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異世界人の英雄殿  作者: 海蛇
外伝三話.とうとう村から街に旅立ったぞ

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16/34

#1.盗賊くらいはたやすくけちらせると思ってた

 村の人たちを困らせていた盗賊は、皆死んだ。


「――はぁ、はぁ……っ」

くったくただった。

膝はがくがく震えてるし、頭も顔も腹も腕も、全部全部全部ぜんぶ、痛くていたくて仕方が無い。

見えている世界はちょっと赤っぽくなってるし、時々真っ暗になったりする。

色々とヤバい状態だな、というのは自分でも解かるが、なんで俺が生きてるのかもよく分からなかった。


 足下には何もない。さっきまでは気持ち悪くて怖くてイカレた盗賊のおっさん達が俺を囲んでたんだが。

棒切れカリバーは、そんなおっさん達も周りの森も、地面さえも抉り取って消滅させた。

なんにも残らない。クレーターみたいになった地面と、俺だけがそこに立っていた。

股間がいやにスースーする。参った、代えのパンツなんて無いのに。


 人を殺した実感なんて感じられない位にあっさりとした盗賊退治だった。

もっと色々覚悟すべきものがあった気もするが、まあいい。

だって、ニュースとかで悪い事やってる奴がいたら、『死ねば良いのに』位思うじゃないか。

実際問題、こちらを殺す気マンマンな盗賊に囲まれてボコボコに殴られたり刺されたりして怖い思いしたら、それ位仕方ないと思うじゃないか。

いや、参った。後味の悪さなんて全くない。むしろ爽やかだ。すっきりした。

女神様のくれたこの棒切れは本当にすごい武器だった。

何せ俺を囲んでいた盗賊は全滅だ。一撃で全滅。なんて効率的な武器だろう。チートってくらい強い。エクスカリバーでも良いくらいだ。


「――はあ」


 段々落ち着いてくる。

頭から血がだらだら流れてる事にも気づく。

それが不自然な速さで回復していく事にも。

少しずつ、体から痛みが薄れていくのもわかった。

あれだけ殴られても刺されても死なないんだ。俺はきっと、本当に死なないんだろう。

最強じゃないか。チートまがいの武器を持って、反則みたいな回復能力持って。

これだけ強いんだ。ちょっと位調子に乗っても、自信を持っても良い気がする。


「ふははははっ!! よくも可愛いワシの手下どもをやってくれたなぁ!!」


 ちょっとだけにやけそうになってたところで、上のほうからでかい声が聞こえた。

なんだろう、と思って見上げると、クレーターの先、正面の崖にでかいおっさんが立っていた。

よく見えないが、黒い何かを右腕に抱えながら。


「小僧!! さてはこの子目当てで来た雇われ魔法使いか何かだろう!?」


 何かよく解らないことを言っている。

多分俺に向けて言ってるんだろうが、もっと近寄って話せば良いのに、なんでわざわざ崖の上から話すのか。

おかげでよく聞き取れない。そもそもあのおっさんは誰なのだろうか。


「ふんっ、答える気もないのか。まあいい。貴様がどう足掻こうがこの子猫ちゃんはワシのものだからなぁ!!」


 じーっと見てると目が慣れてきたのか、おっさんが抱えてるのが猫なのだと気付いた。黒い猫だ。

――あのナリで猫好きかよ。

それ位にしか思わなかった。


「喰らえぃっ!! 城兵拳法ラオパン・ガジャール!!」

おっさん、舞う。

「おおすげぇ」

崖の上からここまで軽く20mはあるのに、軽々飛んできやがった。

「くははははっ、死ねぇぇぇぇぇっ!!」

そしてそのまま姿勢を変え……蹴りが飛んでくる。

素人の俺が見ても解る。アレを喰らったら多分死ぬほど痛い。

なんか知らないが無茶苦茶勢いがついていた。

足の先から炎まで出ている。何だあのエフェクトは、格ゲーか。

とりあえず俺のほうに向かってくるのは解ったので、かわす事にした。

「んなっ、ちょっ――」

まさか正面から受け止めるとでも思ったのか。

おっさんは驚愕の表情のまま地面に激突。

蹴りの威力は本物で、丁度激突した地面は変な形に抉れていった。

格ゲーだったら多分、一撃必殺扱いだったに違いない。当たらない一撃必殺だが。


 おっさんも勿論地面に埋もれてしまう。

丁度首から上だけが地面から出ているという間抜けなポーズ。

まるで『黒髭危機一髪』みたいな状態だ。おっさんの頭に髪はないが。

「くそっ、御前試合ではあのトーマスすら震撼させた奥義だというのに、こんな弱点があったとはっ」

誰だよトーマス。知らない人の名前出されても困るって。

「まあ、俺の勝ちだ」

俺は適当に五歩ほど離れて、おっさんの顔面に棒切れカリバーを投げつけた。

「エブシッ」

奇妙な叫び声をあげながら、おっさんは昏倒する。

まあ、棒切れが頭に当たればそりゃ気絶だってする。死ぬかもしれない。


 幸い(?)おっさんは死んでなかったので、そのまま放置する事にした。

本当にクタクタだ。

ちょっと痛い、変な方向に目覚めそうだったが、それもこのおっさんのおかげで何もかもグダグダに終わった気がする。

というかだ、今にして思えばちょっと恥ずかしいことを考えてたのだと気付いたのだ。黒歴史にならなくてよかった。


 まあ、さっさと帰って寝よう。

いや、帰る前に川でズボンとパンツを洗わないといけない。そっちの方が重要だった。

こんな格好で村の女の子の前に立った日には、盗賊退治よりも先に失禁野郎の噂が村に広まってしまう。

なんとしてもそれだけは避けなければならなかった。


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