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来ヶ崎愛歌は日本女児である。  作者: 岡村 としあき
急:激突! 来ヶ崎愛歌、まかりこしてそうろう!
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明日香の救出作戦

「山崎。侵入者だ」


「あん?」


 一階のホールで、テロリストの男が駆け足でリーダーの男、山崎に報告した。


「さっき、便所に行ったらオスカーがやられていた。死んではいないが、一撃で気絶させられたらしい。どこにも傷口はなかった……百人殺しのオスカーが、たった一撃で……プロだぞ、こいつは」


 男は青ざめた顔で淡々と報告する。


 山崎は、男とは逆に楽しそうに頬を緩ませた。


「はっはっは。いい仕事するじゃねえか。殺しがいのありそうなネズミがわいてくれたもんだ」


「笑いごとじゃねえ。ただ気絶させられただけならまだしも……まるで、この世の物ならざる物を見たような、恐ろしい形相で、気絶していたんだ……」


「ふん。この平和ボケした日本に、そんな怖いモノがあるとでも……?」


『し、侵入者! 侵入者だ! な、何だこいつは……う、うわあああああ!?』


 山崎の胸ポケットから、男性の叫び声が飛び出る。


「今の、ワンの声じゃねーか?」


 山崎は舌打ちすると、胸ポケットから通信機を取り出し、応答を求めた。


「……ち。おい、ワン。何があった? 応答しろ!」


『……』


「ワ、ワンまで一撃だと!? おい山崎。こいつはまずいんじゃねーか?」


「ガタガタうるせー! こっちには人質がいる! いざとなったら盾にすりゃいい! 人の命ほど頑丈な盾はねーからな。それに、ファングがいる。慌てることはねえ」


「それは、そうだが……」


 再び山崎の通信機から男の叫び声が飛び出る。


『侵入者、確認! こ、こいつは……う、うお!?』


「なんだ、田代!?」


 山崎が応答を求めると、今にも消え入りそうな声が通信機から聞こえてくる。


『ブ……ブル……マ……』


「ブブルマ……だと!? ……おい、そんな名前の殺し屋(ヒットマン)お前知ってるか?」


「いや……聞いたことはないな……」


 その時だった。こつ、こつ、と。誰かが階段を登って、一階に向ってくる音がホールにこだました。


「おいでなすったぜ……。おい、ぶっ殺せ。ブブルマとかいうふざけた名前のチキン野郎のケツに、とっびきりの鉛弾ぶちこんでやれ!」


「おう!!」


 山崎が手を挙げて合図を送ると、テロリスト達が五人、階段の周りに待機し銃を構えた。


 そして、暗闇の中から浮かび上がるシルエット。それが光を受けた瞬間、テロリスト達は一瞬戦慄する。


「とう! 天が呼ぶ、地が呼ぶ。ブルマがオレを呼ぶ! 人呼んでブルマ仮面、参上!」


 それは、奇怪な男だった。頭にブルマをかぶり、下にもブルマをはき、上半身は裸。


「てめえがブブルマか!? 仲間のカタキだ! 撃て撃て撃てー!」


「お、おおう!? まて、謝罪する! 話せばわかる! 人類みな兄弟! 土下座は日本の文化ー!」


 ブルマ男が恐るべき速さで土下座すると、その頭上を数発の弾丸がかすめていった。


「よ、よけたぞ!?」


「銃弾をかわしやがった! ば、化け物だ! ブルマの化け物だ!!」


 山崎は嬉しそうに頬を緩ませる。


「嬉しいぜ。こんな化け物みたいなヤツがまだこの国にいたとはなあ。ブブルマさんよお。せいぜい俺を楽しませてくれよ、なあ?」


「くく。残念だが、オレの相手はお前ごときに務まらん!」


 ピクリ。と、山崎の額に血管が浮かび上がった。


「……何?」


「悔しければ、ここまでおいでー! お前のかーちゃん、でーべそ!」


「この野郎……! 俺のママンをバカにしやがって……!」


 ブルマ男は立ち上がると、階段を駆け上がった。


「半分はあいつを追え! 絶対に逃がすな! 残り半分は人質を見張ってろ! やばくなりそうだったら、一人くらい見せしめに殺せ」


 山崎が指示を出した直後、階段を登ろうとしたテロリストの一人が、狙撃される。


「うを!?」


 さらに投げナイフが飛んできて、別のテロリストの足首に突き刺さった。


「い、いてえ……」


「ち。仲間がいやがったのか!? 下だ! 下のジャージデブと長髪を殺せ! 上のブルマは丸腰だった。陽動かもしれん。先に下の二人を始末しろ! 俺はここに残る!」


 狙撃したのは、階段の踊り場にいたジャージの巨漢。ナイフを投擲したのは、長髪の男。それは、油揚と御手洗だった。


「狙い、通り」 


「ほほほほ。さあ、おいでなさい。ボウヤたち。私達が掃除してやるわ」


 油揚と御手洗もまた、階段を駆け降りていく。


「待てこの野郎!」


 四人のテロリストが階段を駆け下りて行くと、山崎は残り五人のテロリストとともに人質たちを囲うように配置した。


「どこからでもきやがれ。来たら最後。天国みてえな地獄に連れてってやるぜ。はっはっはっは」


 山崎が構えていた銃を舐めると、室内の照明が消え、暗闇の世界になる。


「何だ、何が起こった!?」


「落ち着け。こっちには人質がいる。ヘタに手は出せんだろ。それにこの暗闇だ。無闇に撃てば人質にも当たる」


 暗闇を相手に必死に警戒するテロリストたち。


 いつ襲われるかわからない恐怖に、じりじりと心を削られていった。


「あ? 何だ。どういうつもりだ」


 唐突に戻った光。照明は再び輝きを取り戻し、暗闇は消えうせる。


「ち。おどかしやがって……おい。下に行った奴らの応援に行ってやれ」


「なあ山崎。あんなところにダンボール、あったか?」


「ん?」


 テロリストの一人が、突然姿を現したダンボールに興味を示し、近付いた。


「ベン! よせ! そいつは――」


 突然ダンボールをブチ破り、屈強な男が飛び出してくる。それは、蛇祭だった。


「う、うお!?」


 銃を向けようとする暇もなく、テロリストは一瞬で気絶させられ、盾にされる。


「愚かなり! 基本教練からやり直すがいい! このバカ者が!!」


「ち。ベンのバカ野郎が」


「おっと、動かん方がいいぞ? 少しでも動けばお前の仲間が――」


 山崎は薄く笑うと、目の前にいた人質の額に銃口を向けた。


「勇敢なるネズミどもに質問です。今、脅しているのはどちらでしょう? 勘違いしてねーか、あ? 敵に利用されるようなバカは、ただのゴミクズだ。ゴミクズと大切で大切で尊~い人質さまの命。どっちが天秤を傾ける?」


「貴様、仲間を……」


「さっさとベンを放してもらおうか。でねーとこの可愛らしいお嬢さんの脳ミソぶちまけんぞ。はっはっは。ブルマなんかはいて、まったく俺好み……ん?」


「山崎! 人質が、さっきよりも増えているぞ……一人、多い。おい、その女さっきまでいたか?」


「な!? まさか、てめえ!」


 山崎の顔から血の気が失せた。同時に、人質の少女は唇を緩ませ笑った。


「ち。死ね。このネズミが!!」


 火を吹く山崎の銃口。


 だが、弾は少女に当たることなく天井に着弾する。


「い、今何をしやがった!? 俺の銃を……返しやがれ!」


 山崎が気が付くと、少女の右手には山崎の銃があった。


「てめえ……何者だ?」


「来ヶ崎流古武術第十八代継承者。来ヶ崎愛歌……お前を裁く者だ」

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