どこかも分からない砦にて
「おいアルド、この世界について説明しろ」
とある日、砦の衛兵という仕事も多少は慣れて、休憩時間を自室、
まあ平衛兵の部屋はタコ部屋なので、アルドの幹部クラスの部屋を間借りしている、それを俺の部屋と指示代名詞で言ったのだが。
「ああ? 前言わなかったか? 知らん! ってな」
「馬鹿が、知らんわけないだろうが、元絶対存在」
「確かにな、前の世界では無限の情報を司ってきたんだ、
だが意思力みたいな魂の記憶は引き継げても、情報として詳細なモノは一切合財、無くなったも同然なんだ、
漲る溢れる体力に変換できても、実際に世界を理解するには無用のナガモノって奴だな」
「ゴミが、脳筋って事じゃねーかよ」
まあ知れていた事だ、それはな。
「そうじゃねえ、てめえの知る、俺達よりも前に此処に来ていた、お前の知っている事だ」
「オレの知ってる事? ねーよ、この世界で、世界の情報収集なんてする暇も、金も労力も、ねー、つか無かったしな」
「はあ? くたばれよ、これからの世界情勢も知らなくて、砦を守ってられっか」
「よお、作者、いやタクミって言ったか?」
「ああ、つかアルド、お前に名乗った覚えは無いが」
「この世界じゃな、そんな巨視的な視点はいらねええんだよ、目の前の仕事に全力で取り組むべきだって事さあ!」
「んなこたあ百も承知だよ、俺だって衛兵みたいな仕事を、それなりにやってる、やれてんだ、報告は行ってんだろ?」
「がはっは! ああ!まあな! 真面目に衛兵やれてますって、そういう報告をもらってる」
「まあなんだ、つまりはお前に対する甘えだが、
俺はこの世界を知らなくても良いと思っている、だが同時に、知りたいって気持ちも抑えられねえ、
過去、全知全能の作者だった、自覚は無くても、記憶はあるんだよ、
ならば、あの頃の視点から言って、俺は矮小な視点のまま、外側からの鑑賞者の期待に応えなくちゃ、強迫観念神経症になっちまいそうなんだよ」
「ふーん、なるほどねえ」
アルドは、最近吸い始めたらしい、草のみで出来たようなタバコを吸って、ため息。
「はふぅうう、まあな、俺だって、実はそうだ。
この砦の仕事で手いっぱい、世界の大きな勢力の戦略や情勢を、知る必要も、知る知的好奇心も、邪魔なだけだって、正直そうさ、抑えてたのさあ」
「だろうがよ、俺達は共通してある感覚として、それがある」
共犯者を見つけたような、この世界の異端者であるシンパシーなんだろうがよソレは。
「まあそうだな、暇があれば視つけといてやるよ、この世界の地図とかな」
「頼む、俺は俺で、地道になにかしか、やっといてやる」
ここに世界を大きく知りたい、そんな知的好奇心を満たすだけの、広域情報探索同盟が結成された、まあそれだけの日常の一コマのような扱いだがよ。
「はぁはぁ、、ちゅうううぅ」
「ぷはぁ、、、タクミ」
次の日、まあ俺は何時も通り、可愛いイルミを愛していた訳だが、ちなみにキスだけだ、
それ以上はなぜか、する気が起きない、ただなんとなくする気がこの先も、永久に起きない気がするのだが。
「なんだ?」
「これを見てください」
イルミが差し出したのは、「イルミナード帝国記」と題された分厚い本だった。
「ああ、なるほどね、あのイルミナードの鐘は、このように機能した訳か?」
「おそらく、真に外なる世界へ、このように波及した、なれば、必然的に分かる事も多いかと」
俺は限られたピースで、様々な計算をした、
ただの人間、それも凡人に毛が生えた程度の知性で、だがしかし、俺には類稀な意思力があった。
それに加えて、前の世界で引き継げた断片的な、物語の作者としての情報量、推測的に、様々な突破系の糸口が見えてきたのだった。




