至上の女王の箱庭、カダストレアの日常
ここはイルミナードの限定領域に存在する世界、ゲーム空間だ。
「私は清く正しい女王、同時に、民に反感を買い、苦しい中でも隔絶した活力を与える為に、身を呈する聖女のような女」
およよ泣き崩れるようにする、女王レイア。
「嘘をつくな、お前は上、アウルベーン中央と、イルミナードから要請を受けているだけだろうが」
そして俺は、このゲーム空間を最適に調整する為に、ある所から派遣された、
ゲームマスターKP、この世界のストーリーテラー、作者的な存在だ。
「いいえいいえ、私はこの世界を愛しています、ゆえに最小限の犠牲で、最大の幸福が実るように、滅私奉公しているのよ」
「どうだか、近衛の騎士には、全ての反乱と反逆を、強制的に沈下させている」
「当然よ、この国には一切の混乱は許されない、魔物と四面楚歌で戦う聖地なのよ」
当然だ、この世界には魔物が、それも知能が有るタイプが大勢、この超大国で一極防備を固める人類に、四六時中群がっている。
常時、国家を総動員して全力全開で闘争しているのだ、反乱や反逆は、革命の与太話でも止めねば、場がどうなるか分からんのだ。
「わたしにできるのは、祈りを捧げる聖女のように有り、魔性を匂わす悪女きどり、民の娯楽になることだけだわ」
「前提として、お前が本気を出せば、全ての魔物を葬れるだろうがよ」
近衛の全騎士も、一人で葬れるだろう、世界を隔絶した魔力を持つ、次元の魔女の称号を持つ超絶的な魔女だと、俺は知っている。
「それは無理よ、そんな事をすれば、この世界自体が、存続を許されない、そういう枠組みを、貴方は知らない訳じゃない、そうでしょう?」
もちろん知っている、知っているが、忸怩たる思いをぬぐえないのは、人のサガなんだろうがよ。
「ツイッターに、パンが無ければケーキを食べれば良いのよ、ってやってやったわ」
「やめろ、民を無暗に混乱させるな」
「嫌よ、この至上の女王に対する、懐疑のココロ、
そして、この王国の最大にして唯一無二の、小説家である、わたしの、作者としての役割的には、こんな感じの振る舞いは欠かせないわ」
巷での評判は、清楚にして淫乱、聖女にして悪女、意味不明な電波野郎、とかく、一点に定まらない姿を曖昧にする眼前の人の形をした魔性は。
「でもアラン、貴方だけには、わたしの本当の姿を、観ていて欲しいと思うわ」
「本当の姿? そんなモノが果たしてあるのか? 二面性に溢れた、両極端に存在を存在させているのではないのか?」
「いいえ、わたしは聖女よ、穢れをしれない、そのもの処女の乙女よ」
「どうだかな、俺は少なくとも、そんな陳腐な表出で、お前という女を見極めた、最低限のつもりにすら成らんがな」
そんなとき、此処、王城から突き出た広大な庭園、そこを繋ぐ唯一の長い回廊、向こうの大扉が、爆裂した様に破壊された。
「あらあら、どなたかしら? 無暗矢鱈に盛大な攻略法だこと」
「あれは、王国の魔術師隊長だな」
遠くに居ても分かる俺の目で、その面貌から把握、うら若い辣腕の、魔術師とは思えない凄まじい膂力で、突っ込んでくる。
「馬鹿が、リリア、お前、反逆を企んでいたのか!」
「そこをっ!! どきなさいっ!!!」
突貫して、無謀にも己よりも格上の相手に突っ込む、同輩のやからに、俺は剣で数合切り結んで、女王への進路を阻む。
「うるさいうるさい! アタシの恋人は殺された! アタシが頂点に立ってば! あんな事にはならないんだあああ!」
壮絶に泣き叫んで、最大級の魔力が籠った、ハッキリ言って女王は規格外だが、コイツも同枠に収まらないだけの規格外だ、
大庭園の周囲を囲むように、何千何万の火球を、おそらくはイメージだけで出現させて、
精霊の加護すら纏う時間が惜しいのだろう、己の身体能力だけを頼りに突貫、火球と合わせたタイミングを調整した切り込み。
「ぐっ! この!」
刀を弾き、火球を交わし防壁で相殺、
そして何よりも厄介なモノ、きた!
「はああああああああああ!!!!」
最初から見えていたのだが、鞘を捨てずに腰に下げ、回転する遠心力で抜刀し、振りぬきざまに捨てずに、そのまま持ち、
武器としての重量から軽い打撃を期待したのだが、鞘の重量が遠心力に上乗せされ、攻撃力と速度が格段に上がるのだ。
「まだまだあああああああああ!!!」
そして、そのまま連撃で踊るように演舞、回転しながら、何度も何度も遠心力を損なわない絶妙な撃ちこみ、
攻撃しながらでも、回転力と攻撃力を損なわない、絶妙な、それこそ神懸りな身体バランスが成せる、奇跡の攻撃手腕なのだ。
「がぁっ!!」「チェストぉおおおおおお!」
溜まらないほど見事な攻撃に、俺は剣を弾かれ、懐に迫るリリアの面妖を拝む機会を得た、鬼神の如きものだった。
「あらあら、この程度のやからに負ける程度では、アラン、貴方まだまだ二流以下ね」
突然テレポートのように現れて、人差し指の平で、壮絶な突きを止めたのは、当然の事で女王だ。
「くっ!! この!」
突きを止められて、周囲空間を炎で埋め尽くし、剣劇の乱舞を放つが、当然で女王の足元にも及ばない。
「ふせ」
「ぐうわああああああああああ!」
石畳にめり込んでめり込んで、リリアは何も言えなくされてしまう、地面からくぐもった、まんまぐうの音を晒すのみ。
「恋人を殺された程度で、使命を忘れ、情欲に支配され狂い、理性を無くすのだから、二流ねリリア」
女王からの任命式で渡した、王国の調印の成された剣、それを奪ってしまう。
「もちろん、貴方の苦しみは理解しているわよ、ずっと見ていたモノ。
貴方は恋人を失って、悲しくて切なくてさびしくて、ずっと一人で自室で、己を慰めて慰めて、満たされず、
その狂うまでの、たった一人の少女が発狂するまでの過程は、素晴らしい見せモノだったのよ」
女王の言葉が聞こえているのか、抑えられた頭はそのままに、四肢が狂ったように暴れるが、事態は何も変わらない。
「確かに、貴方が女王だったら、恋人は助かったかもね、それで? だから王位を奪おうとするなんて、馬鹿じゃないのかしら?」
確かに賛成だ、俺はリリアを助けたいと思い、あいの手を出す事にした。
「そうだぞリリア、しょうがないから、俺が恋人の代わりに成ってやる」
「貴方は黙ってなさい、こんな雌豚の相手をしているほど、暇でもないでしょう?」
「いや俺は暇だが? 恋人募集中だ、てか、いい加減可哀そうだろうがよ、リリアを離してやれ」
「あらそう、残念ね」
女王がリリアを解放すると、ぴょんと唸るように唸って、リリアは距離をとった。
「うおおおおおお! 可哀そうなリリア! 超可愛い! すきだああああああ!」
「うがああ!」
またも地面に身体をめり込ませるリリア、俺が前歯がゴチンとするくらいの、強烈なべろちゅうを見舞ったからだ。
「あばあああ! ぷがはああ! アラン! なにする! やめ! はなして!」
「嫌だ!! 俺とお前はもうこいびとだああああああああ!」
きゃああああああああ!! と、まんまレイプされる乙女のような声を出す、リリアが抵抗する気が無くなるまで、きっかり一時間がたった。
「さて、それじゃあ、貴方の処分は無しという事で」
「うううぐぐぐ」
「くっくっく、恋人を無くして、ずいぶん傷心だけど、まあ新しい恋を見つけて、うまく収める事ね」
レイアは、どう考えても楽しんでる顔で終始やっていたのだ、こういう風態を晒すから、無暗に恨まれるのだろうがよ。
俺は手錠してリリアを、俺の部屋に連れて行った。
「おあら、よかったなあ? 普通女王に逆らったら、死刑なんだぞ?
だがお前の能力的に、処刑はもったいないから、俺の肉奴隷にすることで、恩赦されたんだ、俺と女王に感謝しろ」
「うううぅ」
言ってやっても、答えは微妙、そりゃ最愛の恋人を惨たらしく失ったんだ、当然だ。
「しゃあねえな、俺が慰めてやるしかないわけだ」
まあ俺の役回りなんて、こんなモンだ。
傷ついたキャラクターの、こんな慰め係、まあそれ自体も、けっこう難易度の高いことな、実際訳だが。
「頭でも撫でてろ、そんな事くらいしか、実際にアタシにできる事が無いくせに、上から偉そうに、あたしを見るな」
「なんだ、できる事があるんじゃないか、さっさと言え、無能な脳筋魔術師」
沈痛な気配が濃厚になって、きまづくなった時に、やっと何事か言った。
「リリア、これからは、俺がお前の恋人になってやるからな? 早く元気になるんだぞぉぉ?」
「無理、お前なんかじゃ、アタシの恋人がわりになるモンか、死ね」
「そうかそうか、その強気な発言、いつまで持つかな、どうせ明日の朝には、俺が新しいリリアの恋人になるんだ」
意図を察したのか、頬を染める、まんまエロゲーのキャラクターのような気配。
「、、、やれるものなら、やってみろ」
俺は、ヤッてやった。
まあ俺の、この手のパラメータは上限突破しているので、まんまリリアは俺にメロメロ、慰めクエストは一日たたずに達成されたのだった。




