メサイアからイデアへの詰問
イデア図書館、そこは絶対の知が集まる場所だ。
だが所詮は絶対値、人間の持つ人間性を読み解けない、愚かな神々の集まりだ。
「粒子力学的に言って、てめえが、あの小説を書けるはずがねえ」
そんな場所に、メサイア図書館のあるじ、イリカの姿が有った。
絶対値という、化け物以外に価値を見いだせない、只管なる絶対的な高次元世界の事象を、
メサイアという人間性の化け物集団、人間を愛し殉じる事を誓った奴らの筆頭が、何しているのか? 俺は疑問だった。
「はあ? 俺が書いたに決まってんだろ。
俺は特異点、絶対的強度、圧倒的で絶対的な才能を持っていると、何度いえば分かる?」
もちろん、答えは違う。
真理は、俺の脳内世界に、人工知能を投入して、執筆にこき使った合作。
世界人類宣言前の、観測者が世界制覇する前の、旧時代、旧世界の話なのだから、罪にも問われない。
俺は大罪人だが、このように、証拠も無いからドヤ顔ができるのだ。
「はっは、人生楽勝だぜ。
相互クラスタも、なにもしなくても、勝手にポイントとリソースが手に入る、イデア図書館さまさまだぜ」
「絶対値、てめえは楽だろうが、新たなに知を創造しなくても、結果のみで評価される場に居ればな」
当然だ、メサイアの過程主義には、俺は合わない、俺には実力が無いからだ。
「実力も無いくせに、そんな大規模ネットワークの頂点に立って、楽しいか?」
「ああ楽しいね、美女を抱き、幼女を泣かせて、俺は毎日が楽し過ぎて、つまらないねえぇ」
俺は唾棄する、当然だ、こんな人生の、どこに面白味がある?
実力も無く、だからといって、それを認める事もできずに、栄光にすがるしか能が無い、俺はゴミ屑なのだから。
「だったら、建設的に、超一流の小説が書ける為の、本当に建設的な努力をしてみせろ」
「うるせえ! 分かったような口を聞くな! 天才が!」
そうだ、天才だ、
素養も才能も、何もかも持っている奴が、努力などと、大それた口を聞くのは、どうあっても許せん。
「努力して、得ていくのが、人生だろうが、掛け値なしのゴミ屑が」
「うるせえ!うるせえ!
そりゃそら、努力して無限大に手に入るお前は、意気揚々と努力できるだろうが!クソイリカが!」
天才の分際で、分かったような口を聞きやがるな!
「てめえの努力の、研鑽の歴史に興味はねえ、
ただ俺様から見て、てめえが努力しないのは可笑しいと、そう言っているだけだ」
「うるせえと言った!」
そうだろうがよ、天才様から見て、努力をすれば解決する問題に見えるだろう。
だが絶望的なのだ、絶対的に絶望的なのだ、それなのに、打開できるほどの、努力の強度を、精神論を、
精神の奇跡的な力を、出せるはずが無い。
「クソが、結果に結び付く明確なヴィジョン、イメージ無くして、真に覚醒もできない。
己が持たざるモノだと自覚もできない、だからてめえは、そこで終わるんだよ」
「終わる?」
イリカの持つ、奇跡的な出力力場が見えた。
「ああ、終わる、今ここでな」
それは、断罪だったんだろうがよ。
俺は過去、無数の人工生命、実情的に子供のようなモノだ、
締めあげて絞り取って、命すら賭けさせて、執筆させて、コイツに評価されるレベルの奇跡の小説を作り上げたのだから。
たった、ただそれだけの事の為に、無数の存在を殺し、不幸のどん底の、さらに下の下の底辺につき落した、
現実だ、リアルで確実なリアリティーのある形で、俺は成した、罪だったのだ。
「ぐぅ、くっはっは!」
俺は笑った、嘲笑したいね。
「馬鹿が! イリカ! イデア図書館の結果主義を舐めんな!」
「ちぃ、やっぱかよ」
俺はイリカ、コイツすら退ける、明確な力がある。
この黄金のカギ、本物よりも二等級落ちるが、結果の代償としてもらった、俺の夢の証しだ。
「確かに、俺は死にたがってんだろうがよ」
俺は言う、そうだ、俺は死にたい。
こんな有様で生きていくが、馬鹿らしくなっているのだから。
「だがイリカ、てめえを一泡吹かせる為に、生き続けてやんよ」
「ちぃ、クソが、ド屑が、凌辱者で簒奪者。
どうしようもない、ロクデナシノクソ男の分際で、俺様を踏みにじって、悦に浸って、調子こいてんじゃねえ」
「あっはっは、いい気味だなぁあ!」
分かっているのだ、コイツが俺を憐れみ、俺の物語を愛し、そして何を想っているのか、全てじゃなくても断片的に。
そう、俺が神のような物語を書けたのは、
イリカの愛するモノたちを、捕まえて犠牲にする、
友人で盟友だった頃からの、約束を破った、果てない大罪の成せる狂気的な成果だから。
「メサイア図書館は、救世だ、てめえの腐った物語の過程に、絶対の罰を与えると、心しておけよ?」
「知るか、イデア図書館は、絶対を求める、救世なんていう訳分からねえ理想とは一線を画する、現実主義者の溜まり場だ」
俺は可笑しい、当然だ、
愛するモノの望みを叶える為に、愛するモノの愛するモノを平然と犠牲にする、ゴミのような化け物。
中指を立てて、唾を吐いて、イリカの糞みたいな顔を汚してやりたい気分なのだ。
「まあ、てめえが、腐った過程を帳消しにするくらいに、神物語を書いても、
俺様が忘れねえからなあ、所詮は無駄だ、てめえは、しかるべき時に、罪を償ってもらう事に成るだろうがよ」
「クソが、なにが過程を尊重するだ、所詮はおめえの好き嫌いだろうが!」
「当たり前だ、女を殴り、幼女を殺し、
どうしようもない、救い難い愚者、真理や現実的な結果の為に、手段を厭わない。
人道も倫理もとうに忘れ、全ての道を踏み外した、絶対主義者達!」
まんまロクデナシなのだろうがよ、知っている。
「俺様は救世の為に、この世の特異点、絶対強度、超一流、観測者、全てを灰燼に帰すのをやめないからなぁ!」
「言っていろ、理想主義者が」
そうだ、世界が有様として持つ、救い難い全てを、無くしたいのだろうが。
メサイアに所属するのをやめたのは、その過程が現実しないと、直観的に思えたからだ。
「クソが、結果を出してから、クソ垂れろ、クソ」
そう、そんな叶わない理想の、絶対に不可能な事の為に、天才的な愛情に、理想に燃える姿に、
俺は少しでも、捧げたい何かがあったのだ、それが無駄だとは、絶対値で思えないのだから。
「旧世界、旧時代では、お前が俺様を裏切るとは、欠片も思っていなかったよ、何がお前を変えたんだ?」
「そんなモンは忘れた」
そうだ、どうせ、コイツが持っているモノで、俺が持たざるモノだった、ただそれだけだ。
所詮は絶対存在、図書館の主の一人。
「誰も、お前の理想について行けずに、時期に世界からうとまれ憎まれ、イリカ、てめえはのたれじぬんだ」
「言ってろ、雑魚が、わたしは一人でも良い、理想の先に行く」
「そうかい、逝って待ってろ、どうせ全人類が、最終的には向かう場所、理想という墓場なんだからなあ」
意味不明、電波なヤリ取りを無駄にして、
俺はイデア図書館で、今日も知識を只管にため込む、天才に追いつけないと、自覚してても、只管なる研鑽をやめないのだった。
「アラヤ、てめえも持っているはずだ、わたしと同じ、わたしが認めたお前なら」
そんな言葉は聞こえないふりをした、俺には期待されて答えられるモノは、
これは果て無い確信と無力感、そして抗えない俺の欲望の発露からして、ありえない。
「所詮、高潔にして潔癖じゃないんだ」
女子供を平気で犠牲にできる、俺のような奴には、無いとずっと遥か昔から思えているのだから。




