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来ヶ崎愛歌は日本女児である。  作者: 岡村 としあき
急:激突! 来ヶ崎愛歌、まかりこしてそうろう!
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明日香の恥じらい

 愛歌は奪った銃を山崎の額に向けた。


「動くなよ。少しでも動けば……お前を撃つ。全員、武器を床に捨てろ」


「おい、お前ら銃下げろ。俺は人を銃で撃つのが趣味だが、人に銃で撃たれるのは趣味じゃねえ」


 山崎が両手を挙げ、あごをしゃくると、テロリスト達は大人しく銃を下げた。


「通信機器もだ。増援を呼ばれては厄介だ……それに、人質はまだ一人いるのだろう? 無線で最後の人質を殺すよう指示を出すのもやめてもらおう」


「……ち。知ってやがったか。おい」


 山崎が再びあごをしゃくると、テロリスト達は無線を床に置いた。


「やはりか。人質の群れに飛び込むとき、気付いたが……日比谷は、一人茨の道を行ったのだな……」


「はっはっはっは! あの嬢ちゃんは勇敢なる英雄だ。自ら名乗り出て万が一の保険になってくれたんだよ」


「お前は黙っていろ。九条院、人質の拘束解除と、外への先導、頼む」


「わかりましたわ!」


 物陰に隠れていた命がでてきて、人質の拘束をとくと、外へ連れ出して行った。


「蛇祭。天空寺を迎えに行ってくれ。ここは、私一人で充分だ」


「うむ。武運を祈る」


 蛇祭は頷くと、階段を昇っていった。


「無線を出せ。残りはお前だけだ」


「この状態で手ー伸ばせるかよ? お嬢ちゃんが取ってくれねーか。右のポケットに入ってるからよ。ノミの心臓の俺だぜ? 今にもチビりそうなんだよ」


「……いいだろう」


 にやける山崎の額に銃口を向けたまま、愛歌は右ポケットに手を伸ばした。


「これか」


 そして、右ポケットから無線を取り出そうとしたとき、山崎のにやけ顔が、無表情になった。


「バカが!」


「む!?」


 一瞬だった。愛歌が無線に気を取られたスキに、山崎は体をひねり、愛歌の銃をはたき落としたのだ。


「形勢逆転、だな。ブルマのお嬢ちゃん」


「ち」


「死ね!」


 テロリスト達は銃を上げ、一斉に愛歌に発砲する。


 愛歌は間髪いれず、ホールの物陰に隠れた。


「おいおい出ておいで、お嬢ちゃん。おじさん達がとーっても痛くて気持ちいいことしてやるからよお。丸腰で、銃持った大の男相手に何ができるんだい? 素直に出てくれば、俺のテクで、イって逝かせてやるからよ? はっはっは」


 愛歌は物陰から飛び出すと、素早くそれを振り回した。


「来ヶ崎流古武術奥義の伍」


「何、ゲームのコントローラー、だと?」 


四龍閃(しりゅうせん)


「うご!?」


 高速で繰り出されたコントローラーが、下段からテロリストの銃を弾き、そのままあごに直撃する。


「ふざけたマネを! 撃て!」


「まだだ。来ヶ崎流古武術奥義の六」


 テロリストが引き金を引くより早く、愛歌の指がブルマのポケットに入った三本のボールペンに伸び、投擲した。


三乱(さみだれ)


 三人のテロリストの胸に深々と刺さるボールペン。


 山崎以外のテロリストは、一瞬で崩れ落ちた。


「な、何だ今のは?」


「四龍閃は元々鎖鎌を用いた奥義。三乱は三体の標的を同時に狙う、手裏剣術の奥義。さあ、残るはお前だけだ。観念いたせ」


「そうか。来ヶ崎流……お前がファングの妹か」


「何? 貴様、兄上を知っているのか!? 答えろ、兄上は今どこにいる!」


 山崎は薄く笑うと、人差し指を天井に向けた。


「最上階だよ。俺達のボス、来ヶ崎大牙。今はファングって名乗ってるけどな。人質もそこにいる」


「兄上が……日比谷と……そうか」


「だが、お前さんが上に行くことはできねえ。何故なら、お前さんはこの俺、山崎章吾がここで――ぶっころ!?」


「五月蝿い」


 愛歌は一瞬で距離を詰めた。山崎の腹部に拳を叩き込むと、天井を見上げる。


「待っていろ、日比谷。今すぐに行く」


 愛歌は山崎を踏みつけると、階段を昇った。


「侵入者!? 山崎は何をやっているんだ!」


「ち。伏兵か」


 途中、四階で見張りのテロリストに出会い、愛歌は舌打ちする。


「私の邪魔をするな!」


 愛歌は床に落ちていたモップを拾うと、それを構え風車のように振り回しながら突撃した。


「来ヶ崎流古武術奥義の七」


「こ、こいつ、止まれ!」


 テロリストは所持していたサブマシンガンを愛歌に向けて連射する。


 銃弾をかわしながら突撃する愛歌。


二神鳴(ふたかみなり)


 モップの先端でテロリストを突き、引き抜くと横薙ぎに一閃。雷鳴の如き二撃がテロリストに直撃し、意識を奪う。


「本来は槍を用いた奥義だったのだがな……さすが、めいどいんじゃぱんといったところか、ふ」


 モップを地面に放り出すと、愛歌は再び階段を蹴り駆け上がった。


「兄上……まさか、再び見えようとは……」


 愛歌は唇をかみ締めると、階段を三段飛ばしで駆け上がった。


 そして、最上階。扉の前で愛歌は息を整えると、一気に引いて踏み込む。


「来ヶ崎さん!?」


「日比谷!?」


 扉を引いてすぐだった。目の前に明日香がいて、愛歌は駆け出した。


「待っていろ日比谷。今すぐ助ける!」


「だめ! こっちに来ちゃだめ!」


 明日香に向って駆け出した愛歌。しかし、横から強烈な蹴りを食らい、吹き飛ばされる。


「く……!」


「久しぶりだな。我が最愛の妹。愛歌」


「……兄上」


 愛歌が顔を上げると、そこにいたのは、黒いスーツに身を包んだ額に十字傷のある男。来ヶ崎大牙だった。


「もう、かれこれ五年になるか。成長したな、愛歌。私は兄として素直に嬉しい」


「兄上は、まったくお変わりないようだ。私は残念でならんぞ」


「ふん。まったく、生意気な所は相変らずのようだ」


「積年の恨み今ここで……と、いいたいが、今兄上に構ってはおれん。それよりも大事な……来ヶ崎の家よりも重要なことが、目の前にある」


「何?」


 愛歌は立ち上がると、明日香に向ってまっすぐ歩いた。


「日比谷。すまん。私は謝らねばならん」


「ううん。ぼくのほうこそ……ごめんね」


「私は最初、お前の中に父上を感じていた。私は……父上の代わりが欲しかったのだ。だが、お前と離れてみて初めてわかった。お前は父上の代わりなどではない。父上以上に大切で、愛しい存在であると……気付いたのだ!」


「来ヶ崎さん……」


「あのとき答えられなかったことを、今言おう。お前のどこを好いているか? その問いに対する答えは一つしかない。全てだ。つま先からつむじに至るまで、細胞単位で私はお前のことを、好いているのだ!」

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