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異世界人の英雄殿  作者: 海蛇
外伝二話.その人は「兵隊さんだ」と名乗った

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#2.変に真面目で堅物で、それからあんまり自信がなくて

「……」

兵隊さんはぽかーんとしていた。

なんだろう、年上の男のこういう顔って、結構貴重だ。

「すまない。馬鹿にするわけじゃないんだが、君の言ってる事の意味が解らなかった」

「えええ……」

よりによってそこは解ってくれてなかった。

他はともかくとしてそこは理解して欲しかったところなんだが……

「いや、だから異世界からきたんだよ」

「その『異世界』というのは何なのだ?」

まずそこからかよ。面倒くせぇ。というか俺だってそんなの解からないのに。

「異世界は異世界だろ」

「意味が解らん」

兵隊さんも結構はっきり言う人だった。

異世界人ってのは、ずばずば言ってくる人が多いのだろうか。

ある意味やりやすいが、もう少しこう、手心が欲しくなる。

「その、女神っていうのはまあ、君が信じてる何かの女神なのだろうが。英雄って言うのは……?」

「ああ、うん。俺は女神様からこの世界にきて英雄になれって言われたからな。その為にここにきたんだ」

なんか、色々大切な事を任された気がするが、気がつくと様々なものが抜け落ちてるような気もする。

だけど、なんとなく、うっすらだけど残ってるモノをまとめて行くと、やっぱり俺は英雄にならないといけない気になった。

「だから、俺、英雄な」

「やっぱり意味が解らん」

兵隊さんは素直だった。ごまかさない人だった。


「まあ……君が何者なのかはよく解らないが、話しててそんなに悪い奴じゃなさそうなのは解った気がする」

「そりゃそうだよ。俺善人だよ。超善人」

困ってるおばあちゃんとか見かけるとつい助けに入るくらいには善人なはずだと自分では思う。

いや、実際にはお年寄り見かけたら意図的に避ける位面倒くさがりだったが。

人でなし扱いされても仕方ないくらいに事なかれ主義だったが。

「君は、これからどうするつもりだい?」

俺の言葉は盛大にスルーされていた。

哀しいが、確かにこれからどうするのかは大事なので、素直に考えてみる。

「うーん……やっぱ英雄っていうと人助けとか、そういうのやるべきだよな?」

「英雄、というと国の窮地を救う伝説を思い出すが、まあ、人助けという方向性で概ねあってるだろうね」

認めるまではいかないが、馬鹿にする気もないらしい。

この辺り、この人はかなり人間が出来てる気がする。

良い人ってだけじゃないんだ。ただ優しいって訳でもない。

こういうのを『器がでかい』っていうんだろうか?

「だったらやっぱ、色んな人を助けて回りたいな」

まずは英雄だって事を色んな人に認めてもらわないと困る。

「それと家と風呂と飯をなんとかしたい」

最低限のライフラインの確保は大切だと思う。

「ここは街じゃないから風呂はないが、しばらくの間住む場所と、ちょっとした食事位は力になれるかもしれないな」

あまり期待されても困るが、と、前置きしながら。

兵隊さんは立ち上がった。

「体調は大丈夫かい? もう立てるか?」

「ああ、大丈夫……よっと」

軽々立ち上がってみせる。両足を交互にあげたりするが、痛みとかは特に無い。

「うむ。大丈夫そうだね。ついてきなさい。村長に紹介してあげよう」

村長がどんな人なのかは解からないが、どうやら話を通してくれるらしい。

ありがたい。最初に出会えたのがこの兵隊さんでよかった。

心の底から感謝しながら、俺は兵隊さんの後を付いて歩いた。


 こうして、俺の異世界ライフが始まった。



 それから一週間かけて村を回ったが、その度に新しい発見があった。

村っていうと街と比べて全然小さくて、色々しょっぱいものなんだろうと思ったが、その想像よりは全然広くて、人が多かった。


 色んな人がいた。若い男もいたし爺ちゃん婆ちゃんも普通に歩いてる。綺麗なお姉さんがいるのも確認済みだ。

そういう人らが皆、漫画やゲームの住民みたいな格好をしている。

特に女の子の服なんかは、俺がいた世界の女子高生とかより可愛い格好をしてる気がする。

おっぱいの辺りとかが強調されててドキドキだ。

なんで流行らなかったんだろう。


 道には標識もないし、道路はアスファルトなんかじゃなくて土ばっかだけど、人が通る場所はちゃんと平らになっていた。

RPGとかでよく見る『田舎の村』が、現実としてこうやって見るとこんな感じなんだな、と思うと中々に驚かされる。

なんだ、結構面白そうじゃないか、と。

村と聞いて最初に浮かべたのは道具屋と宿屋位しかないつまんないところだったが、実際には広場の近くにはお店がいくつもあるし、露店商も並んでいた。


「でも、武器屋はないんだよなあ」

色々回っての感想。武器屋がどこにもねぇ。

俺の手持ちは腰に下げた棒切れが一本。

それから、困ってるお爺ちゃんを市場まで連れて行ってやったり、村長さんのとこの娘さんが焼いたパンを兵隊さんに届けたりして貰ったお駄賃がいくらかだ。

これで足りるかは解からないが、せめてまともな武器の目標額位は知りたいと思って探しているのだが、どこにもない。

広場を見れば色んな品が並んでるのに、武器だけがどこにもないのだ。

「とりあえず、兵隊さんにでも聞こうかな」

一通り途方に暮れた後、一番頼りになる人を頼る事にした。


 詰め所に向かっていると、畑を前にあれやこれや話している兄貴達が見えた。

もう少ししたら畑が人手不足になってくると言っていたので、その時に手伝えばまた何かもらえるかもしれない。

最初は物や金をもらうのは悪い気もしたし、英雄なんだから無償でいいだろと思ったが、今は考えを改めた。

『貰える物は貰っとけ』。

それが異世界で、少なくともこの村で生きる為の基本だ。

お金や物がないと何も買えない。生活すらままならない。


 兵隊さんが村長さんにかけあってくれたおかげで、俺はこの村に住む事が許された。

住む場所も詰め所の隣に丁度村を出た人の家があったのでそれを借りる事になった。ここまではいい。


 だが、食い物に関しては問題があった。

最低限は無償でくれると言うのでなんとかなるかと思ったが、渡されたのは棒切れのようなパン一個。これで三日分なのだという。

それも堅くて歯が折れそうなくらいで、悪くなってるのか妙に酸っぱかった。

兵隊さんは平然とかじってたが、俺はそんなサメみたいな鋭い歯は持ち合わせていない。

肉を食うにはどうしたら良いか聞いたが、市場で売ってるのを買うしかないのだという。

つまり、金か、物々交換する為の何かが必要という事だった。

火は家に備え付けの暖炉でどうにかなったが、パン以外の食材は自力で手に入れるしかないという事実。

肉が食えないならそこらへんに生えてる草を食うしかないのだが、さすがにそんなのは嫌だった。


 結果、こうして村のお助けマンとして色んなところを回って、人を助けてお駄賃を貰ったりお菓子を貰ったりしてしのいでいる。

案外裕福な村なのか、それとも良い人達ばかりなのか、俺が要求しなくても報酬をくれるので大変助かっている。

勿論、その分だけしっかりと手伝える事は手伝う。

真面目だ。一生懸命だ。生活がかかってるし、怒らせたら大変だろうから。

そうやって働いて気付いた事が一つあった。


 人は、報酬が貰えるから一生懸命になれるんだな、という事。

何か貰えるから頑張れるっていうのは、端から見ると卑しいとか恥ずかしいとかそんな風に思えるんだけども。

でも、だからこそ真面目にやれるのだ。貰える以上は頑張らないとっていう気になる。

これが『責任』というものなのかもしれない。

仕事に責任を持つっていうのはきっと、何か物を貰える前提で仕事を考えるから、その分だけ真面目にやろうってなる、その気持ちなんだと思う。

無償でやってたら多分、面倒くさくて放り投げてたと思う。だって所詮は無償の仕事だもん。


 そう考えると、働くのって大事だったんだなと思わされる。

俺は働いてる大人を見てやたら損をしてるように見えてたから「こんな風になるのはやだな」って思ってたけど、あんな事になる前にバイトでもやっとけば、もうちょっと見えてたものが違ったんだろうか。

今となってはかなり手遅れな気もするけど、そんな気持ちになったのだ。


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