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イリスちゃんと宇宙海戦



「タクミって、ずるい! 何で重い荷物を運べるの!」


 セーラー服に身を包んだ緑髪の、超絶ウルトロハイパーの二次元少女みたい奴が言う。


「イリスのが、ずっとズルイ」


 俺の正直な感想だ、このように身分を世界系的にねつ造して、簡単に潜入できる。

 そも細腕でも、トラクターでもハーレーでも、何でも即座に召喚できるのだから。


「ねえねえタクミ! 書籍化になろうで出版した、イリスの小説見てみて」


「はいよ」


 まあまあ面白かった、まあ大ヒットはしないだろうなって程度。


「大変大変! 地球外生命体が、地球に侵攻してる! しかも敵が悪帝国!」


「うそをつけ」


 どうやら本当らしい。


「おいイリス、てまえが自作自演で、火星に基地を持つ、宇宙生命体を召喚したんだろうが!」


「ちがうよぉ、ほんとうだよぉ」


 語り口調が、嘘っぽい、だけど嘘と断定もできない。


「どうするんだ?」


「迎撃艦隊を召喚して、撃退するよ☆!」


 夜の裏山、ハイキング気分なのだろう、ルンルン気分で昼に作ったサンドイッチの入ったリュックを抱えるイリス。


「おいイリス、敵の数を超える迎撃艦隊を、念の為聞くが、召喚できるのか?」


「むりむり、かたつむり」


「おい! どうすんだ!」


 概要は、前に裏山に百億万円を召喚したせいで、膨大なリソースを消費したらしい。

 本来は、世界に幻想的な現実を起こす場合は、多くの現実的な認識を操作するようだ。

 これは他の存在の、現実的な認識を操作するのが主で、つまりその負荷は、物理よりも精神の方が多くて、

 つまるところ、沢山の人間の現実認識を変えるのは、より多くの、なんのリソースか分からないモノが必要。

 そしてそのリソースが、今は枯渇気味、一カ月くらいのFS的な月の満ち欠けが必要必須とか、イリスは頂上で語った。


「だから、たった宇宙艦艇、しかもこの程度の、駆逐艦だけしか召喚できないと?」


「そうなの、でも大丈夫」


 裏山の頂上の一本杉、それと同じくらいの大きさの宇宙艦艇、そのハッチから中に入り込む。


「なんだ、此処、普通の家っぽいな」


「それじゃあ、出発進行!♪」


 言いながら、大気圏突入シークエンスに入るらしい。

 良く分からない計器や操作卓、キーボードのようなピアノのような銀盤じみたモノを、華麗にタイピングするように叩く、叩き続けるイリス。


「うわ! アメリカの衛星にひっかかっちゃった!」


「おい、どうするんだ!」


 なんとなくだが、アメリカの衛星にひっかかると、多くの人間の現実認識に干渉する必要がある気がした。


「CIAにも、世界の裏の秘密結社にも、知られちゃった!」


「おい、どうするんだ!!」


 どうやら、リソースを消費して、なんとかするみたい。


「やっと着いたね」


「ここ、何所だ?」


 火星の裏らしい。

 此処は、地球からみえない場所で、現実的な幻想を生み出すには、絶好のスポットらしい。


「此処で! イリスちゃん艦隊を結成します!」


「というか、敵はどれくらいの規模なんだ!」


 はい! 二個艦隊であります! とか言っている、軍隊のノリで遊びたいらしい。


「わが軍は?」


「はい! 駆逐艦一隻です」


「ていうか、二個艦隊って、何隻なんだ?」


 この場合の二個艦隊は、三十六隻らしい。


「その全部が、攻撃能力の低い艦艇、輸送艦やらなんだろ?」


「いんやっ、戦艦とかも普通にいるよ」


 平然と言った、俺がビックリしてるのが嬉しいようで、心ぴょんぴょんしてるように、イリスは飛びあがる。


「どうすんだ!」


「大丈夫、大丈夫、イリスちゃんに策があるよ」


「ああそうか、ここは幻想的な現実を生み出すのに都合がいいらしいな」


 へいや! とか言いながら、イリスが艦隊を生み出すのを見る。


「どうどう! 最強艦隊! 北コレ!」


「うーん、まあ、勝てるんじゃね?」


 中空に浮かぶ、三十隻くらいの艦艇群を見ながら、俺は言う。


「それで?」


「それで?って」


「勝てるのか?」


「正直、微妙」


 確かに正直微妙だった。

 艦隊を召喚した時に、ついでに生まれたステータス表。


 大健闘! イリス艦隊ブラザーズ

 攻撃力・304

 守備力・202

 機動力・222

 持久力・499


 HP・20033

 MP・23434


「おいイリス、この持久力とHPの違いは?」


「ああ、継続戦闘能力、これが低いと、戦っている内に怪我して、または燃料や弾薬が無くなって、弱くなるの」


 いろいろ聞いたが、全部目安らしい。


「てーか、この二次元モニターに映る敵は可笑しくないか? 三次元立体だろうが」


「ううん、宇宙は、超紐理論で、あーだこだー」


 ていうか、光速で動いても、火星の裏まで行くのに早すぎる、もしかして。


「おいどうなってやがる、まさかゲームの世界に入っているのか?」


「いやいや、違う、現実を、ゲームの世界っぽく、してあるの」


 言うには、三次元で戦うには、今のリソースが足りないらしい。


「なるほど、敵もそれに合わせてくれてるのか、、、どういう事だ?」


「暇つぶしに作った艦隊が、なんかクーデターっぽい感じで、ごめんなさいだよ」


 言ってる内に開戦。


「一斉射撃! 撃て!!」


「うわっ、撃つトキメッチャくちゃ揺れるんだなぁああ!!」


 俺は隅で、画面に映るステータスをずっと見ていた。


「おい、これって俗に、撃ち負けるって奴なんじゃねえか?」


「そうだね、第九射撃で、集中攻撃されてる戦艦が落ちて、そっからジリ貧だね、

 ダメージコントロールのバランスが悪かったのが敗因」


 いやそもそも前提からして、敵の戦艦比率が高過ぎた。

 加えて、誰が操縦してるのか知らんが、こっちの攻撃力は、実際の想定の200%以上で、なぜか敵に攻撃力として反映されてる。

 これは多分、横から見ても素晴らしい、人外の指さばきとかで操る、イリスの特異な能力の反映だろうと、勝手に思っていた。


「はあははん、イリスめ、こっから砲塔とか召喚して、いっきに勝つ奴だろ、はやくしろ」


「駄目、負けちゃう、死んじゃう、うわーん!!!」


 言って、緊急脱出ポットを出して、そこに収容されたらしい俺とイリスだ。


「せめえ」


「うん、狭いね、これからどうしよう」


 超美少女と、狭い場所で、身体をくっつけるのは、凄まじく気持ちく嬉しいが、心は不安で一杯だ。


「あっ、敵の艦艇が近づいてくるぞ!」


 敵の旗艦っぽい、一番デカイ戦艦が近づく、そして外付けの腕みたいな奴で、俺達は捕まえられて、艦内へ。


「うおお!」「うわ!」


 俺達はポットから出されると、辺り一面に一斉に拍手を始めた、人間っぽい人型に驚く。


「おめでとう、おめでとう、おめでとう」


 そんなくりごとが繰り返される。


「これは、どういう演出だ、マジックだ」


「知らないもん、知らないもん、幻想って怖い!」


 と幻想の落とし後のような奴が言っている、それが俺は一番不気味で怖かった。


「戻ってこれたな」


「うん、疲れたぁー」

 

 ぐでーんと、俺の匂いがついてるのに気にしない、ベッドで寝転がるイリスが愛おしかった。


「さて、奴らは、なんか知らんが、ただ戦いたかったみたいだな」


「うん、よく分からないけど、これからも私のリソースが溜まったら、ちょっかい出して、またヤリたいみたい」


 俺の日常に、定期的に騎士精神に則った、宇宙艦隊海戦が加わった、今日は最悪に記念すべき日だった。

  

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