元風俗店員が冒険者に
目覚めた日の夕方に医者〈マイセン〉と言う名前で昔は冒険者だったそうだ。
タバコかと思ったがわからないだろうから言わないでおこう。
マイセンの話では冒険者ギルドに登録すると冒険者になれるらしい。
簡単な面接と実技があると言うことだが、異世界人は実技指導もしてくれるとのことだ。
何でも異世界人は能力は高いが使い方がわからないことが多いからだ。
ちなみに、俺も体力にはあまり自信がない。
メタボ体系はだてでは・・・ん?
なんか、体がスリムな感じがする。
あれ?俺こんなにスリムだったかな?
体もなんか軽く感じるし。
病室の鏡を覗くと、若干若返ってる?
いや、良くわからんが二十代の半ばぐらいの頃の顔立ちか?だが俺の顔だよな。
若返って異世界に飛ばされるなんてあるのか?わからんことだらけだな。
とにかく、はやいこと冒険者になって金と経験値稼ぎだな。
マイセンが夕食をもってきた時に明日の朝に冒険者ギルドへ連れて行ってくれる事、異世界支援制度で幾らかの給付金を渡してくれる事を伝えられた。
明日冒険者ギルドへ行く前に色々確認しなくてはならない。
物資変換についてとMP回復についてを。
MP回復は最初につかったMPが自然と回復していったので大体わかった。
普通に生活していると、大体一時間で5回復したので、それを目安にしよう。
おそらく寝たり、休憩したりすると、全回復とかするんだろう。
アイテムもあるのかな。要確認だな。
あと物資変換はかなりのチートだ。
何にでも変換できる、好きな形にだ。
質量は変わらないようなので大きささえ気をつけていれば色々と作れそうだ。
ただ、あまり複雑なものは上手くイメージできないから出来ない。
これは熟練度にも関わってくるかもしれないので、これも要確認だ。
戦闘に役立つかはいささか疑問だな、簡単な武器なら直ぐにつくれるが、武器なんざ使ったことがない。
明日冒険者ギルドに行って自分に合う武器も作らないといけないな。
「てか、店大丈夫かな?飛んだとおもわれてるよな・・・売り上げは金庫にいれてるからいいけど。はぁ・・・」
戻れるのかな?大体こう言うのは戻る旅にでるんだろうが・・・
別に戻らなくてもいいしなぁ・・・
彼女もいないし・・・
こっちなら楽しいことも有りそうだし。
こっちで頑張ってみるか。
とりあえず、もう寝よう。MPが0になると体の疲れが半端ない。気をつけないとダメだな。
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「ん・・・ふぁ~・・・今何時だ・・・」
朝、目を覚ますとちょうど猫看護師が朝食を用意してくれているところだった。
「おはようございます、ゆっくり寝れましたか?」
残念ながら語尾ににゃはつかないようだ。この猫看護師はニアスと言う名前らしい。
この二アスも冒険者をしていたそうだが、訳あって今は診療所の看護師をしているそうだ。
この世界の食事は割と地球に似ている、パンにスープに目玉焼きにスープと本日の朝ごはんは洋食だ。
昨日の夕食も洋食だったことを考えると主食はパンなのかな、ご飯好きなんだが・・・。
ゆっくりと食事をすましてから顔を洗ってマイセンと冒険者ギルドへ向かう。
初めて異世界の外を歩いたがのどかなヨーロッパの田舎と言った印象だ。
文明的には地球と比べると大分遅れてるように思う。
現代人はこちらに来ていないのか、それとも技術が追いついていないのかはわかりかねる、まだまだ情報不足だ。
歩いて15分くらいすると少し大きめの酒場みたいなところに入っていく。
酒場兼冒険者ギルドなのだろう。中は朝も早いこともあってカウンターに一人女性がいるだけだった。
「マイセンどうしたんだい?えらく早いじゃないか。何かあったのかい?」
女性がたずねてくる。
こんな時間に来るのが珍しいのか少し不思議そうな顔をしている。
「やあ、ジョディ。いや何、一人冒険者の登録にな。」
ジョディと呼ばれた女性と談笑をはじめるマイセン。
ジョディは20代前半ぐらいの細身だがしなやかな筋肉をつけた綺麗な黒髪ロングの女性で活発そうな顔立ちをした酒場兼冒険者ギルドの受付嬢だ。彼女も冒険者らしくランクはBだ。
冒険者のランクはEから始まり順にE・D・C・B・A・S・SS・SSSとある。
大半の冒険者はC・BランクでAやそれ以上は国のお抱え冒険者がほとんどでSSSクラスは世界に4人しかいないとのことだ。
「その人かい?」「ああ、ちょっと特殊でな。」「あぁ、なるほど、だから早いんだね。」
色々と説明をしてくれてるようでこちらをチラチラと見ながら話している。
「じゃあ、こっちに来て書類にサインしておくれ。」
「あ、はい。」
書類を渡される。書類にざっと目を通すと死んだ時の責任は取れません的なことと、冒険者のルールのようなものが書いてあった。
要約すると他の冒険者の邪魔をしてはダメ。冒険者同士でのいさかいにギルドは関与しない。報酬の文句は聞かない。ルールを破ると冒険者ギルド追放もありえる。などの注意事項に冒険者カードを見せれば割安で宿に泊まれたり道具を安く買えたりと特典があることなどや、ランクによって受けれる依頼が変わること。ギルドに貢献することによってランクが上がるなども書かれていた。最後に署名と血判を押して終了となる。
書類には特に問題はなかったので署名と血判を押す。
「じゃあ、次は実技指導だね。こっちに来な。何か得意な武器はあるかい?」
奥の部屋へと行くと武器が数種類並べてあった。
「・・・武器は使ったことないです。あと・・・」
職業を伝えるべきかどうか悩んでいるとマイセンが肩を叩いて頷く。
「職業が魔法使いなんですよ、何であんまり接近戦は・・・」
「ん?冒険者に魔法使いも剣士も格闘家も関係ないよ、なんでも出来なきゃすぐに死んで終わり。どうする?」
ふむ、確かにそりゃそうだ。納得だな。さてどうしたものか・・・昔、喧嘩でバットぐらいなら使ったことはあるが何があるんだ。
武器は剣・レイピア・斧・槍・ナイフ・刀・棍棒・弓が数種類づつ置かれている。
使えそうなのは棍棒ぐらいかと思いバットのような棍棒を手に取ると重い。
これを振り回すのは難しいなと考えているとある考えが浮かぶ。
「じゃあこれでお願いします。」
「それでいいの?じゃあとりあえず私と模擬戦ね。裏に行くわよ。」
「え?模擬戦?指導してくれるんじゃ・・・」
「まず、どれくらい動けるか見ないと何も教えれないでしょ」
とウインクして歩いていく。
まじか・・・と思いマイセンを見ると当たり前だろ?てな顔をしている。
裏に行くと少し広めの開けた場所があった。
バスケットコートの半分ぐらいか・・・うわジョディはやる気満々で準備運動してるよ・・・俺も半ば諦めて身体を動かす。
昔はちょっとやんちゃしてたので喧嘩などもしたことはあったがもう何十年も昔の話だ。
ジョディがこちらを準備運動をしながら見ている。ちなみにジョディは物干し竿のような棍を持っていた。鉄製だろう、黒光りしている。
うわ・・・怪我しないように頑張ろう。
「じゃあ、始めるよ。」
体が温まってきた頃ジョディが声をかけてきた。
そしていきなり棍を横薙ぎにフルスイングしてきた。
「うわッ!!ちょッ・・・いきなりって!!」
その攻撃を後ろに一歩引いて交わす。
「あら?やるじゃない、じゃあ、これはどうっ!!」
一撃目を躱されると思わなかったジョディは尋常ではないスピードで棍を振るってきた。
袈裟斬り・横薙ぎ・上段・下段と多彩なコンビネーションで攻めてくる。
「ちょっ・・うわっ・・それは・・うそん!!」
袈裟斬りは肩を引いて躱し・横薙ぎを屈んで交わす・上段は左に回り込んで交わす・下段は後ろに飛び退いて躱す。
躱すことしかできない。
「なんやそのスピードは!?殺す気か!?そんなんでど突かれたらしんでまうわ!?」
思わず大阪弁で叫ぶが攻撃は緩まない。
更にいくつかの攻撃を躱すとジョディの目が細められる。
少し距離をを置きジョディが腰だめに棍を構える。
あれ?なんか本気になってない?これはなんか必殺技的な何か狙ってない?などと考えているとジョディが突進突きを放ってきた。鉄でできた棍が僅かに光っている。
「素人相手に何マジなってんねん!?」
驚きながら棍棒に魔力を込める。
ガーーーーーン!!!
金属同士が激しくぶつかる音がする。
必殺の突進突きの前にフライパンのように形の変わった棍棒を出して防ぐ。
「なッ!?」
ジョディが驚いて一瞬動きが止まる。
その隙に更に魔力を込めてフライパンを剣に変えジョディの喉元につきつけようとしたが・・・
つきつける前に棍で上に弾かれ、逆に棍を喉元に突きつけられた。
「ちょっと本気になりすぎちゃう・・・」
とぼやいていると
ジョディが真剣な顔で言ってきた。
「あなた、本当に素人?私は棍術ではAクラスの魔獣も倒せるのよ?その私の攻撃を幾度となく躱し更に攻撃をしてくるなんて同じBランクの冒険者でもなかなかいないわよ?」
「こないに動けるとは思いませんでしたよ、死ぬかと思たよ。」
「まさか竜爪〈りゅうそう〉が防がれるとは思わなかったわ、あれがあなたの魔法?」
「はい、物資を違う物に変えることが出来るから、棍棒ぐらいの大きさやとちょうどよく色んなものに変えれるかと思ったんやけど・・戦闘中は難しいから練習せなあかんね。てか、やっぱり最後のは必殺技かいな、無茶苦茶やな。」
「異世界人の方がよっぽど無茶苦茶よ、LV1であの動きはないわ、私のプライドはズタズタよ?」
などとジョディはケラケラ笑いながら酒場にもどって行く。
酒場に戻るとマイセンとジョディが話をしている。
「冒険者カードは問題なく発行出来るわ、あとは経験ね。誰かと暫く幾つかの依頼をこなしたら問題ないわ。」
「だとしたらジョディが彼の教育係で問題ないんじゃないか?」
「なんで私が!?」
「試験で竜爪〈りゅうそう〉なんか使ったのがバレたらやばいんじゃないか?」
「ッ!?・・・わかったわよ!!じゃあマスターが来たら早速依頼にいくわよ!!」
なんか俺を置いてきぼりでとんとん拍子に話がすすんでいるが無事に冒険者になることはできたようだ。
さてと、ここからが本当の異世界だな。
元風俗店員が冒険者の世界に一歩足を踏み入れま。
一体彼はこの世界で何をしていくのでしょうか。