図書館都市星図域-ライトノベルの世界とか哲学っぽい話し
「いや~、現実を超越した、いや現実に比する程度かな?
最近の小説はクオリティーが高いねぇ。
さっさと娯楽の追求の果てに、何か終わったようなレベルの作品が現われないかと思うね」
幾つかの多重並行世界から、特にライトノベルと分類される情報を掻き集める。
この情報収集は上役から、特に鬼集、鬼のように集めろと、そうせっつかれている。
つまり、今現在一番熱い娯楽媒体の形式といえる。
「コンパクトにまとめる事による、情報価値の圧縮凝縮、偏在点に至るって感じかぁ。
究極の娯楽とは言えないけど、量で攻めるなら、ライトノベルほど上手い娯楽の媒体はないね」
更に言えば、書き手が意図的に作風が被らないように配慮しているのも良い。
一定の枠の中で、この場合はライトノベル業界、その範囲内で見れば、情報収集をする上でとても効率が良くなっているのだ
全ての古今東西の全書籍で作風等を被らせないのは不可能。
だから、いっその事、一定の範囲内だけに博識になり、そこだけで唯一無二のオリジナルになりえる方が良い。
その範囲内だけで、ほぼ情報収集する層が一定で、商業を行えるレベルで存在するなら、その層の読者的にも良くなる。
「さて、約一万冊くらい、あればいいかなぁ?
五十年分のライトノベルかぁ。
これ以上模索検索思考連想範囲を広げても、あんまりなぁ~。
作者が没すると、また一から文化が繰り返されて、あんまり効率が良くないんだよな。
歴史とブームと流行とは、一定の下地の底上げにてループし続けるモノだ」
蔵書数17万5783冊。
その内、ある一定のラインで格付け等をして、一流超一流以上の作品だけを実物において置いている。
その流階層は、全人類空間平均値基準価値、で、決めて定めている。
中でもいわゆる、最も信用性が高いと上が認める。
秩序陣営勢力所属人類帝国東南方面域観測端末群規定、娯楽価値基準だ。
「ダメダメね」
「はぁ、ダメか?」
俺と同じくらいの役所の、女性司書官が愚痴っている。
「十倍百倍超一流以上とかで、足きりしない?」
「それだとさ、質は高まっても、量が足りなくなるのよねぇ、これジレンマ」
「ホントね、たったコレだけじゃ、お客が呼べないわ。
ふーん、だったらさ、五十年と言わずに、五百年分で情報収集したいわね」
「五十年の未来予測でも、けっこうに一杯一杯苦しいのに。
五百年もやったら、まったく確実性のない、リアリティーのないモノになるよ。」
「そう、もっと情報処理演算能力の高い、予測装置や端末が必要とされている」
「富も必要になるさ」
「まったく、詰まらない、糞ゲーじゃないの」
「いや神ゲーだね、これが一番バランスが良いと思わないかねぇ?
これ以上簡単でも難しくてもダメ、厳しくても甘くてもダメってね」
「鬼畜ゲーは好みじゃないのぉよ」
「ヌルゲーも、俺は好きじゃないけど、って言うほど鬼畜ゲーかなぁ?」
「ええ、私のやりたい事が全部やれない世界なんて、認められない許せない、我慢がならない」
「やりたい事、全部やれたら、そんな夢が全部叶う世界なんて詰まらなくないかね?」
「詰まらなくない、夢を叶えたら、もっと大きな夢を見出せる、それをずっと続けられる。
ほら、これって神ゲーだと思わない?」
「世界のリソースを大幅に必要とする、ってか浪費してる、するような感じだ、現実味には欠けるね」
「現実味ってなに? よ、現実の味なんて、大嫌いだけど大好き」
「ほら、現実は神ゲーじゃんか。
究極にバランスが取れてるから、詰まらないけど面白いんだ、よ」
「はぁ? 真に神ゲーなら、無限大に大好き、になるもんでしょ? 常識的に考えなさいよ、ゴミ」
「理想的に過ぎてるよソレ、現実を掛け値なしに超越した、神の領分領域って奴。
むしろ真とか無限大って不可能な事象現象じゃない?」
「ふん、不可能を可能にしなきゃ、面白くもなんともない、そうでしょう?」
「だけど、絶対の不可能に挑まなくてもいいじゃん? 酷過ぎるつぅーかぁ?」
「ふん、私は”絶対に壊れない、破壊は不可能だ”って定義されてるモノを殴りつけるのが好きな馬鹿なの、放っておいてよ」
「そんな愛らしい馬鹿は放っておけないよ、可愛いつぅーか」
「ふん、だったらこれからも、絶対に壊れない壁に、越えられない何かに、私は挑戦し続ける、貴方に愛される為に、。
って言ったら嬉しいんだな?」
「頑張ってって思うよ、そんな可愛い面白い君を全力で応援するよ」
「意味わかんない、本末転倒チック、絶対に叶わない夢、はぁ~何もかも破綻して崩壊して破滅してる。
この世界は無上に無常無情過ぎるわ」
「まあまあ、それでも、最高に最大に最善最良を尽くせばいいんじゃないかぁ?
所詮はゲームとして考えれば、全ては事もなしだぜ?
与えられたゲームがどんなに劣悪でも優秀でも。
プレイヤーである俺たち私たちのプレイスタイルは決して変わらないんじゃないかぁ?」
「はいはい、己の持つ全てで判断決断決意して行える、その自由意志がある限りってねぇ、あーはいはい。
知生体の本分は、どんな状況環境下でも、最大限の希望とかを見出して、とにかく生き続ける。
どんなに惨めで絶望的でも、ね。
あーあー、幸福じゃないのに、生きている意味ってあるのかしらぁね?」
「その結論は、もう出ているじゃないか?
人類は過去既に、楽観的に現実を捉えて、一歩一歩進んで行く事を選んだ。
だから、どんなに現状が不幸に見えても、それを幸福に捉えて、未来が絶対の幸福と定義し生きるだけなのさ」
「慰めになるかどうかも、怪しい話、歴史だ。
それならまだ、実際の実体実態としての直面現実において。
無限階層段階次元水準レベルにおいて、不幸な存在は無限大数量で存在するって方が私的に効くわよ」
その後も、ずっと、長時間といえる時間軸を、そのような取りとめも無い話題に費やした。
お互いの抱える心の闇って奴だろうね、それを吐露して共有し共感したかったのだろう。
一吐けば十返ってきて、相互連鎖相乗的に核分裂を想起させる響きが周囲空間に渡っていた。
世界を揺るがすには、足り無すぎる、正直世界は重厚で厳格で、無限大の不可能領域の質量がないと揺るがせないのだ。
だけど少なくとも、俺と彼女の内心だけは、震えるほど響いた、それだけで一定の至福的な満足なのだった。
「この話は、飽きたよ、別の事を話そう」
「飽きた飽きた、詰まらなくなってきたわ」
同時にそんな台詞を吐いた、極致感の後の、賢者モードって奴。
二人とも悟っていたのだろう、この話題において現状、これ以上は無い、と、果ての果てた実感。
「やっぱり、有限大の存在って時点で、糞ゲーだと思うの」
「無限大の存在って、そもそも存在できない、だからゲームとして成立しないと思う」
「もういい所詮糞ゲーにおける糞ゲーキャラめぇ! 貴方からなんて、何にも出てこないわ!」
「酷いな、俺はこんなにも君の為に、唯一無二の君だけだよ? ただ只管にあろうと思ってるのにぃ、、、」
「ふん、この世界で最も完成度の高いモノ、芸術って知ってる?」
「それって、信仰・希望・愛情とか、なんだってぇ?」
「馬鹿、貴方よ、唯一無二の貴方、それが答えよ?」
「はぁ、、うぅ、俺にとっても、そうだよ、同じだよ、君だよ」
「本当? 私は貴方が嘘付いてるんじゃないかって、疑ってるよ?」
「それでいいのさ、疑わないって事は、相手に対して思考停止してるってこと。
盲目の愛よりかは、絶対に良い、そも、盲目になれるなら、端から、そんな思考をしてないわけだしね」
「そうだね。
そもそもよ、私は私自身すら、私が貴方を疑ってるかどうかなんて、このさいどうでもいいと思うの。
私は疑ってることを表明して、貴方がどんな反応するか見たいだけだしね」
「さいですか。
俺だって、君を疑ってるよ、全然信用してません、信頼して無いって事」
「そうですか。
別にどうでもいいし、勝手に言ってれば? どうでもいいことだし」
彼女は、それ以降、そっぽ向いて話してくれなくなった。
「ふーん、貴方、何読んでるの?」
「SFだよ、ちょー面白いのよコレェ」
「へぇー、私も読んでみようかしらね」
彼女はまったく同じ本を読み読み、幾ら経った後、また話しかけてきた。
「ねえねえ、作者が世代交代すると、作風や流行ブームが繰り返される傾向があるんじゃない?」
「そうだね、傾向があるね」
「だからさ、、、なに? つまり、これはちょー面白くはないわ、ってこと」」
「確かに、これは幾らか昔の、古典的作品と類似点、近似が多い傾向があるからね」
「うん、そう、世代交代前の終期に生み出した方が、絶対に面白い」
「そうだね、でも、後発より先発世代の方が、やっぱ下地というか地力が違うよ。
これからってか将来性に期待だよ」
「ばっか、五十年分じゃ、将来なんて無いじゃないのぉ」
「そうだった、けど、そこはもう、それあれだよ、俺達の想像で楽しむつぅーか?」
「ならば、もうしょうがない、わね。
今日は少しでも先を、精確に予知することにしない?」
「費用対効果が合うかどうか、絶妙に微妙なところだけどぉ、、、」
「最近外的宇宙の開発開拓ばっかでぇ。
何か自分で生み出したような、そんな感覚快楽に飢えてるの。
なにより、偶にはふたりの内的宇宙で、、、そんな楽しみを求めてるのぉ」
「それじゃしょうがない、合作共同協力しようか?」
「ええ、喜んでするわ」
あれはて? 俺達はいつも、大概において”そんなこと”ばかりしてるような?
まあいいか、手法が違えばアウトプットされる情報も、大分毛色が違くなるだろうし。
俺は未来を彼女と予知し始めた。




