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愚笑  作者: YAKUMO
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野良犬の不快

 太陽が半分ほど沈みかけている時刻だった。朱色の陽光が降り注いでいる。少し神秘的な光景だ。道路は舗装されて間もない箇所が濃くなっており、違和感を生み出していた。人通りが少なく、やはり活気などとは無縁だと感じさせられた。とはいってもテレビで見る過疎地域のシャッター通りなどではなく、コンビニは近くにある。単に人が少ないだけだった。

 俺は特に目的を持たず、散歩していた。高校生らしくもないが散歩が趣味だ。おそらく普通の高校生はこの時間にカラオケに行ったり、マックで友達と会話したりしているのだろうが俺はそれをしない。

 それを格好いいと思っているのではなくただ単に集団で群れるのが不向きなのだ。苦手とも言う。

 だからこうして一人で西日を受けながら散歩している。寂しいと思えるし、悲しいとも思える。けど、別にいい。

 俺はこの生き方に満足をしている。

 不意に俺の視界に野良犬が映った。そいつは黒く薄汚れていた。

 「お前も一人か……」

 俺は無意識にそんな言葉を発した。

 「俺とお前を一緒にするな」

 どこからか答えが返ってきた。どすが利いた低い声だった。

 辺りを見回すが俺のほうを見ている人はいない。あまりにきょろきょろしたため、周りの人から不審そうな目で見られた。

 「こっちだよ、こっち」

 声のしたほうを見ると先ほどの野良犬がいた。

 「お前かってんなわけないよな―――」

 俺が言い終える前にやはりどすが利いた低い声がまた聞こえた。

 「俺であってるよ」

 確実にその野良犬が喋っていた。

 人面犬は喋ることも出来ると聞いたことがある。テレビの動物特集みたいなもので犬が喋っているような感じで「こんにちわ」と言っているのを見たことがある。

 しかし、こんなにはっきりと喋っているのはちょっと知らない。というか知りたくなかった。

 「……」

 俺が黙っていると、野良犬はまた喋りだした。

 「お前に頼みごとがある」

 しかし、頼みごとを犬にされた経験が皆無なので受け答えに困ってしまう。そんな俺に痺れを切らしたのか野良犬は少し早口で言った。

 「とりあえず、ついてきてくれ」

 とりあえず不安半分、興味半分だったのでついていくことにした。

 犬が向かったのは所謂裏路地というようなところだった。足元に落ちていたゴミには魚の骨などが混ざっていた。

 「おい、犬。頼みごとって何だ?」

 俺はようやく少し整理がつき始めてきたので野良犬に尋ねた。

 「俺の仲間を助けてくれ」

 「どういうことだ?」

 俺が疑問をぶつけると犬は困ったように(犬の表情は変わってなかったが)答えた。

 「最近、ある女が俺の仲間を殺してるんだよ。それが何故なのかは分からないし、誰なのかもわからない。ただ、お前は若いし、男だろう。だから大丈夫だと思ってお前に頼んだ」

 犬は意外と饒舌だった。しかし犬の虐殺。この前、ニュースでやっていたな、と思い出した。

 「でも何で俺なんだ。もっと他に強そうな人はいるだろう」

 「あぁ、確かにいたよ、でもな、お前もこっち側に属してるんだよ」

 犬は意味深長にそう言った。

 「こっち側って何だよ?」

 「いずれわかるさ、とりあえず今は俺の仲間を助けてくれ。女は刃物を持っているからな、一介の野良犬じゃ何も出来ない」

 俺はその言葉にぎょっとした。

 「おい、ちょっと待て、刃物ってどういうことだよ!」

 野良犬は俺が声を荒げたのをあしらうようにふんと鼻を鳴らした。

 「命をかけて断言してやる、大丈夫だ」

 犬は自信ありげに言った。

 その時、突然血肉の生臭いにおいが鼻腔を刺激した。俺の目の前に少女が立っていた。少女の右手には血で赤に染められた包丁が握られていた。周りには犬の死体が三体転がっていた。

 「あなた、誰?」

 少女はとても透き通った声で俺に聞いた。

 「おい、お前。俺の仲間に何してる!」

 野良犬は声を尖らして言った。

 「へぇ、喋る犬、珍しいわね。でも犬君に聞いたんじゃないわよ、あなた、誰?」

 「俺は高見亮だ。お前は誰だ、そして何が目的だ!」

 「そんなに一気に聞かないで欲しいのだけど。私は鉋崎美咲、目的はただの暇つぶし」

 「暇つぶしで仲間殺したんか!」

 「そう」

 鉋崎はどうでもよさそうに答えた。

 「まぁ、いいや、亮君。あなたを試させてもらうわね」

 鉋崎はそう言い終えるまもなく、俺のほうに走ってきた。俺は身構えたがそれを無視し、鉋崎は包丁で俺のわき腹を刺した。

 「なっ……」

 血が流れていく感じがする。熱い。俺は地面にひざをつけた。

 「おまえ……!」

 痛い。鋭利な痛みだ。ただ痛い、熱い。血が。血が。血が。血が。血が。

 血が流れている。赤いものが俺のわき腹から。

 「あぁぁぁぁぁァぁァぁぁ!」

 叫ぶ。ただ咆哮する。野獣のように。どっちが野良だろうか。全くもってわからない。

 死ぬと思った。少なくとも病院行きだと思った。なのに、なぜだろう。地面には血は付いている。だが。

 「血が出ていない」

 「はは、やっぱあなたか。あなたが吸血鬼ですか」

 鉋崎は平然とそれを発した。

 「吸血鬼?」

 俺は信じられずに、そう反復した。

 「そう吸血鬼、またはヴァンパイア―――」

 「おい、お前。俺の仲間を殺したことを許されるとでも思っているのか!」

 野良犬は叫ぶ。

 「うっさいわね」

 鉋崎はうんざりとした風に言った。

 「野良犬君、殺そっか」

 彼女の目は狂気に満ちていた。刃物を振り上げ、そして振り下ろす。単純明快にして無雑な作業だっだ。

 「ぐっ……!」

 野良犬は血を流す。俺は何も出来ず、動けず、ただ愚かにその場に立ちすくすだけだった。

プロットなしの推敲なしで書いてるので色々ミスしてるところがあると思います。

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