ナナ編‐至極つまらない、ゴミのような話の当て付け八つ当たり憂さ晴らし等々
「おら、俺のストレス発散の為に、盛大に貪られて苦しめ、不幸で惨めで哀れで、可哀そうな顔を見せろ」
俺にはライフワークが、一つだけある。
大好きな幼馴染の、ナナちゃんに、それはまつわる事だ。
ナナちゃんは、小説を書くのが大好きだ。
そして、その小説を己の個性みたいなモノとして、凄くすごく大事に、大切に、
それこそ、最愛の娘のように、頑固おやじが囲うように、愛でに愛でて、ナルシズムにどっぷり浸かっているのを知っている。
それは自尊心や自己愛が、高いのだろう。
だが何よりも、幼馴染の俺に、なぜか、それを盗られるような事に、過剰に反応するのを、ずっと昔から知ったのだ。
学生のまだまだ小さかった頃、ナナちゃんの小説を見せてもらって、感想を求められた。
次の日くらいに、俺もナナちゃんに触発されて、小説を書いた、すると凄くイカられて、怒られたのを覚えている。
それから、俺の小説を書くライフワークは始まった。
俺の人生で、俺がナナちゃんの小説を見て、そこを出発点とした小説を書く、という事だ。
ナナちゃんが、発狂するように起こるのが、その全ての動作が、起こる事が楽しくてしかたないのだ。
涙にぬれて、屈辱みたいなモノで義憤する、彼女の有様こそが、俺にとってこの世にありえざる、極点の果てだったのだから。
つまりは、俺はナナちゃんの為だけに、たった一人の為だけに、ターゲットを絞って、書いているのだ、だからの究極完全たいに楽しいのだろうか?
「わーい、ひとくちめだぁー!」
馬鹿みたいに、ナナちゃんがお菓子を食べている。
相方にはもう一人の少女、これはイリスという、緑髪の活発系の女の子だ。
「チョコレートって美味しいね!」
「うんうん! イリスちゃんも一緒にチョコ食べて、美味しい美味しいって! 心ぴょんぴょん共感しよう!」
馬鹿か、俺は内心でナナを罵倒する。
だって馬鹿だもん、こんな馬鹿な事で騒いで、馬鹿と思われて仕方ない事をしているのだから、俺に一切の非は無いと、少なくとも俺は確信犯だ。
「というのは、嘘で、まず。
こんな真っ黒なカカオ豆から作るものが、美味しいである事か」
ナナは、幼馴染の俺が、冷え切ったクールな瞳で観ている事に、どうやら気づいたようだ、とっさに、そんな事を言って、お茶を濁そうとする。
「調子に乗っているんじゃない、タクミ、お前はロクデナシの最低の屑の分際で、わたしを見下すような目で見るんじゃない、ブッ転がすぞ」
「語彙が貧困、娯楽のセンスもレベルも低い、カスの分際で、俺に小生意気な口を聞くな、犯しまくって、涙目にしてやるぞ」
「言っていろ、わたしはわたしの道を行く、電波だろうが、低レベルが低いだろうが、知った事か。
わたしはわたしの楽しいと思う事だけをする、他人なんて意見は不要だ。
わたしは私だけの意見を聞き、絶対に尊重すると、ある一定の時期から、絶対的に確定して、信仰しているモノだと思い知れ」
「クソカスが、ただ無上に頑固で、俺とは確固として違う存在、パーソナリティーを主張したいだけだろうが。
所詮は同じ、知的生命体である事を、その現実・事実を、しっかりと思い知れよ、ばーか」
「はあ? 貴方と同じ? ありえないでしょう?
だってわたしはわたし、貴方は貴方、絶対に交わらない、別の存在なんだから、馬鹿なんですか?
実際、貴方にはわたしの考えている事が分からない、リアルタイムじゃ無くても、今だって、
そう、わたしの考えている事が、真の意味で、一片だって、直に感じられる? いいえ感じられていない、わたしには確信がある。
わたしが感じるわたしだけの事は、わたしの身体で脳髄で、人生をずっと生きてきた経験が無くちゃ、感じれないモノだからだ」
「クソが、大好きな幼馴染と話すのが、好き過ぎるだろうが、どんだけ饒舌だよ。
そろそろお前は、俺と”こういう馬鹿で至極くだらないトーク”をしている時が、もっとも活き活きとしている自分を自覚しろ。
つまり、お前は俺と話している時が、人生のどんな時だって、人生の全盛期、この世の春だって事、
そして、俺がそれを、お前に与えてやれる唯一の存在、ボランティアをしてやっているんだ、毎日くらいのレベルで感謝しろ」
「嫌だ、貴方にそんな事を、嘘でも言うくらいなら、死んだ方がずっとマシだし、
だいたい、そんな事実は、いつまでたっても、絶対にありえないですから、残念でしたね」
さて、ここまで、俺の妄想ノートだ。
おそらく、俺の幼馴染の、あの可愛いナナなら、この文章くらいで、発狂する。
そして更に言えば、最初の辺りの文章が似てるって事で、盗作をしていると脅しかけてくるだろう。
真正の構ってチャンなのだ、大好きな俺に、少しでも釣り合うように、努力しているのが、その良い証拠だ。
あいつが俺の事を見る視線は、エロイ視線と似ている。
本人は気付かれていないと思っているようだが、見られている俺は、そういう視線を敏感に自覚できるのだ。
そう、誰からも、そういう目で見られる、俺は、幼馴染が向ける、そういう視線にも瞬時に察し、悟る事ができる。
「それにしても、毎度俺のナナちゃんシミュレータ、エミュレーターの調子は万全だな」
この妄想ノートのナナは、実際のナナと、ほとんど変わらないだろう。
ずっと昔から、ナナの事だけを見て、ナナの書いた小説だけを読んできた、そういう自覚がある。
別に、俺はナナの事が好きな訳じゃない、好きだったとしても無自覚だ、それでも観てきたのだ。
ナナ以外の全ては、観る必要が無いと思ったからだ、既に既知だったのだ。
ナナだけが、俺にとって興味がある、俺にとって、既知感を抱かない、未知だと感じれる”面白い事”だったのだから。




