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来ヶ崎愛歌は日本女児である。  作者: 岡村 としあき
急:激突! 来ヶ崎愛歌、まかりこしてそうろう!
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明日香の家庭科

 そして、授業が始まって四時間目の家庭科室。


「わあ、明日香ちゃんの作ったみそ汁おいし~!」


「うめえ! 明日香ちゃん、うちのお袋よりみそ汁作るの上手だぜ」


「えへへ」


 家庭科の調理実習である。課題はみそ汁で、明日香が作ったみそ汁にクラスメイトが群がり、舌鼓を打っていた。


「どうやったらこんな味出せるの? 教えてよ~」


 クラスの女子一同に取り囲まれ、明日香は少々恥ずかしそうにうつむきそれに答える。


「えっと……おみそは、ぼく二種類使ってるの。赤みそと、白みそ。季節ごとに合ったおみそを使うんだ。今は夏だから、赤みそをメインに白みそを少し足して、おだしはかつおだしと昆布だよ」


「へえ、明日香ちゃんすご~い! ねえ、もしよかったら今度、レナのお家に来て教えてよ」


「ずるい! カナコが先よ!」


「明日香ちゃん、みそ汁お代わり!」


「俺も俺も!」


 女子一同にレシピを聞かれていたが、今度は男子がお代わりを催促してきて、明日香はクラスメイトの中心でもみくちゃにされる。


「わあ!? 押さないで! 皆の分ならちゃんとあるから!!」


「幼馴染のみそ汁はオレがもらったー!」


 と、そこにナイトがやってきて、みそ汁が入っていた鍋を横からかっさらい、空気を読まずにすべて飲み干した。


「ははは! 幼馴染よ、また一段とウデをあげたな! 俺は嬉しいぞ!」


 空になった鍋を床に置き、げふっとげっぷをすると、ナイトはクラスメイト達から非難の嵐を受ける。


「天空寺、空気読め」


「吐き出せ!」


「お前に借りたエロDVD、ネトオクで売りさばいてやるからな」


「あんたの家庭科の内申、0にしとくわ」


「死ね」


「ちょっと待て!! 聞き捨てならないセリフがいくつかあったぞ!? しかも、何で先生まで混じってんだ!」


 ナイトはクラスメイトのみならず、家庭科の吉川史子教諭(36)からも睨まれた。ちなみに絶賛恋人募集中、合コンなら常時参戦可、婚活に命を賭ける女である。


「まあまあ。また作ってあげるから、皆落ち着いて、ね? あの、先生もどうか落ち着いてください……その、包丁もできればしまっていただければ……」


 明日香が殺伐とした空気を癒すように微笑むと、クラスの空気は穏やかになった。


「でもナイトくん、皆に謝って! 独り占めは良くないよ?」


「ぐ。……幼馴染がそういうのならば……」


 明日香に見つめられ、ナイトもしぶしぶ頭を下げる。が、復讐に燃える女が一人現れた。


「許しませんわ! 明日香さまのみそ汁を独り占めするなんぞ言語道断! 九条院家使用人総勢三日間洗ってない靴下お家のポストにお届け作戦を敢行して、靴下恐怖症にして差し上げる! ちなみに、執事のセバスチャンはみずむしよ! 白い燕尾服を着た腹黒執事よ! あくまで執事よ! わたくし、相変らず恐ろしい子!」


 命が額に血管を浮かべ、頭を下げたナイトの背中を蹴り倒した。


「な、何!? メイドさんオンリーで、是非に! できれば、靴下ではなく、パ、パンツで……へ、へへ」


「それでは、お前に対するご褒美にしかならないでしょうに! このド変態が! しかし……明日香さまのパ、パンツとトレードでしたら、考えてやっても……ふ、ふふ」


「その契約、乗った!」


 パンツで頭がいっぱいになった二人は、同時に奇怪な笑い声を出し、昼前の家庭科室は不気味な空気に包まれた。


「やめてよ! 何のお話してるの!? ぼくのパンツをどうする気なの、二人とも!」


「貴様ら、やめろ。日比谷が困っているだろう。パンツパンツと、はしたない奴らだ」


 みそ汁とご飯で幸せいっぱいになった愛歌が、恥ずかしさでいっぱいになった明日香を守るように抱きしめた。


「あ、ありがとう。来ヶ崎さん」


「お前を守るのは妻になる私の役目。そういえば、日比谷よ。パンツで思い出したが、今度新しい下着を買うので付き合ってくれんか? お前を魅了するために買う、勝負下着とやらを選ぼうと思ってな」


「来ヶ崎さんも、どうどうと皆の前でそういうのやめてよ!」


 明日香の恥ずかしさがMAXになると、チャイムが鳴って昼休みになった。


 昼休みになって授業は終了し、昼食のため教室に戻る明日香たち。


「もう、ほんとうナイトくんって、いじきたないんだから……この前のぼくのお誕生パーティーでも、ぼくのケーキまで食べちゃって……もう。あ。そういえば来ヶ崎さんって、誕生日いつ?」


 教室に帰る途中、廊下を歩いている明日香は、隣を歩く愛歌になんとなく聞いてみた。


「うむ。六月十五日だ」


「へえ。そうなんだ……ぼく、初めて知ったよ。ってあれ? それって確か……明日じゃない?」


「うむ。そうなるな」


「じゃあ、何かプレゼントしなくちゃ! 何がいい? 皆にも教えて、お誕生パーティーしようよ!」


「プレゼント? 誕生パーティー? なんだそれは」 


「みんなで楽しいことをして、おいしいケーキ食べてプレゼントを渡すんだ。ねえ、来ヶ崎さんは、今何が一番欲しい?」


「欲しい物、か。それは決まっている」


 愛歌は立ち止まるとクールに笑って明日香を引き寄せた。


「日比谷と私の赤ちゃんだ」


 時間が止まった。まるで、動画を一時停止したかのように、クラスメイト達の足は止まり全員が息を飲んだ。


「できれば女の子がよいのだが、日比谷に似た男の子というのも興味深い。しかし……赤ちゃんとはどうやってできるのだろうか? 日比谷は知っているか? できれば教えて欲しいのだが」


「わー! やめて、いきなり何言い出すの! 今お昼休みだよ! 時間を考えてよ、来ヶ崎さん!」


 クエスチョンマークを頭上に浮かべまくる愛歌に、明日香はぶんぶん両手を振り回し、顔を真っ赤にしながら周りを見た。


「オレが教えてやろう、来ヶ崎! 数学は小学校高学年程度の学力、英語はTHIS IS A PENくらいしかいえないおバカなオレだが、こと保健体育に関しては全校全学年トップに君臨する性教育の伝道者、天空寺ナイトが実技を交えて教えてやろう」


 ナイトが愛歌の前に現れて、両手を広げた。顔は思いっきりニヤけていた。


「それはまことか!? 天空寺、お前にして気が利くではないか! して、どうすれば日比谷の子を授かることができるのだ?」


「――それはだな」


「ダメー! ほら、行こう来ヶ崎さん。今日のお弁当はね、自信作なの! 来ヶ崎さんが好きな物、いっぱい入ってるんだから! たこさんウィンナーも、りんごのウサギさんも、ミニハンバーグもいっぱいだよ!」


「たこさん……だと!? 日比谷、愛しているぞ!」


 明日香は子供のようにはしゃぐ愛歌を見て、ほっと一息吐いた。

ちょっと五末に間に合わないかもしれませんので、不定期更新に切り替えます。。


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