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異世界人の英雄殿  作者: 海蛇
外伝最終話.おれたちのぼうけんはこれからだ!!

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#1.彼はすごく良い奴だった

 城に戻った俺とお姫様を出迎えたのは、あの眼鏡のお偉いさんだった。

心底へとへとと言った様子で、くたびれた顔をしていた。

「姫様。それにカオル殿。よくぞお戻りに。さあ、こちらへ」

てっきり城の者に取り囲まれるのでは、お説教の一つも始まるのではと思っていたので、この展開は予想外だった。

お姫様の顔を見るが、やはりあちらも想定外らしく、首をふるふると振る。

「ご安心を。罠にはめようとか、そういうものではありませんから」

俺達が不思議がっていたのを、何か警戒しているのだと勘違いしたらしく、眼鏡の人は苦笑していた。

偉い人だけど、結構人の良いおっさんだったらしい。


 そのままついていくと、大広間、そしてその奥にある大きな銀縁の椅子と、それに腰掛ける爺さんが見えた。

頭には金色に光る冠。どうも、あれがこの国の王様らしい。

「――陛下。姫様と『異世界の英雄』カオル殿をお連れ致しました」

「うむ。ご苦労。下がってよい」

白髪頭の髭の王様。お姫様もそうだが、王様も大概に『いかにも』な外見だった。一目でソレとわかる。お姫様にはあんまり似てないが。


「――さて」

お偉いさんがいなくなり、王様は思い出すように俺達の顔を見る。

「此度は、随分と思い切ったことをしたのう。姫よ」

「お叱りは受ける覚悟です」

頬を引き締め、お姫様は王様をじっと見つめた。

「ですが、こうでもしなければ止まらないと思いました」

「そうか」

はっきりと言ってのける。

自分の親父だからできるのかもしれないが、俺は王様を前にちょっとびびっちゃってたので、お姫様の度胸はすごいなあと感心してしまう。

「トーマスめがな。お前の救出のためとか騒いで城の兵を全員連れ出しおった。ついていく兵もついていく兵だが、まっこと恐ろしいものよ」

おかげで城の守りががら空きだわ、と、王様はカラカラ笑っていた。

「感謝するのだぞ。アレは、お前の本当の理解者だ。ワシよりも何よりも、お前の為にと動ける男だ」

「……トーマスが。まさか、気付いて……?」

皮肉っぽい王様の言葉に、お姫様の碧い瞳が震えた。


 もしかして、と思うところはあった。

その気になれば俺達が戻るであろう街やなんかに先回りする事だってできただろうに、追手はご丁寧に俺達が街に入ったすぐ後にやってきたのだ。

こっちはお姫様を連れての旅だ。

どんなに急ごうとしたってどっかで無理が出るから、そんなに早くは進めなかった。

城兵隊がそれに追いつけなかったのは、本当にお姫様の策が当たったからなのか、と。

もしかしたら、俺とお姫様が出会った時の忠告すら、お姫様の行動を読んでの事だったのかもしれない。


「まあ、よい。それよりもカオルよ。ワシはそなたの話が聞きたい。こうしてワシの前に立ったのだ。何か面白い土産話の一つも聞かせるのが、英雄なり勇者なりの務めではないか?」

「まあ、俺はどっちかっていうと女神様の遣いなんですけどね」

英雄って語れるほど英雄っぽくないし、勇者と名乗れるほど勇気なんてない。

だが、女神様の遣いという点だけは胸を張って言える。

「面白い話、沢山あるぜ。心して聞いてくれ」

だから、俺は女神様の遣いとして、最高の土産話を王様に聞かせてやることにした。



 まずは大臣の倅の話から。

・城勤めの女官を口説くことこの一月で二十五回。

・実際に手を出してしまった回数が三回。

・お姫様付きの侍女を口説いてその娘の恋心を利用してお姫様の部屋へ侵入。

・お姫様の下着や服を盗む事二回。未返却。

・女に貢ぐ金ほしさに仕事を手伝う振りをして父親がまとめていた税金の一部を着服。

・自分の対抗馬になりうるほかの貴族の男性や文官を大臣の息子という立場を利用して恫喝。

・友好国の姫君(すごく可愛い)に対ししつこく言い寄り横面を思い切り叩かれる。


「うむ。死刑じゃな」

「私も死刑で良いと思います」

「同情の余地はねぇな」

満場一致だった。

この中でも特にやばいのは税金の着服と他国の姫君に言い寄った事だろうが、個人的にはお姫様の下着盗んだりしたのが一番人として駄目な気がした。

「ろくでもない奴だと思っておったがここまで酷いとは思わなんだ」

「俺もこれはちょっと『密かに想いを寄せてる』で許される範囲じゃないと思ったよ……」

こんな奴が幼馴染とかお姫様が可哀想過ぎる。

もし俺が女だったとしてもこんな奴が幼馴染だったら死にたくなるに違いない。

「……昔は良い人でしたのに」

だが、ぽつり、呟いたお姫様は、どこか悲しげだった。



 続いて王様の弟の大貴族の話。

・立場を利用して自分の部下の娘(五~八歳)に自分との湯浴みと添い寝をさせていた。

・パーティー会場にて夫に先立たれた女性領主を口説くも、実際にはまだ幼い娘目当てだとバレて結局金と権力で隠蔽。

・部下を使って自領内の村で気に入った少女を『(とぎ)の相手にするため』と誘拐、三つの村と町で合同蜂起されかけ武力で鎮圧。関係各所に対しては金で隠蔽。

・狩猟の合間森で見かけた少女を口説こうとした際、これを妨害した青年(少女の兄)に難癖をつけて牢屋に放り込み放置。

青年はその後餓死。一緒に囚われた少女も兄の死を知り後を追い自害。

・これに激怒した二人の村の村人らが領主館に放火、大炎上するも大増税によって新たな領主館を建てる。

・友好国の姫君(すごい美少女)に対ししつこく言い寄り横面を思い切り叩かれる。


「カオル。もう解った。いい」

それ以上聞かせないで欲しいとばかりに、王様は額を抑えていた。

「まあ、その、なんだ。我が弟ながら、本当に救いようのない奴じゃて」

「そんな方と結婚させられそうになってた私の身にもなってくださいませ」

バツが悪そうに頬をぼりぼりと搔く王様と、頬を膨らませ不機嫌そうにしているお姫様。

まあ、こんなのと結婚させられた日にはろくなことにならないだろう。

因みに最後の『友好国の姫君』の件はどっちもサララが集めてきた情報だった。

ベラドンナ曰く『やたら自信有り気だった』らしいのでガセではないのだろうが、出所は不明である。


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