人形とおしゃべり‐小説を執筆する
「俺は小説を書くのだが、そのたびに思うのが「小説書くの面白くなさ過ぎ」である」
「ふーん、それがどうしたの?」
俺はイルミナードで、この物語小説を書いている。
まあ何所でも書けるのだが、気分転換程度の気持ちである。
「だいたい、この文字媒体の情報ってのが、根本的に脳に低刺激過ぎる。
汎用性や再現性は高いのだろうが、まあそれだけ、それ以外は全部駄目みたいな感じだ」
「そう? 私は凄く面白いと感じるわよ?」
「人生経験の浅い、馬鹿な奴なら、俺の書く情報程度でも、そりゃ楽しいのだろうよ。
だがな、俺は人生経験が深く、並大抵の刺激を刺激と感じれなくなった、
人生の高レベルプレイヤーに堪えるような、凄く面白い小説を、文字情報媒体で創作したいんだよ、ばーーか!」
人形に八つ当たり、俺は下らない事をしている自覚があった。
この真っ白なのかどうか、設定すら作ってなさそうなキャラクターは、どういう反応をするのか微妙に楽しみで、こういう話をする。
「私を規定したいの?」
「ああ、実際どうなんだ? 突っ込むとはぐらかすし、今は曖昧な状態を楽しみたいのか?」
人形は笑うみたいに、口元を押さえて隠した。
「とにかく、こんなので高次元な情報を創造できる奴ってのは、そりゃ必然的にもの凄い奴なんだろうな」
「まあ容易に想像できるわ」
「ああ、小説家は偉大である、これは絶対に間違いが無い真理・真実だろう。
俺は小説家って奴を、心の底から尊敬しているのだ、憧憬のまなざしで見ていると断言できる」
「本当に? 貴方は小説家を前にして、心の底から尊敬できるの?」
「実際に、そういう経験があった事が無いからな、知らん、たぶん高確率でできるんだろうがよ」
「そして?」
「俺だ、俺はぜんぜん小説家になれる見込みがない、なのに小説を書いている」
「なぜ?」
「なぜか?
知らん、書きたいからだ、逆切れするほどムカつくのだが、俺は無意味に小説を書いているのだ」
ちなみに、この文章自体が、没になったエッセイを活用して、語彙とか語り口調を、今考えたての情報とミックスして書く、
とにかく、独創的な文章になるテクニックを使って書いていると、一応明記しておいたりする。
「無意味?」
「まあそれを言ったら、こんな糞みたいな世界で、腐った人間として、自主的に自殺して無いのだがなぁあ」
「貴方は、すごく荒んでいるわ、擦り切れた精神をしているように見えるわ」
「ガキ、子供から見たら、俺のような奴は薄汚くてしょうがないように見えるんだろうがよ」
「ええ、なんだか、気分しだいで、私は襲われるんじゃないかっていう、身の危険を感じるくらいよ」
「別にいいじゃねえか、人形なんだから、守るべき純潔とかもねえしな」
「酷い人、私は私の身体の事を、これでも、平気な振りをしているけれども、気にしているのに」
「嘘をつけ」
「嘘じゃないわ」
微妙な沈黙、見つめ合う人形の瞳がいじらしくて、俺は目をそらしてしまった。
「とある話で、」
「ああ?なんだ藪から棒に」
「いいから聞いて、今思いついたのだけど、面白い話よ」
俺が露骨に詰まらなそうに、本心から期待などしていないのだ、人形を見ていた。
「宇宙が創生される確率は、猿が適当にタイピングして、内容のある物語に成るレベルとか言っていたわ」
「ああ、俺もだ、猿が適当にタイピングした、その話が物語になっているかどうか?」
「ええ、貴方と私の会話が、楽しいモノになるか、それは同じくらいの確率だわ」
「どういう話の展開だ、無理やり過ぎるだろう、無理やり小説ゲームかっ?」
「貴方の話の口調の方が、まったくもって意味分からないわよ?」
「いいだろが、
でだ、人間が、その検証したい気持ち程度の、物語を書いている自覚がある」
「つまりは?」
「俺は真に意味と価値を、宇宙を作り出せていないのだ」
「はあ? どういうこと?」
「俺は真理を、特異点を、絶対強度を、描きだしたいのだ。
その気持ちは、痛いほど前らに伝わっているだろう?」
「ぜんぜんよ、貴方なんて、毎日を死ぬまでの暇つぶし程度で生きて、全然建設的な事して無いじゃないの?」
「ガキの、人生のモチベーションが一定以上で異常活性化している瑞々しい精神、
ガキが、知った風な口を効くな、虫唾が走るから、子供の癖に、大人の苦労をしらず、大人の視点を語るな、殺すぞっ」
「酷い人、子供に言う勢いの台詞じゃないわよ」
「ガキが、俺は親に、こういう風に接せられて、致命傷のストレスを何百回もくらって、殺され続けてきたんだ」
「だからといって、復讐をしてもいいの?」
「駄目に決まってんだろ、だが弱い人間はする、俺は弱い奴だ、駄目な事をして、罪悪感とかを糧にする。
人間はそうする事で、貴重な劣等感・羞恥心・コンプレックス・嫉妬という感情を得て、今より高次元に生きれて、消化できる」
「うぅぅ、本当に酷い人、これほど酷い味は知らない、本当に酷い味」
「話を戻すが、つまり俺の感傷、鑑賞価値とは、俺の挑戦が失敗に終わる込みで見られて、
もしかしたら成功してるんじゃ? って検証の気持ちで見られている感じなのだろう?」
「猿の書いた物語レベルね」
「このやろう、マジでぶっ壊して、再起不能するぞ、糞人形が、人間以下のゴミ屑が」
「くだらないわ、うん。」
「一言で言って、芸人が控室に「やってるぅ~?」って見に来るくらいの気軽さで、俺は見られている自覚がある」
「ふーん、それで?」
「それが気にいらんし、くだらん、と言っているのだ」
「貴方の望みは一体ぜんたい、何なの?」
「俺は超一流の存在として、人生をガンガン、一切の合切の阻止無く、生きまくっている。
だが文字に起こすと、全然駄目だ。
どうやら、俺は小説家としての才能という才能に恵まれていないタイプの、超一流の人間らしいのだ、というわけだ」
「どうでもいいわよ。
私は、貴方ともっと面白い事を話したい、貴方の人生の苦悩になんて、なんの、大して大きな興味もないから」
「糞人形が、ぶっ壊してやろうか」
こんな風に最近は戯れている事が多くなった、今日この頃。




