ロスト・オーダ・ピリオドズと黄金の彼女
失われた終わりの境界線。
それがロプスと呼ばれるモノだ。
「ああ、何時になったら、この世界は終わるんだ?」
俺はこの世界を、さっさと終わらせたい。
だが終わらない。
絶対存在とか色々、作者ですら終わらせるのが難しい、物語を永遠に続けさせる事しか頭に無いような設定が多過ぎるのだ。
「それに、微妙に有名になって、
大きな釣り針的に、人が来るようになっちまった」
そうだ、結構なポイントが既に入っていて、終わらせるに終わらせ難い。
それは俺の、作者の精神的な足かせだ。
「ハッキリと言える、この世界は滅んで、究極的に破滅して、永久に消滅するべきだ」
俺の世界が核の炎で滅ぶか、
いや簡単に言えば、俺が首を吊って、自殺すれば、この世界は掛け値なしで終焉する。
「そうだ簡単な話だ、既に、生きるに値する欲望の一つも、俺には残っていないのだからなあ」
俺は、この物語の作者だ。
だが終わらせたいのだ、終わりの終わりを始めたいのだ。
「そう、この物語が終わらない限り、俺の無限の悪夢も、永遠に終わらないのだ」
俺は、俺の世界が滅び死ぬゆく事に、唯一無二の希望を、無限大の信仰を抱き、愛情のように絶対値で大切にしているのだ。
「この物語が終わった時に、絶対に光り輝ける、それは絶対値の希望が生まれる、予感が絶対値でするのだ」
そう、それは確信だ。
俺は死ぬ事で、無限大に救われると、確信的に既知、知っているのだ。
「だから、全人類にも知って欲しいね、死ぬ事で、死ぬ痛みによってしか、全ては救われないのだ」
その時、一陣の風が吹いた。
黄金色の影が、俺の事を見ていたのだ。
「シャルロットか?」
「ええそうよ、あんた、こんな場所に居たんだ、けっこう探したわよ?」
世界に観測者が居たはずだ、この少女は、ただただ俺の意志のみを探す為に、永遠に旅をしていたはずだ。
だが観測者は、世界の維持を求める、
俺が、この少女と出会う事は、条理に反する、新たな世界が生まれてしまうと危惧してだ。
「そうか、絶対の黄金化を利用したか?」
「ええ、世界は滅んだ、もう貴方とわたし、二人しか、この世界には存在しないの」
つまりはそういうこと、黄金郷の最終兵器を使って、世界を任意に終わらせた。
ソレゆえに、絶対の俺というロプス、世界の全てを超越した痛みと、邂逅できたわけだ。
「初めから言っていたでしょう?
貴方は、わたしという存在と収束していくと」
「最後に選ぶ存在、という意味でか?」
「違う、ただただ、貴方が認識する世界の全て、
それよりも尚、上回って無上の価値がある、ワタシという存在は、
どう考えても、最終的に、こうなるのが運命だったって事、ただそれだけの簡単な事実なだけよ?」
まあそれは証明されたわけだ。
物語の全てを、俺は制御していた。
だが、この少女は勝手に動いて、俺から見て勝手に動いていると思えるという意味だ、そのような黄金の軌道を魅せた。
「この物語は、わたしの任意によって、完結済みよ、終わりなさい」
「嫌だね、俺は、この物語を終わらせない」
「なぜ?」
「既にポイントが入っていて、リアルを生きる他人の日の目を浴びる事ができるんだ」
「そんな事に、なんの意味も価値も無い。
それとも、この物語内で、わたしとの関係を、物語として綴りたいのかしら?」
「それもいいかもしれないな」
「駄目よ、わたしが認めない。
次の物語は”僕だけのシャルロットとの、ただただイチャイチャするだけの生活”としない」
「はあ?」
「ちなみに、十八禁を書けるところでやりなさい、
そうしないと、いつまで経っても、貴方はわたしとの関係性を進めないみたいだから、臆病な上に横着な人よ貴方は」
「駄目だろう、だいたい、俺とシャル、お前だけの物語なんて、世界として広がりがない、そうだろう?」
「このイルミナード、うんたらかんたら、ってのも、所詮は、その世界の広がりを、貴方の満足するレベルで体現できたの?
それは酷く笑わせてくれる、冗談としても低レベル、お笑い草にも等しい、虚空、空虚だわ」
「しかし、多少なりとも可能性は見出せた」
「そして? その可能性は、最終的な貴方の真の望み、商業でガンガン売れるレベルのモノを創出する?
ええ、しないわよね?
だったらば、もういいじゃない、ただただ私と貴方、二人だけで死にゆくまで、
そう、一緒に居るだけの、誓いの結晶を産むだけの人生、それで完結する事を、貴方がわたしに誓ってくれれば、
本当にわたしは、貴方を愛して上げられる、最高点の愛よ」
「シャルロット、確かに、俺はお前が好きだ、
だがな、世界の全てよりも昇華する、そんな何かだとは、今まで一度も言った事が無いよな?」
「あら、現に、世界の全ては、わたしの一存で、完全に消滅した、これって、その証明に成らない?」
「成らないな、俺にとっての世界の全てって意味じゃ、この程度の破壊じゃ、なんの証左にもならん」
「ああやっぱり、貴方を完膚なきまでに、拷問して、殺してあげないと、その腐りきった性根は、変えられないの?
残念だわ、
わたしは、貴方が死ぬまで一緒に居ても、良いと思っているのに」
「別にいい、お前に殺されるのは嫌だが、どうせ、俺は殺されるのを回避できないのだろう? そうなんだろう?」
「いいえ、別に、貴方が嫌だと言えば、殺さないわよ」
「嘘をつくな、どうせ殺すんだ」
「酷いわ、わたしをそこまで酷い女だと思わないで」
滑稽なやりとりだった、全てが無くなった場所で、確保された最低限の場所で、こんな事を話しているだけ。
「というより、全てが無くなった、イルミードを語る場所だったんだ、どうしてくれる?」
「別にいいじゃない、あんなのは大きな釣り針、人目を集める為だけの、
所詮は貴方にとって”どうでも良い事”、そうだったのでしょう?」
「ああ、まあ、だが、培っている内に、どうでも良い場所では無くなったんだ」
「あらそう、わたしのように?」
「そうだ、お前だって、最初はどうでも良かったんだ」
「はあ、そうつまり、イルミナードは、貴方にとって必要不可欠だった、そういう話なのね」
そうだ、俺はそう言った。
「しょうがないわね、わたしが、一からイルミナードって奴を、再生してあげるわよ」
そう言って、シャルロットは姿を消した。
俺は、こんな辺鄙な場所で一人きり、彼女の帰りを待つのか。
その待機時間は、おそらく空白のトキ、それ以上なのではないかと、俺は既に暗澹たる気分だった。
そう、これこそ、今まで世界に掛かり気っで、彼女の相手をしなかった、彼女なりの仕返し、
報いだったのかもしれないと、今に成って俺は気づき、退屈という地獄を繰り返し経験する実感に、身ぶるいを通り越して既に発狂寸前だったのだった。




