尽くしたのだ。
そして今、彼女は手に入らない、無限の価値を、手中に収める方法を実演している。
それは、、、終わりへの序曲。
「生きたい、どこまでも生きたい行きたい逝きたい、そう思わせるほど、残酷なまでに素晴らしい世界だから。」
終わりへの歌、終わりという、無限の素晴らしさを内包する歌。
それに魅せられるがゆえ、、終わらせる事ができない、終わらせたくないと、思い続けてしまうのだ。
必死に決死に、走り続ける少女に。
鉄の雨が降り注ぐ。
それが肉を裂き、咲き乱れた、錆び色に染められるわたし。
この程度か、と、”この命の終わり”を、儚いものとして受け入れる。
沢山に分化し、沢山に存在を枝分かれさせた、その一端末の最後を、本体である私は、そう知覚した。
「・・・・・・・」
沈痛な面持ち、対面する紅に染まった情景に、佇み続ける誰か。
世界地図に、新たに生まれた、もう一人のわたし、だ。
それが一つ、棺を回収する。
棺の中には私、もういらなくなった私、しっかりと娶り、私全体の生きる糧とする。
限界のした、できる範囲内で、効率的に、最大限を極める存在の規模、スケール。
桁違いにゼロを増やし続ける、が、終わりは近い、そう知覚する。
この世界は、きっと無限大を許さないのだろう、どこかでリミットを、限界を規定している、がゆえの、終わりへの予感である。
呪いのように、連綿に続く、終わりへの歌の、そのピリオド。
神々の、更にその上のほう、そこに存在する存在が、終末の旋律を奏でようとしている。
美しい私の願いとは。
最果ての、終わりの、終わりまでの、美しい日々を歩みきる事。
神々の真実、そこに辿り着きたく、地上の調和を極め続けた果てに、遂に私は、真の真実、禁忌とも言えるソレに、到達しようとしていた。
それゆえに、じきに終わりが始まる。
不連続に続く存在の終点。
始発はなし、掛け値なしで、、、、上位の存在に生まれ変わるのだから。
私が終わり、別の私に。
私という存在が無に至れば、強制的に、私は別の私になれるのだから。
眠りに至る為の、灼熱の言葉を、得る為だけに生きてきた。
最大級の祝福は、果たして、どこにあるのか?
呪いの炎を纏い、世界を支配しても、どこにも見つからなかった。
ならば、上位の世界に。
神々を死に至らしめる、更に上位の、神々なのかどうかすら分からない、終わりの旋律が鳴り成り響こうとしている。
宇宙開闢から数えても、最大値を更新し続ける、素晴らしき日々。
繁栄と絶頂を極め続ける、私の世界。
それを許さないかのように、終わりの旋律、波動の近づきが次第に強まる、存在の接近感。
茜色の空の下、人々が甘美なる抵抗。
雨宿りを命がけで、どうせ助からない、全てが無くなるのに無駄な事。
錆色の血が、雨のよう。
どうせなら世界を転覆させて。
何もかも清算すれば、一片の不幸すら沈められるのに。
鈍い光の中で、神々が無為な抵抗。
永遠に空から降り注ぐ、彼らには見えない棺。
彼らを納めて、全てが私の糧となる、終わりに駒を進める為の活力になる。
錆色に、暁を染めていく、最果てに最果てを広げて、広がる、広がり続ける空。
私だけが美しいと思える、そんな空。
墓碑が私の周りに連なる。
銘すら書かれない、幾数無き命の群れが、呪いを吐く、終わりを早めてくれる。
輝ける日々が、神々すら超越し、私の下に平伏さす。
私は人の旋律で、神々を永遠の眠りに誘う、抱いて眠ったソレラは暖かく、人間のよう。
鉛色の空を、錆び色の雲が彩る。
吼える神々、支配者にも、平等に祝福は降り注ぐ。
臨終を迎えた先には、私だけが描ける構図、絵図で、屍は芸術的に葬られる。
生誕には、即座に、呪いを。
炎をくべてくべて、神々は雌雄を決する、最終抵抗を、無用なる抵抗を。
雲の切れ目から、狂ノ空、終ノ空。
美しき日々には、神々の災厄が。
ならば、神々の日々には?
私は許さない、裁きを此処に個々に、最上級の災厄を。
神々も人々も、平等に怯える、真実の声に、わたしの声に。
灼熱の言葉を紡ぎ、地上の浄化。
墓で埋め尽くされる空間。
碑には銘を打たず、平等の生命であった事だけを示す。
もう無き命の、その群れに、最後の別れを、告げる、無に帰れ、と。
なくなった全ては、私に帰った、はずだ。
輝ける空のしたに、神の旋律ではない、なんれかの存在、その旋律を抱いて、やっと私は眠りに?
左の脳を、回転させて。
捏造を繰り返して、回して回して気付いた。
コレでは終われない、、、、。
呪わしき真実、我が弱さが憎い。
締結寸前の、その誓約を破棄し、調印書を破り捨てる。
逼迫した、世界は顔色が悪く、青く光り輝く。
彼岸花が咲き裂き、地上が瓦解していく。
傲慢な私に、誰が花々を添えてくれたのか?
周りを見渡せば、沢山のわたしが。
鉞が天から、どこからから落ちてきた、それを握り締めて、私の何処かが染まりゆく、子宮の色が眼に焼き付き離れない。
生れ落ちた、見た事もない色、分化し離れた、もう一人の私が、今の私を否定。
連続しない存在がまた一つ、終わりを告げた、私の終わりを。
天と地の全て、子孫も子らも、全てに価値がないと告げられ、世界が狂騒し明暗する。
たゆたう命、行く末が絶え間なく、だんだんと歌えなくなる。
その旅路で、わたしだけが残り続ける、更に純化されていく。
立ち止まる事も罪悪で、あるがゆえ。
私は私だけが参加する、レース、競争の中、世界の存在を私だけに純化させていくのだ。
世界の存在比率、その比率が私だけに至った時には、きっと多様性ゼロに、何もかも破綻してくれるだろう。
だがしかし、きっと心の底では、望んでいなかったのだろう。
なぜなら、こんなにも世界は、沢山の、多彩に過ぎる、無限に別個の存在であるかのような、わたしだけで満たされていた。
それはもう、私なんかじゃない。
ならば、どうする?
右脳が、限界を、弄くり捏造を重ねた結果、見知った事を錯覚できなくなったらしい。
疑わしき、全ての存在との絆。
証明する為の、誓約と制約を、探し出そうと足掻く、消滅したそれらは、もうどこにもないから、永遠に迷宮入り。
証拠品は、絶望した心の底で、消滅したのだ。
空模様が暗く暗く、どこまでも暗黒色に。
心を刺すナイフは、私だけを突き刺して、灼熱の言葉を紡ぎ続ける。
血を滴らせて、それを自分で嘗め回していると、軽い倒錯。
そうか、私の錆び色は、きっとずっと前から、色合いを変えていたから、だからこんなにも最高の味で、終わりを教えてくれる。
死神は私で、私を真に終わらせてくれるのも、私だけだった。
上など、ないのか。
終わりの歌が、私を生に縛り続けるだけの、破滅的な物語。
終わりを奏で続ける、永遠の夕暮れ時みたいな、そんな素晴らしくも美しい、世界での日々だった。




