アンネリーゼ編2‐オークへのトラウマと恋愛模様
「ちゅどーーん! ハイわたしの勝ちぃーー! てええ!”!」
アンネリーゼがドヤ顔から一変、涎飛ばしながら涙目で、俺の方に逃げてくる。
まあ可哀そうだが、一度オークにアレであーされて、犯される一歩手前まで追い詰められたトラウマがヤバいのだろう。
敵を圧倒できるトキは、嗜虐心と復讐心で意気揚々だが、少しでも押されると、涙目で錯乱する愛らしい奴になってしまった。
「ふえーん、たしゅけて!たしゅけてっ! こわいよこわいよ、たくみぃいい!」
もう高校生の二年くらいの歳だろうに、幼女みたいな有様、加えてナイスバディな超絶美少女だ、俺は嬉しいだけだ。
「おいおい、安心しろよ、ちょっと敵に耐性が有っただけだろうがよ、落ち着け、もう消し炭以下になってからっ」
「ふぅうぇっ、ほんとう? もうオーク達、いない?」
「ああ、本当だ、アンネリーゼ」
頭ぽんぽんしてやり、アンネは周囲にオークが居なくなったのを悟ると、途端に居直った。
「馬鹿! 遅いわよ! わたしがトラウマで苦しんでるんだから! もっと早く処置しなさい! この無能! ボケぇえ!」
俺はアンネの美足で蹴り飛ばされて、袋叩きみたいな目に合う。
まあ耐えるがな、
この程度の我慢で、この少女の心の傷が少しでも完治に向かうならってな、俺ってすげえ一途で報われるべき色男だわ。
「でだ、そろそろ俺の事、好きに成ったか?」
ある日、俺は馬車に乗り込んで、丁重にガードされながら移動する旅路で、
いわゆる、特別移動砲台の異名を持つ魔術師少女に言った。
「はあ? ばか? 誰がアンタみたいな下男、好きになるかよ! だわ!」
美脚を組み、窓の外を憂鬱とせずに眺めるアンネが、まるで一枚の宗教画のように俺の心に、言葉と共に突き刺さった。
「意味が分からないんだが、俺は俺を褒めたいほどに、アンネに尽くしてるし、アンネが心の底から大好きなんだよ?」
「知らないわよ! そんな下らない話をしてる暇が有ったら、少しでも効率的に魔物を討伐できる方法を考えなさいよ!」
ふええーん、この通り、アンネは色恋沙汰に興味なし、俺が滅茶苦茶だいしゅきアピールをしても、一向に靡く気配が無いのだ。
「アンタさあ、勘違いしてるかもしれないけど、自分に魅力が無い事に、気づいてる?」
ある日の深夜、魔物を片づけて、野営に野宿で、焚き火を囲んでいる部隊の隅の方に位置する俺達だった。
「ふええ、はあ? 俺って魅力ないの?」
「当然よ、馬鹿じゃないの、今さら自覚的になったとしたら、とんだ馬鹿よ、可哀そう、頭の病気だったのかもね」
ファンタジー世界にありがちな、干し肉みたいなモノ、それをムシャムシャしながら、クソムカつく顔を晒す、俺の最愛の嫁的キャラ。
「ハッキリ言って、わたしって常軌を逸して、魅力的じゃない?」
「ああ、うん、まあ」
4Dポリゴンで、精密に描写され、リアルタイムで形を変える、生々しいほどの超絶に超絶な美少女なアンネだ、当然だ。
そして、戦場での壮烈にして美麗な立ち振る舞い、勇姿、おまけに俺との思い出の日々、幼いころのアンネちゃんだ、
もう駄目だ俺は、今すぐに死にたいほどにアンネが大好きだ、果てしないほどに好きだ、アンネが愛し過ぎて生きるのが辛いのが日常の全てなのだ。
「アンタさあ、釣り合うと、本気で思ってんの?
普通に言うけど、どれだけ尽くされても、どれだけ愛されても、格下の相手に、わたしは魅力を感じないから、諦めてくれない?」
「ふええん、そんなあぁっ!」
俺は涙目だ、当然だ、大好きな女の子に、こんな事を正面から言われりゃ、そりゃ涙目で、ぽろぽろする。
「うっふっふ、今のアンタ、とてもキラキラした瞳してるわね、うるうるしてるのが可愛いわぁ」
「キラキラって、涙だろうがよっ」
俺は好きな女の子に涙目みせたくないので、懸命に隠れようとするのだが、アンネが俺を抱き締めるようにして、顔を見てくる。
「ほら、初心なねんねじゃあるまいし、お姉さんに泣き顔を見せて、慰められて、頭いこいこ、されなさいよぉ」
「ふえーん、アンネが泣かせたんだろうがよ!」
そのまま、しどろもどろに、
逃げようとする俺と、そのまま捕まえ続けようとするアンネで、盛大に身体をくっ付けて、もんどりを打ちまくる俺とアンネ。
「ふえーん」「わたしの勝ちね」
最終的に、惚れた弱みか強くでれない俺は、
アンネにマウントポジションで、泣き顔を晒すのを隠す両腕を抑えつけられて、じっくりたっぷり鑑賞されてしまう。
「ほんとうに情けない男、好きな女に、こんな腫れぼったくなるほど泣いた泣き顔を晒して、
紅潮して、手に汗かいて、身体全身を震わせて、見っとも無いったらありゃしない」
「ふえーん、ふえーんっ、ひどいょぉ、もうやめてよぉっ、、」
俺は頭が可笑しくなっていた、
当然だ、こんな風に、心の底から大好きでたまらない、アンネという最愛の女性に、こんな糞みたいな有様にされているのだから。
「そうね、どうしましょうか、どうしてやりましょうか、くっくっく」
俺は失禁して、涙を滝のように流して、許しを請い続けた。
「ふわあ~~、そう、そうだわ、そろそろ飽きたし、眠りましょうか、ふわあ、本当に眠くなってきたわ~~」
俺はさんざんぱら弄ばれて、傷ついた心を抱えて安眠できなかった。
惚れた弱みか、その後も何もなく、俺とアンネの日常は、ただただ俺が一方的に尽くし貪られ続けている感じなのだった。




