とある勇者とあいつの行方
俺はケイスケ。
異世界に召喚され、勇者となってギガント学園で色々と学んでいる。
クラスでは主に達也とフランシェと仲良くしているんだ。
食事にはなぜか、幼なじみのミズキと俺達を召喚したティファイン帝国の王女、ティロンさんが一緒にいる。
この学園に来て1ヶ月。
色々なことがあった。
俺は無事に強くなってきている。
達也も、瑞希もティロンさんも上位をお互いに争うライバルとなっている。
ただ1人、その中で仲間はずれなのがフランシェことフランだ。
フランは魔法に関して落ちこぼれだった。
これはあの日のこと。
「今日は魔法の記述テストの返却を行います」
先生の言葉に俺達は息を飲んだ。
「ケイスケ」
俺の名前が呼ばれ、俺はテストを貰う。
出てた点数は95点。
これは期待できる点数だった。
すべてのテストを返し終え、先生は笑って言った。
「みなさん、出来が良くて驚きです。平均点は74点です。明日解説をしますので、忘れないでください。それと、フランシェさん」
その言葉に全員がフランの方を向いた。
フランが真っ青な顔で先生の方を見た。
「後で、指導室に来てください」
その言葉だけでだいたいわかった。
フランは....赤点だ。
場は移って食堂。
「フラン....大丈夫か?」
達也がそう言って、フォークでスパゲティを混ぜながら聞く。
「うっ、大丈夫です。なんとかなる....はず」
「あれは、結構簡単なはずなのに....」
瑞希が可哀想なものを見る目でフランを見た。
瑞希はどんまいをかけないやつだ。
心に刺さったのかフランはいきなり、手を動かしのをやめ、右手をテーブルに叩きつけた。
ビシッという音がして、テーブルにヒビが入った。
おいおい....どんだけ力強いんだよ。
ステータスは普通なのにな。
「あんな問題を出すのが悪い!」
フランは逆ギレした。
「だいたい、あんなにめんどくさい方法でやるなんてバカにも程がある!....だから、....になるはずなのにぃ....」
ぼそぼそとところどころつぶやくもんだから、よく聞こえなかった。
俺達はフランの様子に話を変えることにした。
「そういえば、目黒どうしたのかな?見かけねえ」
俺がそう呟くと、ティロンがむせた。
「ゴホッゴホッ」
「大丈夫か?」
達也が呆れたようにティロンに視線を向けた。
その目は王族らしくないぞと言っている。
「じ、実はわたくしも見かけてないのです」
「....そうなの?」
「なんか、事件か?」
瑞希と達也が興味津々に聞く。
「メグロさん?誰?」
こちらに戻ってきたフランがそう聞いてくる。
「目黒は、俺達と一緒に来た勇者だ。この学園にいるはずなんだが....」
俺がそういえば、フランが少し反応した。
達也もそれに気づいたようで、フランに追求を始めている。
「ほうほう、知ってるんだな?」
「え、ええっと、初めて聞いた名だね」
「どこにいるか知ってるのか?」
「さ、さあ?」
フランの視線は斜め上を向いている。
怪しい。
「知ってるんだな?」
俺はそうフランに聞く。
瑞希もティロンも目を光らせている。
フランは少し視線をさ迷わせたあと、ため息をついて答えた。
「ギルド行けばわかるんじゃないかな?ギルドでその名を出してご覧よ」
何故、目黒のことを知ってるのか怪しいのは言うまでもない。
放課後、俺達は冒険者ギルドへ来ていた。
学園の放課後は街を歩いてもいいのだ。
「へえ....こんなところなんだ」
呑気に瑞希がそう言ってあたりを見回す。
むさ苦しい男達がわんさかいる。
その男達はフラン、瑞希、ティロンを興味津々に見ている。
ティロンは王女らしく気品を保ったまま、カウンターへと行く。
フランは周りに目もくれず、カウンターのお姉さんへと話しかけた。
「すみません、ランクEのフランシェです。『ナイスパーティー』の情報を教えてください」
その声に周りがフランに一気に鋭い視線を向けた。
っていうか、なんだよ『ナイスパーティー』って....。
「かしこまりました。『ナイスパーティー』のメンバーはバルトさん、ラムさん、ロザンヌさん、ソータさんの四人メンバー構成で、現在Cランク。この街にはおりません」
「そうですか、ありがとうございました」
フランはそう言って、俺達の方へと体を向けた。
「だってさ」
「だって?」
達也が首をかしげる。
「メグロって人は、ソータという名前の人でしょ?彼なら、ギルドに入って冒険者としてやってるってことだよ」
フランはそう言って、適当な椅子に腰掛けた。
「....今の言いようだと、メグロさんはこの会ってない間にCランクになったってことですか!?」
ティロンが驚いたように叫んだ。
そこへ、カッコイイ冒険者風の男がやってきた。
「はは、君らも『ナイスパーティー』に驚いているんだね。俺も驚いてるよ。まさか、Eランクの依頼を間違えてCランクの洞窟に入ってあっさりボス倒しちゃうなんてね」
金髪ロングを靡かせて彼は言う。
ティロンは興奮して叫んだ。
「Cランクの洞窟に!?Eランクが!?これはすごいことですね。一体どうやったらそんな荒業を....」
そんなティロンを満足そうに見て、男はフランを見つめた。
「フランシェさん、せっかく冒険者になったんだから、俺と一緒に」
「お断りします」
フランは1度も男を見ずに断った。
「パーティーとかくだらないです」
そう呟けば、男は罰が悪そうに去っていった。
「....フラン、パーティー嫌なのか?」
達也がそう聞く。
「もちろんです。コミュニケーションがめんどくさい」
その言葉に突っ込みたいのは俺だけか?