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とある王国『トアル王国』  作者: 真冬梨亜
異世界召喚ととある少女のチート
15/15

とある少女と勇者の少しの別れ

はい、一ヶ月ぐらい過ぎました…。

ついでに話も1年ほど飛んでいます。

物語の人にとっては濃い一年かもしれませんが、私たちにとっては薄いペラペラの一年でしたね!

なんかすみません!



その伝達が届いた時、私は憂鬱になった。

『ティファイン帝国が勇者を使って戦争を仕掛けてくる』

その手紙が私の目の前にある。

1年間。

とても濃い日々だった。

私が魔法でやらかしたり、私が魔法でやらかしたり、私が魔法でやらかしたり....。

....やらかした記憶しかない。

そんなやからした私を勇者たちは色々と労わったりしてくれた。

彼らと私の縁はそう簡単に切れなくなっていた。

少なくとも、私の中で。

私が仕事でここに来たのは確かだ。

けれど、1年。

そんな簡単に仕事が終わるとは思わなかった。

彼らは優しく、元気で、いい人達だった。

「寂しいの?」

ふと、呟く。

そうなのかもしれない。

私はいつの間にか、彼らに情を持ったのだ。

戦争では敵同士なのに。

....私は戦場へ出ないけれど。



時計を見れば、7時半を回っていた。

彼らは明日には帝国に戻らなければならない。

私は静かに部屋を出て、学園へ向かった。



「おはよう、フラン」

「....おはよう、ケイスケ」

教室に入れば、ケイスケに挨拶された。

微笑んで挨拶を返せば、怪訝な表情をされた。

「元気か?」

「うん、元気」

「....」

ふと、そこで呟いてしまった。

「ねえ、帝国に帰ったらどうするの?」

「魔王を倒すんだ」

帰ってきた答えは迷いのない即答。

「どうして魔王を倒すの?」

そう聞けば、教室がざわめいた。

「なぁ、フランは何も知らないのか?」

タツヤが慌ててこっちへとやってきた。

....そうか。他の国にとっては魔王は悪なのか。

少しやらかしてしまったようだ。

でも、私は彼らを止めたかった。

「魔王は何をしたの?」

「魔王は....この世界を侵略しようとしている」

....魔王、宇宙人説か?

確か、どっかのカエルのような宇宙人が侵略しようと奮闘する話があったような気はするが....。

「どうやって?」

私はこの言葉にタンスの角へ小指を....とかじゃないよね、という言葉を心の中で加える。

まさかほんとに、あのカエルじゃないよね?

「魔物を使って」

その言葉に私はほっとする。

顔に出ていたのかタツヤが不審そうな顔をした。

「フラン....どうして安心したような顔をするんだ?」

ケイスケがそう聞いてくる。

まあ、安心するわ。

あんなへっぽこ魔王が獰猛な魔物を手なずけるなんてできるわけないから。

力は有り余ってるくせに、いつも魔物には一歩引いてる。

しかも、陛下にしがみつく有様だ。

魔王の手下の魔族が、頑張ってなきゃ、今頃、魔王領は反乱で消えてるわ。

....ということを言いたいけど、言えない。

でも、そんな噂が流れてるなら。

「エセ魔王なの?」

そう言ってハッとする。

あたりを見回せば、みんなが怪訝な表情だ。

「エセ?偽物の魔王がどうしたんだ?」

チャンス!ここでその冷酷非道な魔王を否定する。

「本物の魔王は、頭に花が咲いていて、腰抜けへっぽこなんだよ。つまり、あなた達が言ってる魔王は思いっきり偽物ってこと!つまり、戦争は意味無い!」

思わず声を大きくしてしまう。

そこで、流れ的に言ってみる。

「お願い、戦争には行かないで」

そうすれば、みんなが納得したような顔をした。

なぜに。

「フランは優しいな。だけど、俺達が行かなきゃ魔王は....」

「どこと戦争するつもり?」

もちろん答えは知ってるが、一応聞く。

ケイスケは頭を掻きながら答えた。

「言っていいのか....」

「トアル王国だ」

タツヤが迷わず答えた。

「....どういう国だか知ってるの?敵の人数は?強さは?」

「皇帝の命令だ。逆らえるわけがないだろ」

「殺されるかもよ?トアル王国に」

「皇帝は小国って言ってたけど....」

タツヤの言葉に言い返してみれば、ケイスケが困った顔で答えた。

「....トアル王国は」

そこで、ドアが開いた。

「あれ?みなさん、時間ですよ。席に着いてください」

先生が入ってきた。

先生の言葉に誰も動かない。

先生はそれを一瞥し、考えるようにこちらを見た。

「何があったのですか?」

私はそこで先生に返答する。

「先生。トアル王国という国を知っていますか?」

「まあ。知ってますね」

「では、教えてください」

「....ホームルームの後の私の授業でお教えしましょう」




「では、勇者のためにもトアル王国について授業をしましょうかね」

帝国がトアル王国と戦争を始めるというのは、一週間前には世間の噂として出ていた。

私は、その噂を聞いて、トアル王国がどういう認識で人々の頭の中にあるのか、それが気になった。

陛下と国民のことだ。

偽りの知識である可能性が高い。

少なくとも、私はそれを正したい。

例え....トアル王国に逆らっていたとしても。

「トアル王国は小さい小国で、化け物王国という噂が出ています」

その先生の一言で教室がざわつく。

「....化け物?」

「道理で魔王と同盟結ぶわけだ」

「なるほど」

私はそれをこっそりと聞く。

「まあ、噂であり、事実は先生もわかりません。ただし、鎖国的で、トアル王国の出身だという人は聞いたことありませんね。さて、トアル王国は実のところ歴史にも刻まれていない謎の国です。1部、トアル王国へ行ってきたという人がいるのですが、彼がいうには『地獄と楽園が同じ場所にある』という事でした。よくわかりませんが、地獄であり、天国のような場所であるという所でしょうか」

その言葉は本当だと思う。

ほかの国の人にとって、我が国の周りはボスが常に歩く地雷地帯だ。だが、中に入れば、身分の格差もない経済も豊かで、人も優しく、誰もが住みたがる天国のような所だと私は思っている。

特に、初めて奴隷を見た時がそうだ。

「なんだそれ」

誰かがそう呟く。

「阿鼻叫喚なのに、それを幸せに見てるノー天気な奴がいるのか?」

それは、故郷への悪口。

「化物たちの神経は図太くて地獄のような所も天国に見えるんじゃない?」

「「「そうかも!」」」

次第に教室が賑わっていく。

故郷をバカにされる。

そんなことが私にはどうしても許せなかった。

気づいたら立ち上がっていた。

「フランシェさん?」

先生の声に、みんなが静かになって私を見つめているようだけど、私は全然分からなかった。

「私の国を馬鹿にしないで!」

気づいたら叫んでいた。

周囲から息を呑む音がする。

やってしまった。

あとになって生まれる後悔。

震えて席に着けば、ケイスケが驚いた顔で私を見ていた。

「お前....」

「フランシェさん。あなたは、トアル王国の出身なんですか?」

もうあとの祭りなのは知ってる。

もう、自国の情報を少し言って、この学園を出よう。

「そうです。トアル王国は私の国。世界で1番古い国です。そして実力主義の国」

「じゃあ、化け物というのは....」

「化け物....というのはおそらく精鋭の騎士のことですかね?精鋭の騎士というのは、建国当時から、存在している不老不死の人です。彼らは強くて死なない」

「....死なない」

先生が青ざめた顔で私の言葉を反芻した。

私はさらに続ける。

「私は敵国の人間です。最後に一言。この学園....世界最高の魔法技術でしたっけ?」

先生を見れば、青ざめながらもしっかりと首を縦に振っている。

「全然でたらめですね」

そう言えば、先生が呆気に取られたようにこちらを見た。

私は魔法書を出す。

教科書として暗記してなんとかテストはこなしてみたが、これまでの正しい魔法が私を邪魔して散々な結果だった。

書き込みも一切していない。

ただの教科書。

私は適当なページを開く。

この魔法陣もくだらない。

こんなの、3秒で書ける魔法なのに、この魔法陣は1分もかかる。

私はそれを机の上に置く。

そして、先生のところへ歩を進める。

「先生、今までありがとうございました。そして、みなさんも。最後に自己紹介だけしておきましょうか。」

全員が私の方を向く。

私は剣を静かに抜く。

隣の先生が息を呑んだのが聞こえた。

私は剣の切っ先を上に向けた。

「私の名はフランシェ・クロツウェル。トアル王国5級騎士。陛下の命によりここへ来た」

そう言い、鞘へと剣を仕舞う。

「お前....」

先生が驚くようにこちらを見ながら、詠唱の準備を始めている。

先生の詠唱は初級の捕縛魔法か....。

30秒はかかるね。

「座標4,28。トアル王国転移」

私はそう言って『転移』した。

次の瞬間には変わらない、トアル王国の門が立っていた。

ほんの少しの別れだ。

そう思いながらも胸にポッカリと穴が空いたのを感じて私は虚しくなった。




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