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第5話 サヴァルタの傭兵達

サヴァルタ国北方に位置する場所"ヴァノワール"

ここヴァノワールは一年中、温暖な気候で包まれており日々、大自然をもたしている。

広大な大地にて様々な木々や草原を生み出し、鳥や動物達が行き交う。


一度、空を見上げればこれも遥か果てしない広大さを思わせる。




ある日、ヴァノワールの大空に一体の巨大浮遊物が飛んでいた。

その姿はいつの日かモンスターパークから逃げ出したキメラの姿であった。


悠々自適に翼を広げ舞う姿はどこか神々しさを感じさせる。

しかしこうして人工創造種が目撃されるのはそう珍しい事ではない。


サヴァルタでは年々、軍事力強化により研究所やモンスターパークは増える一方である。

人工創造種の実験は綿密な計算上、軍事用兵器として次々と成功させる。

だが飼育環境下では厳しい条件のものが多々存在し、手に負えないものは殺すか放すより処分する方法がないのである。

逃げ出した人工創造種は当然翼を持てばこうして空を飛び回るのは必然的な事である。




キメラがヴァノワールの空を舞っている頃、下の大地では血で血を洗う戦いが繰り広げられていた。

数はおよそ100対30と言ったところである。


「ランガル隊長っ!倒しても倒してもキリがないっす!!」


サヴァルタ傭兵団のラルダーが"リザードマン"と言われる人工創造種の胸部を大剣で突き刺すと言った。

彼の背丈は小さいもののその身体には分厚い装甲鎧に包まれている。

中の身体つきはその重装備に十分耐えられる頑丈な肉体を思わせる。


「だなっ!しかしもっと頑張ばらねばっ」


そう言いかけるとランガルは目の前のリザードマンの首をいとも容易く跳ね飛ばす。

無惨にも地へ転がるその首をランガルは足で踏みつけて言った。


「報酬は貰えんぞ!」


瞳は赤く、T字の顎髭に獅子の形をした兜をかぶり、様々な波形をした模様の黒鎧を装着している。

彼、サヴァルタ傭兵団隊長のランガルは傭兵団の中でも幾多の人工創造種を相手にし全てを退治してきたと言われる歴戦不敗の傭兵である。


残るリザードマンの数に腰を抜かし座りこんでいる傭兵の名はコラッド。


「無理だ!あんな数、相手になんかできねぇよぉ」


するとコラッドの後ろから一体のリザードマンが襲いかかってくる。

振り向いたコラッドは悲鳴を上げた。


「うわあああっ!」


すると次の瞬間、リザードマンは血飛沫を上げ倒れ込む。

その倒れ込んだ先に立っていた男がコラッドを見下ろすと自信あり気に言う。


「まだ武装した相手じゃねぇんだから安心じゃねぇか」


コラッドの前で呆れ笑いをした男は両手に持った短槍を肩に担ぐと去っていった。

するとコラッドは半ば涙を浮かべながらに口にした。


「俺はお前みたいに強かねぇんだよぉ…」


「おっ!見っけ!!」


そう言うと男は背を向けているリザードマンに短槍を構え襲撃をかける。


彼の名はファステン。

たて髪がトレードマークである彼はサヴァルタ傭兵団の切り込み隊長である。

随一の槍の名手として知られる彼はその計算尽くされた間合いで次々とリザードマンを突き刺していく。


頭領であろうか巨大な身体つきをしたリザードマンが洞窟の穴から姿を現した。

その姿を目にしたランガルはリザードマンを相手にしながら号令をかける。


「頭のお出ましだっ!奴を倒したら報酬が弾むぞ!!」


「うおおぉぉっ!!」


傭兵達は一斉に唸り声を上げ各々が闘志を燃やす。

その巨体を左右に揺らしながら歩き出したリザードマンに一人、猛スピードで近づいていく傭兵がいた。


「ぬぁぁぁぁっっ!」


周辺の傭兵を圧倒するような唸り声をあげると同時に一体のリザードマンを踏み台にする。


「!!」


巨体リザードマンは頭上遥かに飛んだ一人の傭兵を目で捉えた。


「せやぁぁぁっ!!」


その巨体リザードマンの頭に目掛け傭兵は上段で剣を構えた。

しかし巨体リザードマンは片手に装備した大盾でその傭兵を勢いよく遥か遠方へと突き飛ばした。


「ぐあああぁっ!!」


傭兵は岩壁に強く叩きつけられた。


「大丈夫か!?ガルバス!」


リザードマンを蹴飛ばしたラルダーは急ぎガルバスと呼んだ傭兵の元へ駆けつけた。


「大した事はない!正面からじゃ奴は倒せないな」


ガルバスは額から出た血を腕で拭うと再び立ち上がった。


「私も助力するぞ!ガルバス!!」


するとガルバスはラルダーを軽く後ろへ押した。


「!!」


「奴は俺一人で大丈夫だ!ラルダーさんは他の奴らを片付けて下さい」


そうガルバスは言い放つと再度巨体リザードマンの方へ歩き出した。


「待てガルバス!一人じゃ危険だぞ!!」


困り果てたラルダーは遥か前方の崖の上に"光るもの"を目にした。


「エンディ!?」


"光るもの"は目で捉えられない速さで次々と巨体リザードマンの背中に目掛け飛ばされていった。

「グアアアアアッ!!」


地へと跪いたリザードマンは悲痛な声を上げた。

その"光るもの"の正体は弓矢である。

巨体リザードマンの背中には5本の弓矢が刺さりリザードマンの動きを確実に封じた。


「今よガルバス!仕留めて!!」


弓を構えから解いた傭兵は微笑んだ。


サラサラと風になびく長い髪は薄い金色をしており、穂波を連想させる。

その端正のある美しい顔は正に美女そのものである。

彼女の名はエンディ。

傭兵の中でも数少ない大弓使いである。


絶好の好機と踏んだガルバスはもう一つ背中に差している長剣を抜いた。


「覚悟ぉーっ!」


勢いよく走り出したガルバス。

長剣の矛先はもう一度巨体リザードマンの頭に狙いを定める。

そして走る勢いに任せ力一杯に長剣を振りかざした。


「!!」


深く切り込んだ感触はない。

なんと巨体リザードマンはその長剣を片手で掴んでいた。


「馬鹿なっ!?」


長剣を掴んでいたガルバスの手をリザードマンは噛み付いた。


「があぁっ!!」


すると巨体リザードマンが喋べり出した。


「ナツカシイナ…コノカンショク。オレモムカシハオマエノヨウナニンゲンダッタンダゼ」


(喋った!?)


爬虫類と人間のハイブリッドであるこの人工創造種は元の姿、形が違えど以前の記憶は断片的ではあるが記憶しているものである。


「おいっ!お頭さんよっ!!」


何者かがそう言うと巨体リザードマンはその声がする方へ振り向く。


「うわ!」


巨体リザードマンはガルバスを突き飛ばすとその者の方へ近づく。


「言葉が分かるたぁ話が早いじゃねぇか」


挑発してきたのはランガルである。


「キサマラニンゲンニハサンザンクルシメラレテキタ…イマコソホウフクスルトキナノダ」


「あのよ…」


そう言うとランガルは装備している大槌 を肩に担ぎ上げ構える。


「埒あかねぇから頭同士決着つけねぇか」


巨体リザードマンは大盾を身体の前方に構え大剣を上段に構えた。


「カシラドウシカ…オマエラノヨウナニンゲンニコロサレルホドワタシハアマクナイガナ」


するといきなりランガルが大槌を巨体リザードマンに向け投げつけた。


「物分かりが!」


巨体リザードマンは大槌を大盾で防御するがその凄まじい衝撃により片腕が折れる。


「グヌァァッ!!」


地面へ轟音を上げ落ちた大槌に目掛け走り出すランガル。

「良いところは!」


ランガルはその大槌を両手で拾い、大きく身体を海老反らせ構えた。


「流石…」


そう言った後、構えていた大槌を一気に巨体リザードマンの頭に目掛け縦方向に振りかざした。


「人工創造種と言ったところだなぁっ!!」


巨体リザードマンの頭に直撃した大槌は頭ごと地面へ叩き潰した。


ズゴォォォォン……

辺りにその轟音が響き一瞬静けさを帯びた。


誰もがその瞬間を目にした時、傭兵達は勝利の雄叫びと言うべき歓声を上げた。


その後、頭領が倒れたのを機に勢い付いた傭兵団。

圧倒的優勢に至り結果、人工創造種"リザードマン"を絶滅させたのであった。






ここはサヴァルタ中心区、ガラナ街の一画である。

サヴァルタの傭兵達はいつものように酒場で祝杯を上げた。


「え~それでは~我ら~サヴァルタ傭兵団の~勝利を~祝して~」


ランガルが机の上に登り半ばおぼつかない言葉で言った。

赤みを帯びたその顔はすでに酔っ払っている姿が見受けられる。


「ねぇ~ランちゃん!いつ私にプレゼント買ってくれるの~?」

ランガルの連れの女が彼の手を勢いよく引っ張ると同時に机から落っこちる。


ドォーン!!


「おうおう!この音は大槌様が落っこちた音だぞ~わはははは!!」


昼下がりであるにもかかわらず酒場は傭兵団一行で大盛況である。


ファステンはコラッドの肩に手を掛け言った。


「エンディ聞いてくれよ…こいつさ、あいつらの前で腰抜かしてたんだぜ」


コラッドは恥ずかしさのあまりファステンの胸ぐらを掴む。


「お前なぁ!…お前こそ奴らの後ろからぷすぷす突き刺してたじゃねぇか!」


「んだとぉ!」


お互い取っ組み合いが始まると近くの傭兵達は歓声を上げる。


「やっちまえ~ファステン!」


「負けんな~コラッド!!」


毎度の事かとため息をつくエンディ。

すると一人で呑んでいるガルバスが気になったのか近くに寄った。


「ここいい?」


そう言うとエンディはガルバスの横に座った。


「どうしたの?ガルらしくないわね…」


「……」


落ち込んだ様子のガルバスが気になったのかエンディはガルバスの髪を撫でた。

「やめてくれっ!」


エンディが撫でた手を振り払うガルバス。


「俺は奴を一人で倒せたはずなんだっ!」


するとエンディは言った。


「傭兵稼業は一人でやってくもの…だけど私達は仲間なのよ」

ガルバスは自分の手を強く握る。


「力不足なんだ…俺は…まだ!」


「ガルバス…」


心配そうな眼差しでエンディはガルバスの顔を見た。

その時、ラルダーが後ろからやってきてガルバスの肩に手を添える。


「どうした?ガル」


「ラルダー…」


エンディはそう言うとラルダーを見て優しく微笑む。

ラルダーがガルバスの肩に手を組み嬉しそうに言った。


「ランガルがお前の活躍を見て次期切り込み隊長にしたいと言っていたぞ」


「本当ですか!?」


驚いたガルバスは頭を上げラルダーの顔を見た。

ラルダーは片目を瞑ると言った。


「俺もお前を推薦するよ」


エンディも言う。


「ガルならやれるわ。私支援するから!」





同じ昼下がりの頃…。


ヴァノワールはリザードマンの死体で荒んでいた…。

その戦場跡に降り立ったキメラはリザードマンの死肉をひたすら食していたのであった…。

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