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リリ編‐水の都のアトリエの日常

 


「ふぇ~、これは手放したくないんだよぉ!!」


「馬鹿やろうが貸せぇ! 消し炭になりたいのかぁ!」


「台詞だけ聞いてると、まるで悪質な強盗のようよ?」


 いま、彼彼女達は危機に陥っていた、いやむしろこの町の全てが破滅の危機だった。


「いやぁあああ!!!!」


 青髪の少女の叫びと共に、水色のスパークが衝撃波とともに撒き散らされる。


「ぐげぇあああ!」


 少年は吹き飛び、黒茶髪の美女は障壁で何事もないようにボウッと天空を臨み見る。


 上空数百メートル辺りにはドラゴンが居た、それも数十の壮観に値する威容で大量に存在していた。


「ほらみろ、もうダメだ」


 少年が諦観を込めてそう言った時、一体のドラゴンが爆音と同時、爆発したように炎上したのだ。 


「ああ!あれは!」


「機動兵器だわ」


 別ゲームのような有様の光景、メタリックな外装の高速飛翔体は、単身で次々とドラゴンを打ち抜きだした。

 内蔵されるミサイルを発射し一撃離脱の高速戦、はたまた接近と同時に人型に変形し居合いを放ちドラゴンの首を切り落とす。


 華麗な戦いは数分、それだけでドラゴンは全て一匹残らず殲滅されたのだった、戦闘機の方は孤を描いて遠ざかり見えなくなる。


「すごいぃ!すっごーい!!」


「誰だ、余計なことしやがって、、、」


「なによぉ! 私の自慢の超高級宝石が無駄にならなくて良かったじゃないの!」


「そうだな」


 そのようにただ言う少年は、多少なりとも気落ちして残念がっている。

 この傍若無人でハネッ返りの子供のような小生意気な少女、彼は偶にはお灸を据えられたみたいに凹ませたかった、そういう話である。


「この、まるで私の敵みたいね」


 少女が睨みを入れてくる、少年は鬱陶しそうにする。


「なによ!文句あるの?!」


「なにもありませんよお姫様」


「断罪執行!!」


 少女は助走をつけて、後ろ向いてそっぽ向いた少年のお尻を蹴り飛ばした。


「たっ!ぁああ!ぐぅぅぅ、、ああああぁ!!! やりやがったなぁ!!」


 少年の方はといえば、ここぞと、少女をしがみ付くように抱きしめて拘束、その豊満な胸を揉みし抱いた、何度も何度も。 


「ちょっと!やめてよぉ!!」


 とか叫びつつ、少女も少年に触られるのは満更でもないという風袋。

 傍でみるもう一人の美女は興味深そうに、だがちょっと面白くない、詰まらなそうにソレを見ていた。


「日頃から!お前は俺を馬鹿にしすぎなんだ!態度もでか過ぎなんだ!反省しろぉ!!」


「わっわかっわかっわっわっ!!あんっ!あぁん!ああああん!!!!」


 現在進行形のその後、少女はいじり倒され、少年に滅茶苦茶にされた。

 酷く満更ではなさそうだった、少年も瞳をキラキラさせて敏感に反応する少女に興味津々だった。


「はぁー、凄く気分いいわ」


 少女はプールサイドで仰いでいた。

 もう一人の黒茶髪の美女は、その華麗なる肢体を巧みに操り、五十メートルのレーンを息継ぎなしでひたすら泳いでいる。


「おいリリ、さっきの超常現象のようなドラゴンの来襲について、どう思う?」


「はへぇ?? どうでもいいでしょ、あんなの」


「おいおい、危うくブループラネット級の宝石を失いかけたんだぞ? いいのかそんな軽い調子で」


「いいのいいの、最近は商売超繁盛だし、少しくらい不幸が降りかかってくれないと、世界に対して申し訳ないしねぇー」


「な、、お前なぁ、、」


 少年は呆れる。


「だいたい、宝石を捧げて大妖精とかを召喚する、そのスキルも実際やらないと上がらないわけだしね、一石二鳥よ」


「なにが一石二鳥だ馬鹿、クエストでも何でもなくて、報酬も何もあったもんじゃないだろうが」


「貴方ねぇ、最近のその態度はなに? エロイ事もやり出したしぃ、そんなに私と良い関係になりたいの?」


「どっどういうことだよぉ」


「つまり、奴隷と主人の関係じゃ、飽き足らなくなったぁ?」


「どっから声出してんだ、あと何時からそんな関係になった」


「冗談冗談、それに私はレズだしね」


「はっは、マジかよ、てかお前が奴隷って叙述トリックがあったりしてぇ?」


「冗談でしょ?」


「はぁ、お前がレズって事? 奴隷って事? どっちだ?」


「さてどちらでしょ、面倒な会話なってきたし、強制終了」


「はぁ、、」


 少年は少女を観察した、類稀にナイスバディで美しすぎると思った。

 青い長髪はどこまでも快活に麗しい、容姿は可愛らしく端麗、ブルーの瞳は吸い込まれるくらい深くて純粋なる美が秘められて見蕩れるほど。


「あんたぁ、」


「うん、なに?」


「なんで勃起してるの?」


「いやいや、してないだろ」


「ふーん、意識しだしたら、立ったりするんじゃないの? 立ったところ見たいから立たしてみてよ、興味ある」


「絶対に嫌だ、死んでもいやだ」


「なんだぁけちんぼぉー」


 少年は少女のふざけた言葉すら、卑猥に聞こえてしまう現状に状況、このシチュエーション自体に頭を抱えたくなった。


「はぁー何か面白いことないかなぁー」


「最近、おまえそればっかだな」


「貴方に面白い事しろって、言ってるつもりなんだけど?」


「初耳だよ、凄く驚いた」


「なにかしてよ、わたしがクスリ程度でも許してあげるからぁー」


「大笑いさせてやるよ」


 少年はパラソルの下、日よけして、長く綺麗なムッチリしつつも細いという、形容矛盾な美脚を伸ばす少女に度を越して近づく。


「なっなによぉっ」


 少女は警戒したような声と顔しつつも期待する瞳を向けてしまう。

 最近になってとみに始まった、彼のこの積極的で、特に性的に何かしらしてくるのが癖に、好きになってしまった節があるようだ。


「笑わせてやるんだよ」


 ゆったり座る少女の上から近寄り、お腹の辺りをもにゃもにゃし出した。


「さ、触り方がエロイ!!」


「知らないね、ほら笑えないか?」


 正直なところコレは少女的にくすぐったくない、壷に嵌っていないようだ、でも、性的には感じるような感じないような、、。


「うぅ、、、」


 直近で見つめられて、無防備なお腹周りを揉まれるのは、冷静になると酷く恥ずかしいと少女は気づいて、ぎこちないうめき声を上げてしまう。

 少年はというと、なんだか彼女に対して優位に立てたみたいで、ジッと穴が開くほど上から目線で眺めつつ、腹を揉むことをやめる気配がない。


「えっ、、、」


「え、なんだ?」


「エッチィ!!!!」


 少女は我慢できなかった、いろいろと。

 腹を揉む為に近寄った、直ぐ傍にある少年の下半身のソレも何もかも。

 だから膝を思いっきり立たせて蹴ったのだ、ソレをだ。


「うぐぁ!!あっ!ぅぅ!しんじらんねぇ!このおんなぁ!!」


「信じられないのは!あなたよぉ!このへんたい痴漢鬼畜外道ろりこん!女の子を揉んで勃起する男!!」


「なんだよその罵倒は、、ててってぇ」


 ビックリして涙目になっている少年、実際痛くは無かったのだが、少女の乙女的な優しさがそこにはあるよう。


「女の子を脅かすと、そういう目に合うんだからぁ!」


 眉毛を怒らせて、ビシッと指差しながら宣言するように彼に言う。


「ちょっと待てよ、俺はお前を笑わそうと思ってだなぁ」


 少年は建前の言い訳を振りかざそうとするが、それはちょっと無理があるようで、簡単に少女に圧し折られる。


「ふんだぁ! どうせ密着するのを良い機会に! 私を手篭めにして! エロ漫画やエッチゲームみたいに酷いことしようと考えてんでしょぉ!」


 鬼の首取ったみたいに、尻餅ついてしまった少年の上から、ストレス発散になるくらい畳み掛けるように大きな声で言う少女、顔はドヤっていた。


「うぅぅぅ、、」


 少年は余りの剣幕に沈黙し、まったく目すら合わせなくなってしまっている。


「ふっふぅ、、そうよ!貴方は変態!へんたいなんだからぁ! それを自覚なさい!

 だからねぇ!私に逆らったら!それは即刻つまり、なんというか、、犯罪なんだからねぇ!!」


 この台詞にはちょっと少年も疑問に思うというか、純粋に義憤を覚えたのか、圧倒された勢いを跳ね返すように反論しようとしたが。


「あのぉー、そろそろ良い時間だし、帰りましょうか?」


 プールからとっくの昔に上がり、髪の毛を乾かし終えて幾らかたったもう一人の少女が、タイミングを計ったように割って入り提案する。


「そうだったわよぉ! こんな女の子を組み伏せていやらしい事するしか脳のない変態男を構ってる暇ないわぁ! それじゃあねぇ!」


 彼女はとてつもなく酷い口上言い残して、忽然と消えてしまう、


「いま思ったのだけれど」


「おお、なんだ」


 黒茶髪の美女は呆然とした感じで言う。


「彼女って、何かしら熟れた文化に染まっているように思えるのは、わたしだけかしら?」


 少年はそれには答えず、「さあ、じゃあまた明日」、とだけ言い残して同じようにその場から消えるのだった。

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