表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

159/588

アトランティックのモードモール



 アトランティック帝国、中規模都市モードにて、俺とイリスは世界を俯瞰して遊んでいたのだった。 

 

「てか、お前、そんな絶妙なボケ、よくそんな連続で飛ばせるな。

 俺もさすがにここまで突っ込みするとは思わなかった。

 さすがに突っ込み疲れしてきたぞ」


「ごめんねぇ、でもそりゃそうだよね。

 事前に君と戯れる為に用意してたんだもん、これ」


「この知能犯が。

 無駄にあほらしい事に時間を費やすのは程ほどにしろ。

 十割がた俺に被害が来るんだからな」


「まあいいじゃないか!

 それにしてもちょっと時間を使いすぎたかな、そろそろ何かしないとノルマを守れなくなる」


「ノルマって何だ? お前食器洗浄機とか売ってんのか?」


「ちゃうちゃう、一日三時間というゲームプレイのノルマだよ。

 これを私は携帯ゲーム機等駆使して、ずっと守っている事に、自己のアイデンティティを感じるのだ!」


「さすがだな、そういう折れない信念で、何かを守り続けるのは嫌いじゃない」


「で? 何する? 面白いゲームある?」


「モールでゾンビ倒そうぜ、ストレス解消にはあれだろ」


「うん、いいね! 無双する為にも、私の最強装備を送ってあげよう」


「さすが廃人。

 恩にきるぜ、俺の装備じゃ大量のゾンビの犠牲者になるところだぜ」


「この時間帯だと、一番賑わってる所は、、、

 A-28だね。 そこに一番のプレイヤーレベルとAI知能機械が投入されている」


「ふむ、ならそこにするかね。じゃー行きますか!」



 そして、今のゲームから切り替える。

 回りに張っていた奴らには悪いが、もうここには用がないのだ。


 一瞬後、回りには既にもう魑魅魍魎が跋扈する、惨劇のショッピングモールの姿が露になる。



「おおぉ、既にもう盛り上がっているな! じゃーいくかぁ!」


「いいねーこの痺れる感じ、腕がなるよ♪。 ちなみに聞くけど今日は近接戦?遠距離戦?」


「そうだな、こりゃ前線の方が固い感じに見る。

 俺達はモール屋上からの狙撃でFAだ」


「おっけー!それじゃ向かおうか!」



 俺達はモール前の広場から、モール内に進入。

 走りながら装備を具現化させ。

 多少なりとも出現していたゾンビを、ながら作業でヘッドショットして、スタスタ階段を登っている最中。

 目の前に巨体な影が迫っていた、タイラントである。


 俺は武装を切り替えようとしたが。

 イリスがそれよりも速く素早く、銀光のような鋭い太刀筋で一撃のもと胴から首筋を分けた。


 爆散するポリゴンをそのまま突き抜けるかのように、ひたすら前進。

 モール屋上の扉を開けると、既にスナイパーポジションに着いている何人かのプレイヤー達がいた。


「よし、どこから始めればいいかな?」


「あそこだね、モール東南域。

 あそこがちょっと崩れてるね」


「そいさー!」



 俺はその方向を長距離ライフルで狙いを定める。

 ゲームだがリアリティーを追及した果てに。

 既に現実で銃を撃つのと変わらない、そんな技量を必要とする事になっている。


 もともとは、そういうゲームコンセプトではないのだが。

 このリアル100%の再現モード、いわゆるアトランティックモードでは、それがない事には話しにならない。

 なので一部の人間からはルナティックモードともいわれる。


 俺は直感と経験にしたがい。

 今まさに窮地に伏していた味方に迫る、ゾンビ数十体を連続で射抜く。

 無線から簡易な謝辞が投げかけられるが、神経を向けている暇もない。

 そのまま戦域におけるダメージを最小化するための、援護作業を延々続ける。


 隣を見ると、というか。

 今戦力の中心が崩されかかっているので、同じ場所を援護しているのだが。

 やはりこいつは格が違う。

 スナイパーの腕だけでなく、全ての能力が満遍なく高い感じだ。

 俺が数体倒す間に、ほとんどセミオートに近い感じでライフルを連射。

 敵をすぐさま殲滅し、どんどん戦況を回復させていく。



「いやはや、お前は凄いな。

 どんだけプレイしたら其処までに至れるんだ?」


「はっは!こんなの幼少の頃からやってれば、むしろ当然だなぁ!!」


 そのままテンションを上げて、目に見えて撃退の速度を上げていく。

 目に見えて集中力上昇中だ。

 このトランスモードになったら、もうあまり話しかけてあげない方がいいだろ。

 己に埋没させてあげよう。


 俺はそろそろこの単調でしかない狙撃に飽きてきた。

 彼女のような戦場全体を縦横無尽に援護し。

 まさに自らの存在感が、戦場全体に行渡るようなスタイルでもないので。

 やはり多少なりとも飽きがきてしまうのだ。


 俺は彼女に断りを入れることもなく、前線に赴くことにした。

 近接戦闘なら俺もそれなりなのだ。

 さっきの逆の手順でモール広場に向かう。

 敵に迎撃されるも、緋色の長刀。

 自らの身長に比するほどの長さだ、を具現化させ、目の前の大群を薙ぎ払うように一掃する。

 すると無線から声。



「お、ついに前線に向かったね」


「ああ、さすがに後方援護に飽きてきたからなぁ!」


「それじゃ、私も援護するから、戦場全体を威圧しているボス級をどうにかしてほしい」


「了解したぜ!よし、あっちの方角だな。

 なら乗り物に乗ったほうがいいな!」



 俺はモール横に設置してあった、バギーに乗り込むと、すぐにエンジンを掛けスタートされる。


 無免だが、ゲームの中でそれを制する法はない。

 俺は無法の無頼野郎になったつもりで、目の前のゾンビを薙ぎ払いながら目的地に向かう。


 さっきイリスが援護といったが、確かに彼女の神業級の援護があれば。

 ボス周辺の中ボス級を一掃し、後方からの攻撃だけでは倒しがたい大ボスを狩れるだろう。

 俺の高い近接格闘能力と、クリスの射撃能力。

 双方が合わさって初めて為せる戦術選択・行動なのだ。


 バギーを走らせる事、三十秒ほど。

 簡単に敵が密集しているポイントに到達する。

 戦場としてはそれほど広くはないのだ。

 全方位から敵が迫っている為、迎え撃つ方は広範囲の敵を相手にしている気になっていて、かなり忘れがちだがな。



「それじゃーいくぜー援護頼む!!」


「まかせてくれ!大物だけを倒す気で行ってくれ!」



 俺は目の前に迫る、中級タイラントを全て。

 一撃で急所を両断することで、爆散させながら突き進む。

 突然の俺の乱入で混乱した敵集団が、俺への攻撃を集中し始める。

 しかし後方からのクリスの援護で、袋叩きに合いかけた俺は、なんとか複数の爪から逃れる。


 そして目の前に現れた本命。

 大級のタイラントとタナトスの二人組み。

 どちらも多少の知能があり、特に戦闘に対する知能は、場合によっては人間より複雑な思考をする。

 という設定なので。

 ハッキリ言うとプレイヤーキャラと近接戦闘をする、それとさほど変わりがない。


 俺は二対一という多少不利な状況ながら、敵に突撃する。

 普通なら必中の必殺の斬撃を、敵は人間ならざる機動でよけ、俺に刃を向けてくる。

 それを紙一重の最小の動きで避けながら。

 俺は刀を中段に構えて、敵の接近に合わせた形で3段突きを繰り出す。

 敵は一撃目を避け、二撃目もギリギリかわす。

 そして本命の三撃目を胴に差し込む瞬間、もう一体の放置していれば致命的な攻撃に阻まれる。



 一度体制を立て直し始めた敵集団。

 さすがにこれ以上時間をかければ、ここに戦力を極端に集中される形になる。

 そうすれば戦場全体的に見れば嬉しいことなのだが。

 俺個人にとっては、俺自身を囮にした自爆作戦にしかならない。

 それはちょっと詰まらないだろ。俺は心新たに、最短の時間で打倒する為の近接戦闘戦術を思考する。


 この大ボス二体は、比較的攻撃優勢の敵だ。

 こちらが特攻すれば、高い形で致命傷を与え得れる。

 俺自身はどちらも極限までこなせる、高次元のオールランダーなので、攻守ともに常に優勢に立てるのだが。

 いかんせん大ボス級を短時間で倒すには、完全なる優勢により叩き潰す必要が出てくる。

 この二体が相互にお互いを守りあう状況。それを為すのは至難だ。

 さてどうしたもんかね。



「おーいそろそろ倒してくれないと援護が間に合わなくなるかもよー!!」


「わかっているぅ!一気に攻めるぜ!!」


 自ら間合いを詰め、またも激突する。

 敵の爪と俺の刀が衝突する、その衝撃で後ろに吹き飛ばされるが。

 絶妙な体裁きで全く体勢を崩さず、衝撃も殺し後方に着地。

 ジリ貧だなこれは。


 俺は武器をもう一つ具現化する、つまり二刀流だ。

 防御力は極端に下がるし、まっとうな攻撃に反映させる技量も凄まじく上がるが。

 もう状況を打開する方法は、この装備スタイルで特攻するのみだ。


 敵が肉薄する、左右から包囲するように俺を押し潰すつもりだろ意図。

 俺はその左右から迫る敵の中央を突破する形で突撃。

 達人同士のギリギリの交差のような一瞬。

 勝敗は。 どうやら俺に上がったようだ。

 あとすこし攻撃速度と移動速度が間に合わなければ、俺が後方で爆散した側だったろう。



「おお!!やってくれたね!!さすがだぁイツキ!!

 そのまま混乱する敵中核を引っ掻き回し、一気に勝ちに行くよ! 最短クリアタイムを目指すのだぁ!!」


「おお!!あとは無双するだけで済むな!楽な仕事だぜ!!」



 俺はもう手遅れ気味に戦力を分割した末スエ迫る。

 その本来は大ボス援護であったはず中級タイラント十体を、同時に相手にする選択を行なった。

 無謀だろ? 

 たった一人の剣士に、十体ものそれなりに頭の回る敵。

 連携を取られたらひとたまりもない。 だが今回は違うね。


 十体と接近する。

 先頭の突出した敵を、これまた一撃で急所を両断。

 残り九体が第二陣として俺を囲むように迫る。

 だがその瞬間、後方からの援護、敵は注意をそらされ、さらに囲みの輪を乱した。

 俺はそこから難なく脱出。 

 脱出の瞬間、ついでに一体のタイラントを側面から掻っ捌く。


 このような戦法で、効率よく敵を撃退していく。

 戦場全体も残りは見るべきものもない。

 俺は回復と休憩も兼ねて、後方の、さっきのモール屋上に戻ることにした。



「おっす!!かなりの大金星だな!

 調子はどうだ?あとどれくらいで片がつく?」


「そうだね、この調子だとあと10分で終わるね。

 しかし君の近接格闘能力も凄かったね!!

 まさかあれだけの人工知能の傑作的、さらに敵は人間離れした反則な動きしてたのに!

 それも何事にも解さず、二体同時に倒してくるとはね!!」


「いやいやかなり、本当に本当のギリギリのギリギリで競り勝ったようなモンだよ」


「それでも凄いよ!あとで二人で情熱的にやりあいたい気分だよ!」


「まあお前も大概だからな、いいぜ後で相手してやるぜぇ!」


「よーっし!!ならば最後の総仕上げといきますかぁ!」



 そんな調子で、調子にのったこちら側は。

 敵の緩んだ攻勢から一気に反転。

 守りを置き捨てて、熱烈な突撃で敵を打ち崩す。

 前線を崩壊させられ、包囲の形を失い、確固撃破に追いやられた敵はもろい。

 こちらもそれなりに有力なプレイヤー達に支援されているので、何事もなく、この回は完勝という形で幕を閉じた。そのあと集会場にて。



「いやはや、やっぱり面白かったねー」 


「なに、これからもっと面白いことやるんだろ? さあ掛かって来いよ!!」


「はっは!!いい意気だね!!わたしは君が泣くまで殴るのをやめないよぉ!!」


「がっはぁは!そりゃこっちの台詞だ!泣いても容赦しないぜ!!」



 そんな形で夜中ずっとフィーバーしてたものだから。

 次の日。

「ちょっとぉ!!お兄ちゃん!! もう昼の11時だよーそろそろ起きないとーって?え?まだまだ全然眠い?

 はぁーしかたないなぁ、ほんと昨日お兄ちゃん深夜過ぎるまで何してたんだか~!

 とりあえず!お昼ご飯には絶対に起きなきゃ駄目だよ!お兄ちゃん??!」

 と言われるのもしかたないのだろう、まあ楽しかったから良しとする、やはりアトランティックモードは神だな神ゲーム。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ