イルミナードの夢の中‐とある塔の館
夢の中を揺蕩っている、ような感覚…誰かの声が聞こえる…?
「さあさあ、ようこそ…今日も今日とで、ただ殺される為だけに生まれた存在達よ」
彼女は、塔の様な…巨大で広大な、建築物の最頂点。
そこで只管…優雅に足を組んで眼下を、見下している…ようだ。
「バッカみたいに足掻いて足掻いて、苦しみ抜いた挙句、真に絶望する、見っとも無い姿を晒せばいい」
嘲笑を含んだ暗い声、彼女の瞳は全てを飲み込み尽くすような、真なる黒色をしている…と思う。
「みんなみんな、生きている奴は無限に苦しみ抜いて、無上に不幸になって、世界に絶望するべきよ」
彼女は確信に満ち溢れた声音で「絶対にそれが正しいんだから」っと、涙を流しつつ笑い、飛び立った。
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眩しい、目を開ける。
「はぁーあい、おはよう、マイダーリン」
美しい女性の声がする。
「あれ?」
ずっと、踊っていたようだ…わたしはわたしを忘我するほどに、舞うように…一心不乱に、踊っていたのだろうか?
くるくると、クルクルと…自分自身の遠心力が終わるころに、わたしは…その場に頽れるように倒れ込んだ。
「アンタ、なにやってんだよっ」
横を向くと、震えるほど綺麗な声と同程度の、美貌の少女がいた。
無用なほど過剰に溢れる色気が妖しい、そんなアレなタイプに分類できる、黒髪黒目の女性。
「ここは、何処?…わたしは、だれ?」
そこで、自分が寝てる場所が…広間のような空けた場所、タイル張りの地面と気づき。
次に、少女が変哲ない横長ベンチに座っている、と気づいた。
「さあ、アタシは知らない…。気づいたら此処って感じ?アンタもそう?…でしょうね」
質問を勝手に完結させて、しきりに首を振る少女。
とりあえず寝てる体勢から立ち上がる。トコトコ彼女に近づき、椅子に座ることで…彼女の全体像が見えた。
ビックリするくらいに、全身が黒で衣装されていた…まあ、それだけの話だが。
「ねえ、わたし…これから、どうすれば良いのかしらね?なにか良案がある?」
一応聞いてみる、が…私にだって、特にない。もう一度、考えてみるが…特になし。
「アタシの方は、とりあえずはないかな。アンタの方はある?」
「あるわ」
聞かれたからか、特にないと思っていたが、強いて答えを導き出す。
「なに?」
「あそこに入ってみる」
指差す先、ベンチの後方。彼女と向き合う形から、後ろを振り返る。
そこには馬鹿でかい、異様な外装の…建築物。
全体的に、とにかく大きい。
下部が館、上部が塔の様な…頭上に細長い建物が、あった。
「へえ、アタシの直感が告げてる…率直に怪しいね」
「まあ、わたしも…一口にそうね。
他に特になにもないし、行ってみるのがいいんじゃないの?
あれだけ大きければ、中に人が…誰もいないって事も、ないんでしょうし」
少し思慮した後、彼女は「そうだね」っと賛意と共に呟き、ベンチから立ち上がった。
「すごっ」
建物には、正面の扉から入れた。
内装を見た一瞬間から、条件反射で…感想が漏れた。
物凄くを、何十にも通り越して、凄まじく豪華絢爛。
芸術の域を超えて、唯一無二の聖域のような優雅な空間だったのだ。
「さて、どうしましょうか?」
「ああ、どうしようか」
選択肢でも出てくれれば捗るのだが、、、。
・・・・・・周りを見回すと、この空間の装飾に調和する形で、現代的な昇降機があるのを見つけた。
つまりはエレベーター、建物の外装から判断して…軽く10階以上はあるのだ、あれを使わない手は無い。
「うん、アタシも…それがいいと思うわ」
視線から察したのか、彼女が言う。
しかしなぜか、微妙に唇が一瞬釣り上がったのだが、どういうことだろうか?
スタスタ彼女は歩き、エレベーターの呼び出しボタンを押す。
「さあ、お先にどうぞ」
「ありがとう」
彼女はエレベーターガールのように先導し、内部に入る。
外側からは呼び出しボタンしか無かったようだが、内部には階層指定のボタンがある。
「何階に行く?」
「・・・・・・」
さっきも思ったが、選択肢が出てくればいいのに。
こういう主体的な判断や、決断を迫られる場面は…なぜか苦手だ
それが、なぜかは…わからない。
本当に…なぜか、"ニガテ"と感じるのだ。
この空間では、不可思議な感覚に苛まれてしまう…ような気がする、すべて自動的に決まって欲しいと思う、それはなぜか?。
果たして、意志が介入すれば…責任が生まれる、必然のように…逆に介入しなければ…つまりは、そういう事だった。
わたしは、ただただ見るだけの…観測者に、なりたかった?…???。
それでも、少し考えた。
答え、イコール…最上階に行って、周囲を確認する。
「最上階に」
「そう、それじゃ、アンタは…それはつまり、27階という事でいいのね?」
なぜか念を押してくる、訝しく思いながら頷く。
「本当に、それでいいのかい?」
「いいよ、、、なにか問題がある?」
「いいえ、ないわ、、、アタシにはね」
よく分からない返答だった、まあ特に気にもならないが。
エレベータが上昇する感覚、27階ならば多少時間が掛かるだろう、目を瞑る。
「うん?」
少し経った、しかし、これは。
目を瞑りながら疑問に思う。
あまりにも、時間が掛かりすぎてはいないか? 目を開ける。
「あっ!」
誰も居なかった、というより彼女が消えている。
どういう現象か意味が分からない、こんな密室、外部から隔絶された場所から忽然と消えるなんて、、。
「お、おい、、、おーい」
と、いうより、気づいた、気づいてしまった。
上昇するエレベーターの、その天井が、なぜか微妙にズリズリと下がってきているのだ。
「あああ、ぁぁぁああ」
混乱が混乱を呼び、恐怖と不安が加速度的に高まっていく。
なにか打開策はないかと、検索、検索。
だが、何もない。
その間に、天井は手を伸ばせば届く高さに。
ジャンプして、手で押し返せないかと試してみる、だが案の定、無情に無理だった。
「ううぅ、、」
だんだんと恐怖が本格化してくる。
真近に迫った死、不安は一線を越えて現実に、むしろ詰んだ感すらある。
それでも、諦めなかった。
諦めたら、そこで"終了"だと感じるから。
「ぐっうぅ!!!」
まず、頭上から迫る、既に身長ほどの壁を全力で押し返してみる。
まったく動じず、それでも力の限り押し続ける。
だがすぐに、真っ直ぐに立っているだけで…押しつぶされる高さになったので、だんだんとしゃがまされる。
それでも死力を振り絞って、微かすぎて…感じれないほどの希望に縋るほかなかった。
そして、最後、地べたにへばり付く様に…なった。
完全に、頭上の天井と地面の隙間に、自分がいる形だ。
一切身動きできず、もう終わりだと思った瞬間だった。
そこでガタンと、大きな音がして…エレベーターが止まった。
何のチャイムの音も無く、扉が左右に開かれるのが分かった、
扉の方を向いてへばり付いていた、外の光景が見える。
誰かの黒い靴が見えた、その後…その人物がしゃがみ込む様な仕草、彼女だった。
黒い瞳と目が合う、哀れな姿が面白いのか…なんだか愉快そうな感じ。唇が笑みを結んでいる。
「どう?」
「わたし、動けないんだ…どうにかならないかな?」
「そうじゃなくてさ、どんな気分?」
「はあ?」
「だからさ、ああ…なんて言えばいいのかなぁ、、、。
つまりさ、もう直ぐ…もうあとちょっと。
うん、掛け値なしで数十秒後には…ちょっとづつ押しつぶされて、痛くて痛くて実際痛くて圧死な展開について…だよ」
「え?」
「えっじゃないわよ、その件について…どんな気分かを教えてよ、お願い一生のお願い」
「た、助けられないのか?」
「うん無理、だから…最後にアンタの言葉が聞きたくてさ」
「し、死にたくないよ! どうにかならないのかぁ!」
「ふっふっ、いいよいいよ、でも、ごめん無理。
てかさ、なにも思わないの?」
「っ!、はあ?!」
「いやだからさ、馬鹿じゃないんだから…平然とこちら側にいるアタシについてだよ」
「それは、、」
「うんうん、その目は本気で意味不明と。
あーあーぁそりゃ分からないよね、そりゃそうか…面白い推理が聞けると期待したけど、裏切られちゃったぁー」
「う!!ぅぅ!!、、ぎぃがっがぁ!!!」
天井が、先ほどよりもずっとジリジリと…感覚的には1mmづつくらいで、降りてきた。
「ありゃ、もう時間だねっにゃははっ…うふっふっふふうっ、死ぬんだね」
頭蓋骨が割れる、ように痛い。
体中が圧迫されて、引き裂かれるような痛み。
これは、死ぬような痛み…だ。
「ぐぅっぁあっああああ!!! どっどうすればぁああああ!!!???!!!!!!!」
「どうすれば?
そりゃ簡単だよ、いきなり最上階に行くなんて…あの時、選択しなければよかった…ただそれだけだよ」
もう、彼女が何を言っているのか分からなかった…思考が曖昧に…曖昧になっていく。
「馬鹿じゃん。いきなりクリアさせるなんて、あるわけないじゃん。
ちゃんと、段取り整えてくれなきゃいけない…ってこと。
で、事前に定めてたルールによって…死刑ね。ばいばーあい」
目が霞む、視界が滲んでいるのを自覚。
ぐしゃん。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
眩しさを感じた
目を開ける。
「おはよう。って、別に朝じゃないけど…目が覚めた相手には、言いたくなるよね」
「、、、、」
意味が分からなかった。
だが、微かにこの状況を連想的に言い表す…言葉を知っていた。
幾ら想像しても納得いかないが、ループ的な状況らしい。
「、、、、」
「あれ、もしかして…これは超レアなタイプかな?
引き継いでる? もし引き継いでるなら、どのレベルで?」
興味津々な猫のように、迫って質問してくる。
さて、どのように…この場合、次の対応を選択しようか?
熟慮の余地が…ありそうだ。