タクミとルヘル‐タイムマシンと世界真理と千年代
観測者の世界から帰ってきた、その翌日。
というより至上の観測者集団、大規模ネットワーク機構に属さずに、ただ世界に分布し、大連合を成す奴らだ。
一見して、大きなネットワークに属さずに、孤立しているように見えて、世界は彼らを取り込み支配しているのだ。
世界は無限大の観測者を有する、そして、大規模ネットワーク機構は無限大の世界を出し抜き超越して、真なる世界の在り方を模索しているのだ。
これは多分、俺の現在の世界の真相における深層の、仮説の一つに過ぎないんだがね。
そも、答えが単一である可能性が低い、答えと云う名の真理が、複数以上、それこそ無限大存在する可能性すら否定できないのだから。
「タイムマシンか、、、タイムワープ法を一応確認しないと」
「タクミ、何しに行くの?」
「1000年代に、悪意の根源があるかもしれないって聴いてね、ちょっと見に行こうと」
「ふん、わたしも行く」
俺はいいよと、ルヘルは無表情で頷く。
矛盾と虚無とか、いろいろ掛け持ちしている、様々な情報網から得たところから。
本部から送られてきた、いわゆるタイムマシン、その説明書を読み込む。
「なるほど。
これは、この方式は、、、」
この時空間跳躍装置は、特定の範囲内の、使用者以外の、全ての事象を逆行させる仕組みだ。
そして、使用者は過去において一定の制限の下、活動が許される。
大きく後の歴史を変える行為は禁止される。
多少の足跡程度なら、自動修正される仕組みである、らしい、どういったシステムかは詳細不明。
「ちょっと、タクミ」
「どうしたルヘル」
「これって、過去に遡れるの?」
「ああ、そうだ」
「なら、未来にも行けるの?」
「ああ行けるな、まあ今回の用途は過去だが」
この装置なら、そういう事も可能だろう。
「それじゃ、行ける所まで未来の果てに行ってみない?」
「行ってみたいのか?」
ルヘルは頷く。
はぁ、そんな事に果たして意味があるのか分からない。
この世界において、時間軸など、あって無いようなモノだろう。
「まあいいけど、俺の用事のあとに、ちょこっと行くだけだかんな」
「うん、それでいい」
言いたいこと言うと、何時もの体勢、ベッドで寝っ転がった。
突然だが、世界の真理は無限大である。
世界は無限大的な事象現象存在世界、そのようなゲームにおける要素を最大限にし、求めるように推移する。
無限大を求めた存在世界が、己自身が無限大である事で、ただ在り続けるだけなのだ。
そのような世界における、七つの絶対無限存在がある。
世界が進む方向性には法則性がある、それが七つに絶対大別される。
世界という無限リソースを所有する、その存在は、互いを認めず、ただただ対立して存在を続けている。
俺はそのような世界で、矛盾に属しながらも、たくさんの勢力に媚を売って、上手い立ち振る舞いで、人生を送っている。
このいま、媚びたような目で俺を見つめる、少女。
ルヘルという存在は、虚無の盟主だ。
つまり虚無という世界の方向性の絶対の一的存在。
俺に一目ぼれしたのか知らない、ただ何時からか、俺の傍に擦り寄ってきた感じだ。
頭撫で撫でしてやると、猫のような顔して可愛らしくなったりする、キュート不思議系だ。
虚無という世界の方向性は、ただ停滞する。
世界に無上に絶望しながらも、無上の希望を捨てきれない。
だから、ただ何もせずに、何も失わないように、何も奪わないように、振舞う傾向にある。
争いがあれば、場合によっては介入したり、変わらない日常の為に在る感じだろうか? 正直不明。
「よし、千年代に到着した」
タイムマシンを使い、千年代に行った。
この年から、世界は神代の技術を手に入れて、世界の真理を垣間見る事になった。
それからは、特になにも起きていない、長い停滞の時代に入った。
二千年代までには、完全に管理された世界組織が暗躍し、永遠の秩序が実現し続ける基盤が絶対値に至る。
しかし、神代に至る生贄として、様々な非実存存在、形而上存在が犠牲になった、と入手した情報には記録される。
それによって、この世界は悪意の対象となり、永遠に混沌と絶無等々の、討伐対象、宿敵と目されて、うんたらとある。
「さて、帰るか」
悪意の根源は確認した。
無上の不幸を発現させて、無限エネルギー、特移転あるいは特異点を生み出した過去。
それは今更修正不可能だ。
俺はただ、それを直接観測したかった、それだけだ。
「未来に行く」
「ああ、わーってる」
俺はタイムマシンに乗り込み、未来を∞に設定した。
到着した其処は、狭くなった空間だけだった。
相容れない世界は、住み分けされて、しまったのか?
七人の絶対存在が、お互いを睨みつけながら。
己の内に己の望む理想の世界を無限に宿し、相手の世界に干渉しなくなって、しまった?。
無限を生きれる無限の存在。
彼らは、ああ、そうか、なるほど。
「お前ら、タイムマシンの無限演算を収束させる為に、世界を閉ざしたか」
世界は無限に存在する。
未来すらも、無限に存在する。
だが、無限に枝分かれする未来、ソレを、このように無にする事ができる。
無にするメリットは知らないが。
おそらく、無限の未来の形を表現するのが困難を極めるから、だろうか?
世界は、出来る限り自然であろうとする、そういう共通性質というか法則がある。
だから、ランダムに無作為に、ただ一つの未来を突き進むと、ほぼ確実にハズレな未来に突き当たるってわけか。
「ルヘル、虚無の最上位の権限で、当たりを引けないか?」
円卓の一座、蝋人形のように、いつの間にか座っているルヘルを小突く。
「あうぅ、うん、七分の一だけ引き寄せてみる」
次の瞬間、虚無の世界が広がった。
そこは、ただの虚無の最大拠点の都市だった。
「帰るか」
「うん」
俺達は俺達の元居た場所に帰った、やっぱり此処が一番だな、ただそう想った。




