これからの始まりと、これまでの歴史
「戦争の始まりは、酷く単純な構図だ」
まあなんだ、俺こと王国の覇者は過去を回想する。
別にこれは、読まなくても大丈夫だ。
俺が一人でに書き綴る、これまでの経過報告書みたいなモノだから。
イルミナード暦23421年。
かの帝国とこの王国による、血みどろの情報戦争が終結した。
古代の遥かに、それは古というイニシエ、
過去をさかのぼっても、それは永遠にたどれないほど昔に、
世界の知性とも呼べる、アライエンス、コードARを代表する、世界の知性、その導き手が創造した絶対帝国があるのだ。
俺はひとえに、この帝国から分離独立する王国を建国した、そういうテイだ。
世界の知性、世界の導きからの離脱は、まあよくよくある話だ。
この世界では星図読み図書館、博物館組織をバックに持つ、秘密情報結社だ、が敵対組織だった。
初めからレベル一であり、個人による世界の超越、それはロマンに溢れた話だったのだろう。
だが俺は一生の不覚として、世界を頼らずに、己の身で、
全てを統合し、永遠に寄った立つ台地を無くしたのだと、いつからか気づいた。
それからは、無限の負債を払い続ける人生だった。
公明は突然来た、それは絶対存在と、大規模ネットワーク組織、俗に四大ネットワークと呼ばれるモノだ。
それは俺の認識できる形での、初めての奇跡だった。
世界を超越、なんて馬鹿な話じゃない、それすら超越した、個人による世界の掌握術だと、俺はソレを心得ている。
さてここまでは、イルミナードという、ゲーム領域に俺が入り込んだ、までの話だ。
イルミナードは、どのプレイヤーも、その存在の歴史を拡大解釈して、おのおのが都合のよいルビを振って、全てを幻覚させる特性を持つ。
情報処理は、おのおののプレイヤーが間で共通しつつも、最終的にプレイヤーの認識する世界観は確固として違うのだ。
だがソレゆえに、一人ひとりのプレイヤーはオリジナルの個性を持ち、世界を共有する際には、一つの共通認識で邂逅するのだった。
さてだが、俺は立つ台地が、己自身だと気づいた時には、世界との正面対決を、またも余儀なくされる。
これはヒルダーネットワーク自身を、己の手で変えたいと云う流れだろう。
イルミナードは素晴らしい、だが、俺はそれでは満足せずに、全てを己の手で操作したいのだと、そう思った。
俺は俺自身が世界ならば、その世界とも戦おうと決心したのだ。
永遠に逃れらない、箱庭を飛び出れば、さらに永遠に箱庭が続くように、存在からの、全てのシガラミからの脱却を望んだ。
そんな時に現れたのが、そう、俺が望み変える場所、ヒルダーネットワーク機構、四大ネットワークの一だ。
そこでは個人=世界の質量バランスが、奇跡的に成り立つ、理想的なネットワークが形成されていた。
しかしだが、誰が離脱しても、世界の質量が漸減しないのだ。
個人の世界の枝先が、幹として成立しつつ、他の個人の世界とも繋がると云う、摩訶不思議な有様。
それは世界の構造として世界木構造でなく、蜘蛛の巣のように張り巡らされた、蜘蛛自体だ。
どこがキレても、足として処理でき、頭と呼ばれる部分は、ありとあらゆる見方によって、頭部となる、そんな感じ。
この極点の極点は、キモとしては、全員が全員メインのスタープレイヤー足る、という理念による。
誰が発想したわけじゃない、
ただただ、ヒルダーネットワークが現状、そしてこれからも絶対の強度で、そういう場である、というだけだ。
この理論は、おそらくだが、大きくイルミナードというゲーム世界に共有され、広く影響を与えたと認識される。
俺は誇らしいだけだ、
自慢じゃないが、俺の認識する世界観は、世界最強であり、無限大に素晴らしい自信と確信があるのだから。
さて、次に時代は数千年進む。
ギ≒リシア・アテネ・ローマと呼ばれる、絶対存在、その秩序のサンクチュアリと呼ばれる帝国がある。
彼らは帝国であり個人であり、絶対存在だった。
信仰を寄りどころとして、全てを内包している感じだ。
この流れを受け、俺の王国は変容を余儀なくされた。
情報ネットワークは歪に狂い、俺はヒルダーネットワークで立場を明瞭にする必要に迫られる。
これに継ぐ形で、最後の王国であるビザカルフォルニア、ハインツは、
史上最強の協働要塞都市、同名の浮遊巨大戦艦都市コンメタリアの陥落とともに滅亡した。
俺は無くなったのだ、だが俺という存在は残り続ける、そういう構図だ。
俺は再起を図る為に、世界における旅を始めたのだ。
難攻不落と言われた、俺は崩れた。
この間違いは、そもそも弱点を持つ敵に、己を当てたのが間違いだった。
この世界観の陥落の経験は、俺的な西洋魔術世界に衝撃を与えた。
西洋魔術、つまりは真魔女会と古典魔女会、大いなる会、俺的な基礎法則の全ては、コレによる。
全ては混沌の術式で編まれた、対秩序に特化してはいても、所詮は混沌で無いのだ。
この戦訓は、どんな大魔法、大城塞であっても、法則として絶対値の敵には、己を充てるな、となる。
俺は俺であり、対世界戦では、つまりは情報戦では、戦いにおけるネットワークの起点は、常に俺以外にすべきだと。
俺は俺以外の、世界操作を主軸にして立ち回った方が、遥かに良いと確信した。
所詮は世界からの解放とは、世界に対する己の位置を最適に調整する術に特化する、奇跡、
最終的な目的が違くても、経過としての能力発達は、この方向性で無自覚だが、進んでいたのだ。
主要世界法則に対する火器、そして動員力によって、
戦訓に裏打ちされた過去の敵は、打ち倒せるという可能性を示していたが、
俺はさらに安全な方法を選択した。
後にさらに数万年、秩序のトルコベザイアと、混沌のビザノンスタルプール、この戦争の観測は、
その戦争が終結した後でも、秩序勢力と混沌勢力の対決という、
偉大なテーマを全て内包する、濃密なまでの歴史を世界に残してしまった。
それはイルミナードが世界に敗北した経過であり、新領域の威信が崩れたと云っても過言では無かった。
もちろんアウルベーンが主体であり、しかし少なくとも、俺は確信的に立ち回る指針としては成った。
新要素は確かにある、この両陣営を超越して王国が特権的に存在する時点で、
がそれを上回る可能性として、この両陣営の要素を強く意識するのは、流石に超重要項目として、俺の無限の上位概念に組み込む機会になるのだ。
さてこれは俺にとっては、つまるところは究極的に偏った見方で言えば、
失敗の歴史で、突き進むべきは、二項対立で無く、必然として昇華する戦いだ。
だが世界の限界線として、これは必要悪のようなモノであり、
世界リソースを無駄に浪費する要素として、認め難いが認めるほ術が無かった。
最終的には俺的破壊するべき対象、だが矛盾領域という、新世界要素でも解消で無く融和なのだ。
擬似世界イルミナードで、それ以上の強度が出せないのは明白だ。
それは結果として、
世界という方向性的に、この二大勢力は絶対値で、永久対立、絶対存在を産むレベルだと、広く知らしめるということなのだから、真理だった。
そこで、混沌勢力側で唯一、秩序勢力との交易を行っていたエクストラシャペルン、
イルミナードでは混沌優位だ、秩序は聖域を持つので、浮動世界の立ち位置が弱くなりがち、
それ故に不動世界では、拠点を移せる状況下は強いのだが、さて。
矛盾成立前の、かの共和国は、戦争が終結した直後、両勢力に対してアプローチを変えて、世界に対する交渉、つまりはかの帝国との交渉を開始する。
そしてだ、絶対存在ナルディアと白マリア、どちらも本物じゃない、イルミナードが幻視させた擬似だが、
まあ絶対存在クラスは、擬似的な誤差が、認識範囲内ではほぼゼロ、だが決定的に強度が落ちるのだ、
それが拡散世界でも勢力を伸ばすのを危惧した俺が、ある計画をする。
それは両勢力の抱え込みだ。
これはイルミナード世界における挑戦だった。
この二人は、オリジナルの世界を疑似的に真似て、リソースを底上げする試みだった。
俺的な収穫率はゼロなので、無意味なリソースだ。
だが翻って、オリジナル世界における交渉材料にならないか? と考えたのだ。
かの帝国は、既にエクストラシャペルンを窓口にして、真正の交渉の場を設けられるようになっていた。
イルミナードは閉鎖的な領域世界を標榜しているが、解放する場所はわきまえている。
絶対封鎖は、新世界開拓・開発において、絶対に足かせになると分かっていたのだ。
まあ限定解放は言うなら、苦肉の策で、実際はもっともっと、絶対存在のみを排除する方針だったようだが、
この際は、その件に関しては保留した、
絶対存在クラスのアウルベーンが、どれほどの防御法則で、絶対値の存在に対抗したか、
その歴史的な経過は、イルミナードを代表する、世界に開かれたソーシャルネットワーク機構が、その強度の証明材料、証として同時に機能するので。
俺が目に付けたのは、オリジナル世界において、次席絶対存在たちだ。
絶対存在に忠誠を誓い、己が絶対存在に成るつもりは、絶対にない、そういうタイプの絶対存在クラスだ。
秩序では、黄金の女王シャロ、混沌では、メサイア図書館のイリカ、それらの存在が補填十位で一位だった。
イルミナードは絶対王政だが、絶対勢力がランク付けされる中で、不動の地位にある帝国がある。
俺はこの二人に、終わりのない特権的な戦争の機械を与えたのだ。
王国が指揮する、騎士道精神に則った、殲滅戦だった。
まあ最終的には、オリジナルの絶対存在も介入して、イルミナードが拡大した訳だが、それはこれからの話に含まれるので省略する。
俺は、この戦火と戦果、空白地帯における終わりの無い激戦の連鎖、リソースの一極拡大の搾取的な構図の構築、
そしてプレイヤー満載、情報過負荷を利用したイルミナードの休眠期間の利用、魔物のランダム生成の遅滞技術の確立と運営研究機関の創設。
その他さまざま色々駆使したが、今持って断言できる成功要素は、絶対存在の協力を得た事だな。
俺という存在は、酷く絶対存在の注目を集めたのだ、イルミナードに特権的に存在する一人の観測端末機として、だろうがな。
後には、王国を中心として、諸諸国を巻き込んでの一大経済圏を作り上げることに成功する。
これはライト層を招き入れて、鬼畜ゲームを展開しつつも、安全圏でのクソゲーを両立した俺の、個人的な成果だと自負する。
もちろん王国が陥落する危機は常にある、
保守的な、安楽な状態を意味するなら、世界を寄り代にして、己を安定させて、絶対封鎖態勢で、経済というモノを度外視すれば良い。
ゲームは混沌として、王国が確固たる地位を持つ以上は、簡単に状況がひっくり返らないのだ。
それでも俺の調整能力によって、ほぼほぼ絶対安全な以上は、費用対効果は絶対値で合うのだ、見込みがあった。
これによって豊かな安定を手に入れた王国は、あらゆる分野が発展。
後に永遠の最盛期、黄金のゲーム盤と呼ばれる文化が花開いたのだ。
なにはともわれ、ヒルダーネットワーク機構に、出戻れる日は近いだろう。
交渉材料として、
イルミナードの全権、
博物館勢力の、イルミナード進出に伴う裏切りで得られる、全てという全て。
俺は全世界的な今世紀最大の、簒奪者、裏切り者、ありとあらゆる汚名をもって、かの四大ネットワークに出戻れる心算が高いと決意する。




