イルミナード宇宙軍の戦う少年少女たち☆☆
「これは、第、、、銀河宇宙大戦後期の話」
イルミナード宇宙軍は、数多の並行世界を展開し、複数に跨る次元で、多目的に連携しつつ、敵を迎え撃つ戦略をとる。
もちろん、共通ルールとして、敵にも同じ理論が行使されるので、結果的な戦力差は初期値ゼロとなる。
だが幾つものルートを重ね合わせ、物語のシナリオを最適に調整する事に長ける、数多の劇場型な人材を抱えるイルミナードは、
この戦略のよる人材の覚醒値が著しいのだ。
特に、複数同時攻略可能な展開を有する、英雄的なシンボル、象徴としての主人公キャラは、
この世界展開における、有用なネットワークを扱い、収束する中核点として機能し、際限の無い幻想を現実にしてきた。
イルミナード宇宙軍は現在、最盛期を迎えていると言っても過言ではないのだ。
大規模地上戦。
惑星気圏内で行われる戦闘、俺は塹壕に潜って、多連装MVLSの発射管制を行っていた。
宇宙の様子はまったく分からない。
彼女は無事だろうか、酷く心配である。
いまも刻一刻と、宇宙からカプセル状の投下弾が地上に降り注ぐ。
撃墜に失敗すると、そこから強力な敵の装甲兵が現われる。
俺は塹壕を飛び出し、隊長としての号令の下、突撃を敢行した。
「はぁ、、終わった」
今回の迎撃は、宇宙の勝利によって成った。
地上軍はほぼ負け掛かったが、空からの支援によって、なんとかなった。
「レイル、今回もよくやったなぁ!」
気になっていた少女を、軍の施設で見かけたので、声を掛けた。
深海のような青い長髪。
いまは、大抵のときと同様、ポニーテールでまとめている。
このポニーテールは、とある先輩に憧れ、というのを聞いたことがある。
髪色とほぼ同じの、深みのある青い瞳。
「うん? ああ、イツキ」
振り向いて、魅せてくれる表情は、何時見ても凛と情感に溢れている。
深い思いやりのようなモノを感じさせる、優しさに満ちた、素直なまなざし。
こちらにツカツカ靴音鳴らして、近づいてくると分かる。
彼女の背丈は平均より相当高く、男の俺と同じぐらいである。
女パイロットらしく肩筋が少々しっかりしている。
しかし、それが却ってウエストとかの括れやら細さやら凹凸を強調していて、とてもいい感じ。
うん、間違いなく相当の美少女、ないしあるいは美女。
実年齢を知る俺としては、比較して数歳幼く見える、みずみずしい肢体とプロポーションを持つ彼女。
「ああイツキだ、今回もレイルのお陰で、なんとかギリギリ勝てた」
「ふ、そうですね。
でも、所詮は一時しのぎですよ、次は持ち堪えられないかもしれない、、、」
沈んだ表情をする、ほんらい誰よりも天真爛漫な、子供っぽい、過ぎる彼女らしくない。
俺は悲しくなった、彼女にこんな顔をさせる、そんな世界の全てが許せないと、そう思った。
しかし、俺が彼女の為にしてあげられる事は、極端に狭く少なく。
ホントどうしようもなく酷い、歯がゆい。
なにか出来ないか高速で思考しても、何も上手い事はそう簡単に思いつけない。
「ふふ、ごめんねぇ、暗い顔しちゃってぇ。
わたしが誰よりもしっかりしなくちゃいけないのに」
自戒するような声色。
次の瞬間には何か切り替わったように、面をあげて。
「はっは♪ ずっと神経張って疲れちゃったぁ!
これから食堂でアイスでも食べようと思うんだけど、御一緒にどうかなぁ?」
「ああ、よろこんで御一緒するよぉ!」
そう返事すると、彼女は俺の手を引っ張って、強引に食堂に連れて行く。
「次の数的不利は決定的だよ」
「ああ、地上はもう守りきれない。
地上兵も市民も、宇宙に上げておいた方が、まだマシだろう」
アイスを食べながら、地上と宇宙の総指揮官の会話を織り交ぜ。
次第に会話は深みに入り、俺達は次の迎撃について丁々発しを繰り広げていた。
何度も修羅場を潜り、研ぎ澄まされた直感は、お互い次の危機がどれほどか明確に告げている。
おそらく、戦術的奇跡を何層も積み重ね、且つ編み上げなければ、絶対に勝利は不可能。
膨大な資料、立体映像で投影させて、高速に上下させて速視したり、参考できる箇所を議論したりと。
このような危険な戦況動機の下でしか、発揮されないだろう脳の領域をフル動員する。
一生決して使わないだろう、奇抜な戦術案、その類稀な発想を褒めあい、
リアルタイムで、加速度的に幾何級数的に天文学的な勢いで、
改たで新たな、お互いの知的才能を開花させる、していかなければ、どうにもならない現実が目の前にあるからだ。




