chapter.20 騒動の後
ギルドの外は様々な店が立ち並ぶストリートになっている。
そこに、突如として謎の集団が現れ、暴れ始めたらしい。
目的は金なのか、はたまた他の何かなのかは判らないが、このまま彼らの好き勝手にさせていたら人命に関わる。それを阻止するべく、冒険者達が戦闘を始めようとしていた。
だが、結果だけで述べるならそれは叶わなかった。
何故なら、帝国所有の自動機械人形部隊が颯爽と現れ、事態を収束させたからだ。一体のリーダー格を中心に、見事な連携プレーで賊を追い払ってしまった。
鮮やか過ぎる手際に、ミナは少なからず違和感を覚えていた。
明らかに賊が現れてから帝国軍が現れるのが早い。いや、早過ぎる。まるで初めから打ち合わせされていたかのようだった。
『まあ、臭いわな。明日に控えた自動機械人形部隊の演習のための客引きか』
ルクシオンの念が飛んできた。
考えていることは、ミナと同じようだ。
(その可能性は高い。あの指揮官みたいな自動機械人形、なんだか腑に落ちないって顔だったし)
帝国の所有していた自動機械人形は、一体を除いて全て本当の人形のような風貌をしていた。動きも固く、操り人形のようだった。
だが、指揮官風の一体だけは違った。
少女の外見であったが、見た目は普通の人間にしか見えなく、動きも人間に近いものだった。しかし、よく見ると関節の動きが明らかに普通じゃない場面があったので、指揮官の少女も自動機械人形であるとミナは結論付けた。
『やっぱ指揮官も人形かいな。ミナはよう見とるのぅ』
(ルクシオンも気付いたでしょ)
『まあ、そりゃな。やけど、周りの連中は気付いとらんみたいやで』
(みたいだね。他はどうでもいいけど)
筋書き通りのような場面を見せられ、冒険者達もだいぶ萎え気味である。皆ギルドに戻ったり、一杯やりに行ったりと、散々だ。
それに反し、住人達は帝国の活躍に大歓声であった。
まあ、自分達の住む街を、こんなにも優秀な部隊が守っているのだから、嬉しくもなるのだろう。だが、実際のところこの事件はやらせにしか見えない。そう感じた住人が一体何人いることやら。全て帝国のもくろみ通りとなると、ミナとしても面白くない。それに、さっきの指揮官も、納得いかないような顔をしていた。そんな風に見えた。
「なんだか釈然としないね」
そう言うヴィクトルも、同じく納得いっていない表情だ。
「そうですね。何か裏があるって感じでした。恐らくは想像通りなのではないかと思いますが」
「かな。でも、気に食わないやり方だ。住人達だって無傷じゃなかったろうに。自分達のことしか考えていないんだろうか」
「そうでしょうね。でなければ――」
――私をこんな風にはしなかった。
さすがにそうは言えないミナは、そこで言葉を切った。
自分達の都合でミナを、その家族の全てを奪った。国を守る存在の騎士が、その住人を貶めるなんてことあっていいはずがない。帝国の性根はとことん腐っているということになる。
「――? えっと、それで、明日はどうしようか」
「演習の件ですよね。私は見学していってもいいと思います。1日2日遅れたからといって何かが変わるわけでもないですから」
「それもそうだね。なら、明日は自動機械人形部隊の見学にしようか。帝都行きの列車にはその後でってことで」
「はい。問題ありません」
こうして、ミナ達は帝国が所有する自動機械人形部隊の演習を見学することとなった。




