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異世界人の英雄殿  作者: 海蛇
外伝五話.とうとうあの人に認められた!!

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22/34

#1.私はあの人に助けられて、本当に救われた気持ちになったんです

 兵隊さんと再会した俺は、互いの事情を説明しあった。

その間に、兵隊さんの連れの人達が暴走しかけてたんだが、それもなんとか押しとどめて。


 兵隊さん達は、壊滅した衛兵隊の増員として召集されてここに来たらしいが、どうやらそれも罠であったらしい。

足下に倒れるこの女悪魔に、討伐隊が向けられる事をばらした奴がいる。

そして、兵隊さん達が塔に入った直後、衛兵隊長は突然姿を消し、扉が閉じられたのだという。

ちょっと考えればわかることだ。黒幕はあいつだった、という事。

誰かに操られてたんじゃなく、あいつがこの女悪魔を操ってたんだ、という事。

俺一人だと解からないことでも、兵隊さん達の事情とかみ合わせると意外なほどあっさりと謎が解けた。


「てことは、街が危ないんじゃないのか?」

お互いの情報から得た結論を兵隊さん達に説明すると、彼らは酷く困惑した様子で顔を見合わせていた。

「街だけじゃないわ。私達が守ってた村だって――」

どうやら兵隊さんを始め、この塔に来た村の兵士のほとんどは村の守りを手薄にしたまま街へと合流したらしい。

つまり、今攻撃されれば、村はひとたまりも無いという事。

中々に洒落にならない。兵隊さん達の焦りも良く解ってしまった。


「なあに、俺に任せとけよ」


 だから、つい、いつもの調子で適当な事を言ってしまった。

黒幕はわかった。だけど、居場所なんて解からない。

だけど、状況の不味さに皆が不安に陥ってるのを見たら、とにかく何か言わなくちゃいけない気がしたんだ。

英雄っていうのは、こういう時は皆を元気付けなきゃいけないんだから。

「……」

兵隊さんは俺を見ていた。何か感じたのだろうか。

なんだかんだで色々付き合いもある。俺の考えてる事なんてお見通しなのかもしれない。

「任せた」

だからなのか。兵隊さんは疑問を挟まずノってくれた。

信頼を感じた気がする。根拠なんてどこにもないのに、この人に信用される以上は頑張らないといけないと、気合が入るのだ。

「おっけー」

だから、俺はその信頼に応えることにした。

草の根分けてでも。



 女悪魔の身柄を兵隊さん達に預け、俺は一人、塔の周辺を探し回っていた。

兵隊さん達の説明どおりなら、衛兵隊長は塔に入った直後か入る直前に離脱した事になる。

つまり、塔の周辺にまだいる可能性も無い訳ではない。

最初に衛兵隊が壊滅した時の状況を考えると、ある程度の時間が経つまではどこかに隠れてるんじゃないか。

塔に入った人達が女悪魔によって倒されるのを確認するまでは、塔から離れる事はないんじゃないか。

そんな風に考えたのだ。

こうやってすらすらと考えが回るようになったのは、異世界に来た所為なのだろうか。

もしかしたら、まだ教えてもらってない女神様の特典か何かなのかもしれない。

頭が良くなる呪いとか、そんなのでもかけられてるんじゃないだろうか。


「まさかなあ」

そんな訳あるかと、つい苦笑してしまう。

だけど、あの女神様ならやってても不思議じゃない気もする。

「……とりあえず、このあたりは居ないみたいだなあ」

地図に細かくバツ印をつける。

中々簡単には見つかってくれないものだ。

やはり、俺一人で出来ることには限りがあるのだろうか。疑問に思ってしまう。

「――いいや、俺の努力が足りてないだけだな」

そして、言葉に出してそれを否定する。

単に努力が足りないだけだ。俺がやれる限りの事をやってないだけだ。

結果は出せるようになっている。きちんとやる事をやれば良いだけなんだから、黙って黒幕を見つけやがれ。

自分に言い聞かせるように、心で何度も何度も呟く。

最悪の事態になんてなってない。村はまだ無事だし、黒幕はきっと、いつまでも塔で悲鳴があがらなくて、今頃首を傾げてるはずだ。


――そう、丁度今、俺の前に突っ立ってる髭のおっさんのように。


「お、お前は……!?」

どうやら、男だらけのかくれんぼ大会は俺の勝ちらしい。

「とりあえず死ねぇぇぇぇぇぇっ!!!」

勝手に驚いてくれているようなので、余計な事はせずに手に持ったままだった棒切れを投げつけ、一撃での決着を狙う。

「なっ――」

ガコンッ、という小気味の良い音。

「ぐべっ!?」

見事顔面にクリーンヒット。一撃で黒幕を地べたに着かせた。


「くっ……ふ、ふざけ、おって――こ、この私が、魔神ゲルベドスが――」

まだ何事かうめきながら言っている。やっぱりというか、悪魔は頑丈だった。

まじんゲルなんとか。微妙に覚えにくい名前だなあと思う。誰が名付けたんだか。

「ぐぅ……このようなところで我が野望が潰えるとは……く、かくなる上は――お前を猫にしてくれるわぁっ!!」

なんかすごく怖い事を言い出した。

「猫だって? まさか、サララを黒猫にしたのは――」

同時に、悪魔によって猫にされたと語っていた猫娘の顔も思い出し、自然、怒りが込み上げる。

「くかかかかっ、恐れおののけっ!! 我が呪い、受けるが良――」

「やっぱりお前死ねぇぇぇぇぇぇっ!!」

倒れたまま手を前に突き出していたおっさん悪魔。

何かが来る前に落ちていた棒切れを拾い、躊躇い無く二回目の投擲。

倒れたままだったゲロなんとかも、流石に二発目の直撃には耐えられなかったらしい。

「――……っ」

今度は無言のまま、ぐしゃ、と顔面を地面に打ち付ける。

そのままぴくりともしなくなる。

むなしい勝利だったが、猫にされなくてよかったと心から思う。


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