プロローグ‐幻想領域、アウルベーンの鐘
アウルベーン、ゲーム委員会。
多階層、プラットホームにて、今日も沢山の声が飛び交っている。
それぞれの席にはオペレーターが、アナウンサーのような明瞭な声で何事かを話す。
現在配信しているサービスは、いくつも存在する。
主に、異世界超越系&または転生系、である。
アウルベーン本拠地における、外敵との戦い、そのゲーム的参入が第一。
そして、アウルベーンの創生した世界に、参加者を招聘・派遣し、外敵と戦わせる形式の、第二。
イルミナートはこのたび、新しく世界の創生を任された。
この、ソーシャルネットワークゲームスに、一部とはいえ、全責任を負う、責任者になった。
立場的には、特になんの位置も占めない平だが、重要使命である、その自覚が彼女にはあった。
そんな少女よりも、遥か上の、頂上のプラットホーム。
主席、である、彼女の名前は、アウルベーン。
名に、この世界自体、その名を冠する少女。
その場に居ながら、下部で展開される全てを、明確に知覚できている。
「ながれている、果てしなく、流れている、、、星の知覚が、遠く遠く、だんだんと感じれなく、見えなくなっていく」
ここでは、
何時までも、どこまでも広がり続ける、永遠の中空。
鐘が鳴り響いている。
ここは、数多の幻想世界が、創造される場所だ。
特殊な力を持つ鐘、それを中心として、世界が無限に広がり続けている。
「世界は、無限に増殖し続けなければ、滅ぼされてしまう」
”秩序的な”観測者として、アウルベーンは己の成すべき事を心得ている。
端的に言って、世界は崩壊し続けているのだ。
タクティカルエントロピーは存在が存在を保った瞬間から無限に膨張し、どこかの臨界点で反転しゼロから無限のマイナスに縮退する。
それは精神的な事柄にも同様に言えて、人間が、知的生命体が、無限の幸福を願うのならば、その複雑性、エントロピー、カオスや混沌とっ呼称される。
”不幸”という名の絶望、死という名の終わり、などなどetc,etc、それら正反対の対価も当然のように”世界”に、”システム”に、請求されるだけの事なのだろうか......。
果たして、それは世界の真理であり、大構造そのもの、システムや節理ともいえる、どう足掻いても絶望するしかない絶対の病、死に至る世界のガンなのだ。
さて、異世界を超越した世界、アウルベーン。
ここでは、特殊な技法で、世界の創生が行われている。
遍く人々、存在は、複雑にリンクし、繋がっている。
そして、一つの世界を形成する。
その様は、ネットワーク機器によって、加速度的に規模を増した。
ここで新たな試みとして、採用された手法。
世界、その起点として、ソーシャルネットワークゲームの利用が、まさにソレだ。
「頭の可笑しくなる現実、辛いだけの現実、真実からは、誰も彼もが目を逸らしたくなるものだから」
↑アウルベーンの日常日頃の姿(若干デフォメルされていますが(当社比)、大差はないです...たぶん(笑))
「(...なにか、身の毛もよだつ悪意を感じるわね......)それは、ともかく」
彼女は、念じる。
今も、数多の外敵、世界を覆いつくすように迫る、軍団が、多方面から迫っている。
ここ以外にも、守るべきところはある。
外敵に対して、彼女は宣言する、命令としての迎撃を。
「もっと多く、リソースを増やさなければ、いけない」
その為の、魔術、あるいは儀式的意味合いも多分に含んだ、世界の創生。
「試練に、打ち勝って、そして、どうか、世界を助ける力に、なってください」
アウルベーンの鐘の元で、永劫に近く、祈り続ける少女は。
その目元に、涙を滲ませながら、今日も新たに世界を創生したのだった。
・・・・・・
鏡の向こうに、もう一人の自分が居た。
それは影、アウルベーンという巨大な光、秩序から派生した、世界の”歪み”だった。
それは。
その自分は、アウルベーンが鏡から目を背けたのにも関わらず、部屋からドアから出る彼女を、ずっと”視”つめていた。
「”見ている”よ。アウルベーン、最も気高く、強力な”観測者”。
しかし知らなければいけない、君は、深淵を垣間見るとき、同時に深淵は君をも見ていることを、ね。
世界を操り回す手腕は見事だが、どう足掻いても”私以上”なわけはない、なにせ私が世界で、、、神、、、。」
「いや悪神、、、いや、コレも違う、混沌の権化、いやこれも違う、悪意の根源、、、違うかな、ただただ人間に対する悪意がある、ただそれだけ、、、なのだから、ね、、、うっふふっふふ、っふっふっふふふ」