イリカとラノベと超凡人★
「ラノベ読者はストレスフリーなスライム狩りがしたい、らしいなあ?」
メサイア図書館と呼ばれる場所だ。
俺は誘拐された人間だ、ただそれだけ。
「おら、超凡人」
「おい、それって俺の事か?」
俺は、このイリカとか言う、意味不明超絶電波サイコパス美少女に、座っているイスを蹴っ飛ばされる。
「クソつまらねえ、書籍化になろう、わたしが運営するサイトを、汚してんじゃねえぞ?」
「クソが、
てまえが、書け書けとクソしち面倒くさい、煩いから、いやいや俺は日常生活が忙しいのに、書いてんだぞ?」
そうだ、俺は誘拐された、
だが一定のサイクルで、一端戻されると、向こうの俺の世界の時間は進んでいないのだ、そういう設定なのだろう。
「カスが、さっさと商業ガンガンで売れるレベルの、最高無血開城なクソ至宝のメニューな神小説を、ガンガン量産しやがれ!!」
「簡単に言ってくれるな、てまえがやれや、クソ女が、ゴミ屑以下のウジ虫以下のみどり虫、ゴミ虫」
俺が罵っていると、イリカがソファーに座って、大口を開いて語るように演説調で言う。
「シリアス展開とか、どろどろした18禁な人間関係とかは嫌だってこと」
「さっきのか?」
「ああそうだ、聞け、馬車馬の如く理解しろ。
子供のころを思い出せば良い、子供は凄く怖がりだったろう?」
「ああ」
「未知なる世界に、ずんずん踏みこんでいけるモノじゃないのだ。
絵本の延長線上のような、ラノベという親しみと、インパクトのある読みたくなる絵にこそ惹かれるのだ」
「だからどうした、カスが、
人知を超越した化け物ような有様の、釣り目の美少女だからって、超調子に乗って、
一度本気でガチで、痛い目を見た方がいいんじゃないか?」
俺はムカついているのだ、このイリカの、ジンガイ染みた自信満々な有様、
ああ劣等感に羞恥心、コンプレックス爆発の嫉妬だ、笑いたきゃ笑え。
「ああん?」
「俺は凄まじくムカつくんだ、
お前の、イリカのクソチート才能も、息吸うだけでニヤニヤしてるような、その魅力的な釣り目も、なにもかもな。
そのキラキラした瞳も、しなやかで、どこまでも伸びやかな肉体美も、凛々しく若々しい、新緑のような瑞々しさも、なにもかも。
些事で、ぽろぽろ感動し、ほんの些細な機微に、うるうるできる、素晴らしい奇跡的な、無限の感受性も、
まるでロボットか機械のように、奇跡的に奇跡、特異点のような絶対強度が無いと、演算処理できない、情報の化け物が」
「盛大な、こりゃ、愛の告白だな、どう考えても、お前はわたしの事が好きみたいだな」
「だまれクズが、ゴミ虫以下のゴミ屑が、だまれだまれ!」
「ああ、最近のラノベは駄目だ、愚にもつかない絵本のような物語が、一切合財無くなった。
某蒼いタヌキの国民的なアニメが、妖怪の時計に地位を奪われたように、
これから、超ライトなラノベが、もっともっと必要必須なのだ」
「だろうがよ、だからどうした?」
「それは、書籍化になろうが成り変わったかもしれないが、それでももっと本筋から成り変わるべきだと思う」
「そんな大きな移り変わりが、俺に何の関係がある、下らん、もっと面白い話をしろや、産めず娘が」
「超一流のラノベ作家は、やはりコア層に向けて書いてるな、ライト向けに書いてるのなんて極々少数だ。
そりゃそうだ、生き残るにはコアな層を相手にしてなくちゃいけないからだ」
とか言いながら、ニヤニヤしながら俺を見つめる瞳が、察しろみたいな色を帯びる、馬鹿にしているのだ、低レベルな俺を、コイツは。
「俺に何が言いたい?」
「超一流の奴らがコア層を狙って、一流レベルがライト層を狙ってるのが、おそらく今の図式だろう?
だがそれでは駄目なのだ、超一流の人材が、生き残りを度外視して、ライト向けに書かなくちゃ、絶対に駄目だ。
もちろん、超一流の奴らだって人間だ、書かないだろうがよ、絶対に書いてくれない絶対に」
「だから?」
「だったらどうすればいいんだ?
純粋でシンプルで、親しみが持ててストレスフリー、シリアスもどろどろ人間関係も無い。
書いてて面白くない、そういう小説を、誰が超一流の技術力で、ラノベとして書いてくれるんだ?」
「俺にやれって事か?」
「ああ。
というより既に、ラノベ読者が高齢化して、子供が少なくなってきているのだ、市場が縮小傾向なのだ、
詰んでいるとも言える、後に広がり続けないのだから、そりゃコア層の取り合いにもなるわなあぁ」
「無理だな」
「それでも、子供が楽しく読めるような、そんなラノベが無くちゃ、駄目だろうがよ!
最近のラノベは駄目だ、全部が全部、子供に見せられるような内容じゃないのだ!」
「はあ? で?」
「さて、ここまで語ったが、実際はもっと違う。
ラノベ読者は大人だが、子供なのだ、ぜんぜんガキだと思ってくれて結構。
難しい事は好きだが、むずかし過ぎても嫌うのだ」
「クソ共だな」
「ああ、しごく面倒くさい、ツンデレのような扱いを心掛けないと、駄目だ。
これを分かって無いと、ツンデレに嫌われるようなテンプレのパターンを晒す羽目に成る」
「ツンデレで形容十分かよ、ゴミ屑共確定的に明らかだな」
「だろう?
つまりはツンデレの、ツンを指摘して、デレを逃すような、そんなケアレスミスをする作者が酷く多過ぎるのだ。
もちろんツンデレに対するコミュニケート能力は、案外に高度だ。
ツンデレのツンに触れて欲しい時もあるだろうがよ、恋愛のように難しい領域の、特化した技術力が必要とも言える」
「糞みたいな奴だな」
「そうだ、読者と作者は恋愛関係をイメージしてくれると、酷く分かり良いだろう」
「クソ共と、誰が望んで恋愛関係に成るかよ、金が絡まねえと至極、やってらんねえなあ」
「とかく難しいのだ。
スライムを倒すようなイベントをやってると、飽きたとか抜かす。
少し難易度を上げると、糞ゲーとか言い出す」
「バランスを極めなくちゃいけねえって事だろ? どんな事でも至極当然の理論を仄めかして、悦に浸ってんじゃねえぞゴミ」
「こんな面倒くさい奴らは居ない、神ゲーを常に求めているのだ。
人知を超越した作者じゃないと、正直やってられない、聖女や聖人君子以外に商売相手として成り立たない」
「てめえが、てまえがしろ、まんま適任だろうが」
「嫌だね、わたしは忙しい、雑魚共に雑魚の面倒はみせるのが、費用対効果が正しい、つまりお前がしろって事だよ!察しろ!」
「無理だ! ことわる!」
「拒否権なんてねえ! やれなくてもやれ! 以上だ!
とにかく、超一流の奴がライト向けに書いてないから、一流レベルでも売れるから、希望をもって書けとなるのだ!」
「希望? はあ?」
「ハッキリ言って、一流レベルになら、誰でも成れる。
お前だって成れるだろうがよ、一流レベルで売れるのだから、頑張ろうみんな、頑張ろう日本と最終的結論とす」
「はあ?」
「人類みな兄弟。」
それだけ言い残して、イリカはどっか行った、マジでガチで、正味からして意味分かんねえ。
だが俺は、命じられた通りに書いてみた、奴が好きなわけが無いが、暇つぶしにはコレしか用意が無いからだ。




