猫の国バースト‐統合される物語世界において☆☆☆☆
「女王、俺はアキノだ」
「ああ、知っている、そして中核の作者だとも」
この世界は観測者という、TRPG的なゲームマスター、KPによって真に全て管理運営されている。
そして俺のような作者が、全てを創造しているのだ、真のゲームマスター、KPとも見えるだろう。
だが違う、俺のような作者は、公平盛大に全てを判断できないし、真にプレイヤーの楽しみを優先できないと判断されている。
「この猫の国は、物語のシナリオとして、イルミナードを包囲する四大国、
って位置を、今の所は運営管理する上での、大きな目的になるようだ。
つまりは大きな物語の枠として、当て嵌められる所が定まって、物語などのネットワークが繋がった、
究極の物語を創造する上での、主要な世界観として、認められたという訳だ」
「なるほど、私が成した事も無駄に成らないようで、大いに結構だ」
「そしてもう一つ、イルミナード編という大きな物語の他に、
黄金の女王シャルロット、という巨大なキャラクター概念を中軸にした、世界観のようなモノにも繋がっている。
彼女がアトランティック、つまりは四大国を巡る物語の、第二の国として、ここでの物語が展開される、あくまで予定らしい」
「将来的に、あれほどのキャラクターを迎えられる、恥じない世界、国家像を考えておかなくてはな」
「まあ、そういうことだ」
俺はアキノだ、中核の作者、世界を己の想像の通りに、創造するように全てを生み出す、世界の頭脳だ。
「アルドくん、君が真の姿を隠すのに、ここは最適なのかな?」
俺は俺の家に居る、もう一人の俺のような奴に、そう言った。
「別に、どこでも良いのだ、我は」
「ふーん、そうなの、それで? どれだけの物語のストックがあるのかな?
世界の限界ってのは、つまるところ、君のストックした物語が枯渇、しかかっているとイコールで、俺は考えさせてもらっているよ。
世界は続け続けなくてはいけない、白紙に成るなんて、絶対に駄目、認められないのだろう?
だから世界の完全消滅、それが世界の限界と定義づけられる訳だ」
俺は訳知り顔で、アルド、彼の前に座る。
「現状、ジリ貧で詰んでいるのだろう?
光速を超えて、人間の脳髄を超越して、シナプスというネットワークを無限大に構築しても、
所詮は現象として表せる、世界の形、そういうモノには必然的な限界値が定められているのだろう?
もちろん、無限大にインフレして、全てを革命させ続ける、真なる世界の形、そういう奥の手だって持っているのだろう?」
「我に、なにを聞きたいのだ? そなたは、知っているはずだ」
「感情論を、果たして聞いてみたいのかもしれないな、俺は。
アウルベーンも、自らから切り離して、自律的に軌道させる試みの、所詮は一端でしか、ないのだろう?
試験的にやってみたにしては、切り離したリソースが致命的に大き過ぎるのは、どういう思慮かは気に成る所だが。
まあ、無限大に拡散して、希薄に成り続ける、世界のピラミッド構造の欠陥、弱点の克服を成すには、事足りるのかな?」
俺は相手の問答を待たずに、話し続ける、推測も混ぜてだ。
「だがしかし、己から切り離しても、全自動的に進んでる様に見えても、駄目だったみたいだな?
アウルベーンは、自立で進化した、というよりも、現状世界の盲点、発現していないだけの可能性を、
新領域・未開発・未開拓、と銘打って、独占的な情報支配を、旨、常套句に上等としているだけっぽいのだからな。
本人は世界の最前線を標榜し、存在意義、アイデンティティーにしている事自体を、無自覚に確信しているのだろうがな」
「アウルベーンは、俺の切り離したモノの中で、唯一無二に自然崩壊しなかった、世界の形だ」
「そうでしょうよ、この世界の外側に位置するモノは、おのずと、そういう事に成るのだからね。
だがしかし、真なる外側には、無限大に崩壊していない、認識できていないだけの、
私たちイデア図書館ですら、絶対ですら認められない、無限の幻想領域が、無自覚に広がっている件について言いたいね」
そう、イデア図書館、絶対のアストラルエリアを束ね、全てを支配する、究極レベルの観測者・作者集団だ。
「私たちは、真なる外側は無理にしても、外側程度には勢力を伸ばしているのだよ。
アウルベーンも察知済みだったが、まあ、他にも第二第三の、見込みのある場所は選定済みなのだよ。
本来的に全てが自然消滅するなかにも、貴方の手を借りずに、延命する特異点は存在するという訳だね」
「それが世界の限界が近づいている、というわけだ。
俺の意思を超越して、世界が真なる外側に、その分だけ侵食されている、というわけだ」
「貴方の死期に、我らは興味が無いよ、ただあるのは、イデア、それのみなのだからねぇ」
イデア、図書館の存在意義は、遥か昔のある一点から、ずっとそのように呼ばれて言っているのだ。
「我らは、貴方が消滅したトキに、世界が真なる外側に侵食されて、どのように変わるのか、楽しみで仕方が無いですよ」
「残念ながら、ソレは無い。
我は矛盾の世界の方向性、全てを纏めるがゆえに、存在寿命が唯一、絶対存在でありながら、設定されているだけだ」
「それも知っている、貴方は七つの絶対の世界の方向性を、人間の意思によって、まとめあげられる神のような人間なのだろう?
他の、本来なら無自我、無自覚に無我の領域に居るはずの絶対存在七つが、まるで人間のような挙動を最終的に取るのも、
それはそれは、貴方が意志を分け与えているからだと、推察結果が出ている。
貴方の死とは、世界の意志力の限界、運命力の限界、そういう話に結論は成るのだろう」
「そうだ、だが我が死んだ場合、空位に成った座には、世界を真っ白に飽いていない、そういう奴が全自動的に座る事になる」
「そう、そういう裏事情も知っている。
世界は、創生の時点から、そのように作られている、逆算的に全てをさかのぼれば、根底理論すら見透かせるのさぁ。
真なる外側に拠点を置く、鉱物種族、特異点ですら無いくせに、真に世界を超越し、移動する奴らの協力もあったがね。
他にも外側にある、貴方の綻びから生まれたモノたちによる、情報漏洩みたいなモノも、多分に理論を100%の確証にするのに利用しましたが」
「それで?」
「我らは、貴方を世界の初めから創生した、イデアと認定しました、と云う話ですよ。
一度失えば、二度と戻らないモノ、そういうモノをイデアと崇めて、守護するのが、
救世で無い、サンクチュアリのような人間の味方で無い、
我ら神の守護者、八百万のムラクモを見守るべく生まれた事を確信する集団、イデアネットワークなのです」
「我を守護する? お前たちは、ハイネ、絶対の世界の方向性の守護者ではないのか?」
「もちろん、あの方も興味深いイデアを内包してますね」
「イデア、概念的に二つ以上もてるのか?」
「いやいや、そこは大目に見て欲しいですね、経過観察、優先順位が同着で、我らも戸惑っている所存ですね」
ハイネ、絶対の世界の方向性の、絶対存在。
イデアは絶対値の絶対化、それが今までの、我らが世界に成すべきコンセプトだった。
しかし、目の前のイデアは、世界の数値的な延命、
初期からのコンセプトに、加わった形だが、
なにをかいわんや、事業としての難易度は、格段とも何も想定できない話だが、上がった事だけは実感として得られるのだった。




