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Cosmos of Penguin  作者: 祖父江直人
#1.CASPER
4/20

そして、男も動き出す ②

一気に書くといったな、あれは嘘だ。

すみません、もうちょっとだけ続くんです。本当にちょっとだけ

 近くの『ゲート』まで送ってくれるというので、アヤはネルに続いて、地表の町を歩いていた。


 濁った空は昼も薄暗いが、夜になると、さらにその闇は本物になった。


 街灯はほとんど無く、宇宙船が発着するための巨大なサーチライトが空に飛び交っているのが、唯一人工的な明かりと言えた。


 点々とある民家は火がかれ、たまにすれ違う人のほとんどがアヤをにらみつけてきた。


「そんなに怯えて、よくここまで来れたね。」


 ネルがあきれながら言う。


 アヤも不思議だった。本当は人一倍怖がりで臆病な自分が、よくここまで来られたものだと。


「む、夢中だったから。」


「フフ、いい性格ね、大事にしな。」


「は、はい。」


「だから、あのバカも動いたのか。」


「―――ジンさんのことですか?」


「ジンでいいよ。あいつ、さん付けで呼ばれるの嫌いだから。そうね―――ガキの頃は、今よりもうちょっと熱かったんだけどね」


「熱かった?」


「ま、ただ改造SB乗り回してたやんちゃ坊主だけどね。でも熱はあった。若い連中のリーダーで―――ペンギン。」


「は?」


「あいつがよく言ってたんだ。『俺たちは空にあこがれながら地面をヨチヨチ歩いてるペンギンだ』って。」


 ペンギン。地下には種の保存のためという名目で様々な動物が保護され、人工繁殖を行っているが、実物を見たことは無かった。


 少し惚けたようなネルの表情に、アヤが思っていたことをぶつける。


「あの、ネルさんって、ジンさんの恋人―――」


 しかし、ネルがアヤを鋭い目つきで見たので、あわてて謝った。


「あ、あああの、ごめんなさ……」


「そうだといいんだけどね。」


「へ?」


 細くくびれた腰に手を当て、自分を笑うかのように苦笑して言ったネルの言葉に、おかしな声で返事をする。


「あいつは、ちょっと遠くを見てるかな……」


 何か事情がありそうなのでアヤはそれ以上訊けなかった。


 ややあって、地下へ続く『ゲート』が見えた。ここから先は、アヤたち地下市民でなければ入れない。


「送ってくださってありがとうございました。ここからは大丈夫です。」


「そう、こっちこそ、ありがと。アヤちゃんのおかげで、ペンギンがまた飛びそう。」


 そう言うと、頭を撫でられた。見た目は綺麗な手だったが、その感触は少しざらついていた。


「また明日、来ますね。」


「ああ、待ってるよ。」


 そして別れ際、耳元でこう付け加えられた。


「気を付けなよ。あいつ、天然の女たらしだから。」



ちょっとだけだったね 笑

これで第二部分は本当に終わりです。また明日。

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