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シズル編‐とある暗殺者の一日 ☆4好みで高度な戦闘描写


 


 寒い一日だ。

 皇国が神の名の下に敷く重税の所為で、どうしても豊かになれない此処、凍死する人間もちらほら散見できる。

 そんな道を、俺は歩いている。


「さて、ターゲットは、、」


 目標の住む洋館、一見普通だが、見る人間が見れば些細な歪さに気づくだろう。

 何でもない通行人から一転、高く跳躍、大人二人分の塀を飛び越える。

 すぐさま行動、頭に叩き込んだ地図のとおりに、一つの勝手口から侵入。

 眼前の光景、後ろ手に閉めた扉のロックオン、既に、罠に嵌っただろう暫定の判断。


「おーほんっとにキタキタ」


「・・・・・・・」


 広い部屋だ、縦長に十メートルはある。

 そんな思考の折り、高速で飛来する何か、煌めく線のようなモノを肉眼でなく、感覚が捉えた。

 壁スレスレまで高く飛び、避ける。

 ちなみに、この攻撃で、一応捨て駒として連れて行くことを半ば上に強要された部下が全滅した。

 全員が頭部を鋭利に切断されて、大量の血潮を辺り一体、容赦なく広い部屋を血塗れに変えていく。


挿絵(By みてみん)


「くそ、できるなら、全員生かして返すように、言われたんだがな」


 意味のない口上、その隙に戦闘思考を進める。

 調子の良さそうなこの相手、なら会話に乗ってきそうなので引っ掛けだ。


「大方、実戦経験でも積ませたかった? 間違ってたらごめんね、そして殺しちゃった事もごめんねぇ」


 言いながらも、意識の隙を縫うようなタイミングで、先ほどと同様の攻撃。

 三撃四撃避けられた時には、相手の顔色が変わっていた。

 さらなる奥の手、搦め手を講じられる前に、速戦で決めるべきだ。


「コロス」


「くそぉ!!」


 割と難易度の高い技術を極めているようだが、精神が弱い、俺の本気の殺意に動揺を隠せていない。

 一直線に接近、当然あの攻撃が降りかかる、しかも連続で飛ばしてきやがる、今まで短撃だったが隠していたか。

 だが問題ない、隠しだまを持ってるのはこちらも同じ、そして大抵先打ちした方が敗北する。


「くっ!、なんだとぉ!!」


 線と交差の瞬間、最小限の動作で二閃。

 相手の絶叫を気にせず、次弾より先に懐に迫る。


「シネ」


 短い鞘から抜き、短刀というより、見た目的にはただのナイフを取り出し振るっただけだ。

 これを見せた敵は全員始末したから、当然敵も知る由もないだろう、掛け値なしに、どんな物質でも切り裂く異能の刃。

 紅に色づくそのナイフでなく、もう片方の手で、サバイバルナイフを投擲、顔面、その額にめり込ませた。


「さて、次か」


 縦長の部屋の最奥、巨大な扉の前で。


「っ!!」


 常時では感じれない何か、違和感に従い、ノーモーションでただ原始的に伏せる。

 何となくで予想の通り。 

 巨大扉を貫通し、糸くらいの横線が俺を両断するように飛んでいた。


「種は割れてんだ、”糸飛ばし”、出て来いよ」


 威圧的に、敵にも当然聞こえる声量でつげる。

 もちろん、姿なんて現してくれるお調子者でない事は把握ずみだ、その上での口上。

 怯えて、何か気配でも晒すかと期待したが、まったく読めそうな気配もない、しかたねぇーか。


 扉を蹴り飛ばし、隙間に煙玉を幾つか放る、数秒のタイムラグで飛び込む。

 悪い視界で確認したのは、皇国ではスタンダードな礼拝堂だった。

 立ち並ぶ背の低い椅子を遮蔽物にして、隠れ移動しながら思考。


「噂に聞くほど、連続で飛ばして来ないな? 弾切れか?」 


 そんな訳はないだろうが、挑発の意味も込めて言う、どうせ俺の位置は割れている。

 開き直って、全周囲空けた場所、礼拝堂の中央に躍り出て、周囲を見回す。

 隠れ潜む場所に不自由しないが、最適なポイントなら、あそこだなと辺りをつける。

 恐らく、ここから見て奥の祭壇、から更に奥に続く通路。

 それをまるで塞ぐ、というより隠し、遮蔽物になるように、歪に二台置かれた、背の高いオルガンの背後に奴はいるのだろう。


「そこにいるんだろ?」


 問いかけと共に、リボルバータイプの拳銃を向ける。

 敵は居場所を特定されて焦ったか、そこから攻撃を飛ばしてきた。

 馬鹿だな、居場所が特定・断定できないから、不慮の角度からの攻撃を警戒して、視界の開けた場所に俺はいたんだろうか。

 敵の愚かさを内心嘲笑いながら回避、ついで高速で接近。

 道中何発か飛んできたが問題なし、オルガンを跳躍で飛び越えるようにすると、真下に標的を確認、一撃で仕留めた。


「どうだった?」


 拠点に戻って、仲間からの問いかけ。

 今回の仕事は割と注目を集めていたからな。


「変わらん、いつもとな」


「流石だね、異名どおりクールと言うか」


 異名、殺し方や遣り口によって、場合によっては広まる喧宣。


「俺はクールでもなんでもない、ただの下種な人殺しなだけだ」


 そう言って踵を返すと、背後からやっぱりクールだの、と間の抜けた声がした。

   

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