最小単位の小さな矮小作者の小さな箱庭での孤軍奮闘
俺はこの物語の作者だ。
だが無限大に居る、存在する作者の中でも、最底辺の作者だ、俺にはその自覚がある。
それでも俺は作者だ、最上位の作者の、物語内で成す意図の為に、
まるで膨大な観測者の存在ネットワーク構造のように、俺は上位の作者の為に成る事をする、そんな作者だ。
最上位の作者の意図は、そりゃ無限大に面白い物語小説の創造、創生でしかない、当たり前だ。
俺は、この物語世界における、イルミナード第四方位陣に存在する、一兵士だ、プレイヤーだ。
無限大に広い世界を、その全貌を、ありとあらゆる陰謀を含めて、知っているのに、こんな場所で暮らすのは馬鹿らしい話だ。
それでも俺には目標がある、この方位陣のゲームにおけるラスボス、次元の魔女、レイアの打倒だ。
このヒロインの名を借りた敵性キャラクターを倒す、
そうすれば、最上位の作者の成す、なにかしらの計画が、確実に一歩以上で前進する、そういう電波を受信したのだった俺は。
「にゃーにゃー!!!」
俺は部隊宿舎、第666部隊、総員数十名の憩いの場にて、隊長が猫の無き真似をするのを目撃した。
「ねえねえ隊長、第四方位陣って、部隊だけでも二千あるのって、どうなのよ?」
「にゃあ? 知らないよ、一個師団とかにして、各々の独自性を希薄にすると、ゲームとして面白くないからじゃない?」
そう隊長、名をイリス、虹の眷族の名を冠する、魔法使いのような、そうでないような微妙なジョブのプレイヤーだ、
俺より結構強い、ゆえの隊長なのだと自認する。
「確かに、迷宮ダンジョンが入り組んでて、少数精鋭で、細々と攻略して、全体を明らかにした方が、進度の関係でも良いのか?」
「いやー、どうだろうね、全体を統括して、迷宮攻略に被ってる所無くした方が、遥かに良いと僕は思うよ」
「ああうん、俺もそう思いますよ、隊長」
猫っぽい語尾に僕、特徴的な語り口調で、プレイヤーと云うよりはゲーム内ヒロインに見える隊長だ。
「にゃなあにゃなあ、楽しいなぁ~~」
「なにがですか?」
「そりゃあれだよ君、生きてる事が、だよぉ♪」
平和だ、
隊長は凄く大らかで、毎日無意味に無駄に、超越的に楽しんでいるのが、傍から見てて確信的に分かる感じに愉快な人だ。
ソレゆえの隊長なのだと、俺は本当に心の底から尊敬の念とともに、若干マジで人生の先輩として慕ってる所があるな。
「やあやあ! エミリ様が、大登場してくだすった! 道を開けろ!」
「うるさいな、俺に話しかけるなっ」
まあ隊長以外は、割とどうでもよい、ゴミのような奴しか居ないのが此処だ。
どこの組織も人材を余らせたくないのだろう、隊長が一段階上の人格者を置き、他は俺と同程度の奴なのだ。
「話かけてもらってるだけ、ありがたく思え、ゴミ」
「死ね、何様だ?」
「佳代さまがお通りよ、土下座して」
クソうざったい、だが病みつき程度には成る、後ろから手が伸びてきて、俺の目を隠す。
「誰だ? 誰だ? 」
「ルヘルだろうが、クソくだらねえんだよ、ばーか!」
「ざんねん、あまり楽しそうじゃ無いので、やめる」
後ろ手を取り上げて、見ると、猫耳を可愛く付け根からつける、低身長な少女だ。
「ざっと名づけるなら、天使、毒舌、ナマイキ、ミステリアス、だな」
適当に発言したので、若干順不同に成ったが、まあ伝わるだろう。
「ミステリーじゃない、神秘のベール」
「にゃなあにゃああ!」
「没個性的なキャラに当て嵌めるな、殺されたいか?」
「大天使って、あたしのこと?」
ほら、まるで作者が作り易さ重視で作ったキャラクターのように、枠にはまりきった反応。
「まあ当然だな、こいつらは、俺と云う作者の、キャラクターなのだから」
第六六六部隊、俺の小さな箱庭、俺の物語を進める部隊である。




