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人形が居なくなると云う事



 あの例の人形は居なくなったらしい。


 俺の中の設定では、

 あの人形少女が、俺が酷い罵詈雑言して、本気で嫌われた、という設定だ。

 この先もずっと、永遠に俺の前に姿を現さない方が、なにかとトラウマ的な意味合いで甘美で、もう出さない方が良くなったらしい。


「おいおい、ざけんなよ」


 俺は会いたい、カミンとか言う糞人形と、会いたいのだ。

 まあ所詮は、悲劇のヒロインを気取っている自分の、本気で疵ついた方が、長期的にプラスだから、

 最適化の理論が絶対の、物語世界で、あの人形が再登場する事はないのだ。

 絶対的に失って、初めて実感できる価値の為に、あの人形は犠牲みたいに成ったと云う訳だ。


「やあ」


「はあ?」


 人形は現れた、意味が分からない。


「本気で嫌ったはずだろうが? 消えろよ」


「ええ嫌いよ、本当に貴方、酷い事言うのだもの、でももう一回だけ、チャンスを上げようと思って」


 なるほど、もう一回言ったら、それを縛りにして、自由自在な状況下を制限する事で、ギリギリ面白くなるって感じか?


「俺に気を使わせて、真に気を使わせるキャラクターとして重宝されて、この物語に居座るつもりか?」


「ええ、特権的な地位よ、凄く居心地が良いって、それって思わない?」


「く、、、、」


 クソがっ、と言おうとしたが、なんとなく言えなかった。

 もし、この人形の気分を害せば、居なくなってしまうからだ。


「くすくす」


 そして、俺が人形に真価を感じていると思わせると、この人形は笑うのだ、そう、それが俺の望みだったのだ。


「そういえば、、、あ」


「なになに?」


 コイツの設定について聞こうとしたが、それも微妙に成っている事に気付いた、本気で特殊な地位を占めるぞこりゃ。

 コイツが持つ情報量を詮索したら、このキャラが気分を害する、そんなことまで意識しなくちゃ、強制的に駄目に成ったのだ。


「なんというか、可愛いなお前」


「そんな無難な事言ってて、私が楽しいと思うと思ってんの? 舐めてんの?」


「クソが、今までの仕返しか?」


「ええ、今までよく糞人形糞人形、ぶっ壊してやるって、脅しつけてくれたわね、仕返ししてやうぅ」


「本気で怖がってたのか?」


「ええ」


 糞、疑う事すら微妙に成ってる、このシチュエーション、ちょっとビリビリぞくぞくするな。


「流石俺だな」


「はあ?」


「こういう状況も想定して、ちゃんとカミンを再登場させた、オレすげえってのを、実感してた」


「はぁ? 糞キモ、死ねば? あんたの、そういう糞みたいな低レベルな自尊心や、娯楽の意気値が、マジで糞テイレべで見ていて萎えるんですけど」


「はっはっは」


 もしかしてコイツ、挑発して俺を怒らせて、居なくなりたいのかな? それが勝利とか思ってんのか? 自分の。


「ああマジで可愛いわ、人形じゃなくて女の子だったら、いいのになぁ~」


「萎えるわ、昔の貴方はもっと尖ってワイルドだったのに、かわっちまったなあぁ~~」


「そ、そう言わないでよカミン、もっと仲良くしようよ」


「嫌よ、包茎の臭い糞男と、仲良くするつもりはないわ、死んで頂戴」


「好き勝手いって頂き、ありがとうございます」


「礼にはおよばないわよ、好きにしている事だもの、くすくす」


 ちょううぜぇえええええええええええ!!!


「面白いわ、虫唾が走りまくってる、貴方の顔の、なんと甘美な事よ」


「はっはっは」


「糞、糞、クソ男! 死ね! 死ね! 死ね!」


「あっはっはは、カミンは冗談が特異だな」


「はふぅ、まあ、これくらいで許してあげるわ」


「ありがとうございます」


 これからまた、気を使う形ではあるが、俺はカミンと一緒に居られるらしい、嬉しいと思った。


「ねえ、嬉しいと思ったでしょう? 

 本気でそう思ってくれてる事が、なによりも私は嬉しいわ、私に価値と意味を、真に認めてくれているんですもの。

 こんな意味不明な、人形を、貴方は必要としてくれている事が、今は至上の喜びよ、私の」


「俺もだよ」


 抱き締めた、たぶん、これでしか感じられないアジが、あるのだろうと、俺は再認識したのだった。


「私は、貴方の唯一無二、特別な存在なんだわ」


 ドヤ顔していた、

 だからこそ、裏切りたい、

 真に信頼されている、本物を、ぶっ壊したい衝動に、

 俺の手はずっと、この少女との邂逅から震わせていたのだった。


「ああそうだね、大切なお前は、人形だよ」


「人形扱い?」


「ああ違う、存在、女の子だよ、言い間違えたよ」


「絶妙に気遣っている、私の好みよ、それ」


「ああ俺も、この気遣いが微妙に働く設定の、お前が本当に好きだよ」


 とりあえず、今はこのままで良いか、純粋な瞳を貫きたい衝動を、俺は抑えたのだった。

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