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とある王国『トアル王国』  作者: 真冬梨亜
異世界召喚ととある少女のチート
11/15

とある少女の力加減への苦労

私はフランシェ。知り合いにはフランと呼んでもらっている。

私は、今まで様々な試練を乗り越えてきた。

国からの任務でもう1週間。

最初に私のひいおじいちゃんのヒョロヒョロ剣術よりも遅い、先生の剣術。

簡単すぎて、どうしようもない魔法試験は、魔力なしの気合でやり過ごした。

気合でどうやって?

それは簡単。

火魔法は指の摩擦で火をつけ、水魔法は見えない速さで、コップの水をこぼし、土魔法は見えないように足で土を蹴りあげた。

風魔法は詠唱終了と共に手を振りあげ、風を起こして、治癒魔法は....使わなかった。

『私に使える治癒術は、口内炎を治すくらいしかありません!!』

我ながらいい言葉を使ったと思う。

先生や皆は口をぽかんと開けて、しまいには、

『口内炎....ですか。なかなかユニークな治癒術で....』

と苦笑いで言っていた。



今は、魔法の属性授業中。

「魔法には火、水、土、風、光、闇、治療術などと言った様々な属性が存在します。そして、さらにそこから色々な派生して....」

どうやら、魔法の基本原理の授業らしい。

大まかに先生の話をまとめると、世界には様々な属性があり、人間にもそれは当てはまる。

人間の体も属性に当てはまって出来ている。

だから、使える属性は人それぞれ。

人は生まれ持った属性しか扱えないんだという。

逆に魔法陣を描けば使えるが、手間がかかるからやらないみたい。

正直言って、間違っている。

属性は人間がわかりやすいように簡単にくくった枠組み。

誰だってどんな属性も使える。

現に我が国は全員すべての属性を使える。

しかも、属性にないくくりまであると来た。

魔法陣は巨大な魔法をコンパクト化して使う魔力を節約することができる、便利なもの。

先生は話を続けている。

「〜ここがテストに出ます」

「!?」

カタンという音で全員が私の方を向いた。

しまった。ペンを落とした!

慌ててペンの行方を追えばケイスケの方へと転がっていく。

「ご、ごめんなさい....」

小声でケイスケに謝ればケイスケは笑いながらもペンを拾ってくれた。

「いや、テスト大変そうだね」

何かを察したのかケイスケはそう呟いて前を向いた。

....そう言えば、私は魔法の初心者だ。

先生の言葉とペンを落としたタイミングと言い、明らかにテストに動揺していたと捉えられる。

ま、仕方ない。

目立たなければいいかな。

そう考えを巡らせていれば、チャイムが鳴った。

「では、今日はここまでです。しっかりと復習しておいてください」

先生はそう言って、教室を去っていった。

....そういえば、随分前にティファイン帝国の王女様が剣を挑んできたんだっけ。


あの時は本当に焦った。

私の流派はトアル王国特有の物だし、なんか賭けもされたし....勝ったけど。

「フラン、達也と飯を食べるんだが、いつも通り一緒に食べないか?」

ふと、ケイスケにそう呼びかけられる。

そう、ケイスケとタツヤとは監視ついでに一緒に食事を食べさせてもらっている。

そして、最近はなぜか、ミズキさんとティロンさんが加わっている。

監視の身としてはホクホクしてる。

....でも、なんかこのギガント学園では豪華キャストが集結というようなメンバーらしく、目立ちたくない私としては良いような悪いような....。

私は平凡少女で通っているので、学園の人の視線が痛い。

閑話休題。

今日は用事があったんだ。

「ごめんなさい、今日は用事があるからみんなで食べてて」

お断りをすると、なぜか、ケイスケが食いついてきた。

「えっ?何の用事?」

....なんて答えよう。

「ちょっと、魔法の勉強があれだから....」

「だったら一緒に教えようか?図書室だろ?」

「いや、とりあえず、寮に戻ろうかなと」

「どうして?」

こっちがどうしてなんだけど。

どうしてこんなに食いつくの!?

「おい、佳祐。フランが引いてるぞ。ちなみに俺の方が佳祐よりも教えるのが上手いぞ」

ケイスケの肩を叩きながら、タツヤが言った。

私はさりげなくドアの方へと向かう。

「どうしても、1人で集中したいから....」

2人は諦めたのか、教室から出れば追ってこなかった。

よし、さっさと行こう。

待ち合わせ場所は学園の体育館裏。

早く行かなければ!

私はそう思い、足早に廊下を歩いた。






「ずいぶん遅かったわね、フランシェ・クロツウェル。別にいいけど」

体育館裏に行けばそう言われた。

彼女はトアル王国の精鋭の騎士であり、永遠の隠密部隊の1人、サク・アットラー様。

永遠の隠密部隊は騎士との枠とは微妙に違って、毎年トーナメントで決めるとかではなく、国王直々にお声を賜ってなることが出来る。

脱退はしてもいいけど、その部隊からの降格は正直言ってない。

しかも、選ばれるのは数100年に1人とからしく、その上、精鋭の騎士であることが条件らしい。

つまり、不死身。

サク様は千年前に精鋭の騎士から昇格したらしい。

そんな彼女は切れ長で漆黒の目にお団子の青い髪。

学園の中だからか、制服を着ている。

身長的にも年齢的にも学生が似合っている。

それは、サク様が隠密部隊のひとりだからでもあろうか。

私はサク様と会うために彼らとの食事を断ったのである。

私はお辞儀をする。

「申し訳ありません。予想外なことがありまして」

「問題ないわ。とりあえず、近況報告を」

「はっ、私は現在Aクラスに潜入。ケイスケとタツヤという生徒と主につるみ、観察をさせてもらっています。現在接触できた生徒はケイスケ、タツヤ、ミズキ。それから、ユウノという勇者と一言だけ交わしました」

「ふうん....で?学園はどうなの?」

「学園の学力、武力、質は上々とは言えません。むしろ、酷いと思われます」

「まあ、我が国が異常だと思いなさい。とりあえず目立たず、気を抜かず、完璧に」

「かしこまりました」

「それから、一つだけ。トアル王国は魔王と同盟を結んだわ」

「....またですか」

私は思わず、呟く。

魔王と同盟を結ぶことはしょっちゅうである。

倒されては蘇り、倒されては蘇り、よくやるものだと私は思う。

そのために、復活する度に同盟を結びに行く国王は大変だと思う。

「勇者と魔王は帝国の動きからして敵対関係となっているわ。もし、勇者が招集された場合、最悪、私達と戦うことになるわね」

「....そうですか」

彼らと戦う。

出来ればしたくない。

「ま、戦うのは私達精鋭の騎士よ。あなたは気にしないで。全くあの頭に花が咲いてる魔王のせいで色々と仕事が増えるんだから」

サク様はブツブツと魔王の文句を言っている。

「あ、あとね。勇者が1人、学園を抜け出したわ」

「え?」

その言葉に私は固まるしかない。

勇者の動向を気をつけていなかった。

まさか、学園を....。

「安心して。学園を抜けたのはあなたに会う前。おそらく皇帝の様子を見て不審に思ったのでしょう。現在、ギルドで活動中よ。彼には勿論、あなたと同僚の5級騎士3人をつけてるわ。心配ないでしょうね。....多少やらかしてるけど」

サク様は視線を上に向けてそう言った。

何をやらかしたんだ....。

「何をやらかしたんですか?」

「初っ端からCランクの強さの洞窟に入り、軽々と帰ってきたようね。おかげで、もうCランクよ。勇者もレベル30とか....」

やりすぎだ。

確かに、それはやらかしてる。

「とにかく、フランシェも気をつけなさい。そろそろ行くわね」

「はい。ご苦労さまです」

私はお辞儀をして、サク様が体育館裏から去るのを見送っていた。

それにしても、魔王か....。

人間はほぼ魔王に敵対心を持ってるからな。

私は考えながら、来た道を戻る。

「ちょっ....」

そこへ角のあたりで声が聞こえる。

もしかして....盗み聞き?

だとしたら、まずい。

証拠隠滅しなければ、私の招待が....。

私は急いで角を曲がる。

「何者っ!」

そこには....ケイスケ、タツヤ、ミズキさん、ティロンさんが立っていた。

「わ、悪い....フラン。覗く気は....」

「相手は女の子だったな」

「お友達とお話?」

ケイスケ、タツヤ、ミズキが口を開く。

私は呆然と突っ立ってしまった。

何やってんの?こいつら。

話の内容から、私たちの正体がバレたわけでもないし、話を聞かれたわけではないらしい。

良かった....。

「さっきの方、遠目でもすごい美人でしたね!フランさんはどうやって知り合ったのですか?」

「え、ああ。遠い親戚です」

「そうですか!」

ティロンさんはやけに嬉しげにそう言った。

何はともあれ、非常に疲れた。

まさか、覗きとは....。

心の中で頭を抱え、私は笑顔を取り繕う。

「予鈴が鳴るよ?行こう?」

しばしの静寂が続き、みんなが黙って頷く。

うん、わからない。

彼らの意図が全くわからない。

私はそう思いながらも歩き始めた。

とにかく、私の苦悩は続くようだ。



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